第1回 11月20日講義分。 
内容: Sect 1.0-1.3 (等価原理、上方接続、第5の力、引力ポテンシャル、Single Layer まで)
          QA作成所要時間(2時間)(備忘)

内容に関するQ

A

 【第5の力 1】
(1−2)頁でいう到達距離の定義は?(水越)
λが小さい可能性はないでしょうか?(冨田)
・おまけの湯川ポテンシャルが1/eまで減衰する距離 
・λが小さい可能性があるかどうか、わかりません。理論の提唱者が言っていることなので信じるしかない?
  【第5の力 2】
存在が確かではないにもかかわらず、上限がはっきりきまっている理由が何なのか気になりました(湯本)。
 なるほどね。湯川秀樹の予言した中間子も、実験的に見つかる前に質量などが求められていたのと似てますね。
  【第5の力 3】
(逆2乗則+第5の力)の形でポテンシャルが調和関数になることはないのでしょうか?(加藤)
 ありません。ポテンシャル(A/r)は調和関数ですが、e(-λr)/rは調和関数ではありません(ラプラシアンを計算してみてください)。
 【等価原理 1】
ニュートン自身は重力質量と慣性質量の違いを意識して理論をつくったのでしょうか?(彦坂)
 科学史的に興味深い質問ですね。私は知りませんが、おそらく、イギリス経験論のバックグラウンドからみて、区別していなかったと思います・・(確たる自信も証拠もないが)
 【等価原理 2】
重力質量と慣性質量の比が、物質によらず一定であることは理解したが、重力質量と慣性質量の「値」が同一であるとまでいえるのか?(池端、荒尾)
 もっともな質問です。重力質量Mはいつも万有引力定数Gとペアで、物理の方程式にあらわれてきます。ですからGを適切に調整することにより、比が1になるようにすることができます。( 理科年表のGM の宿題でもありますが)
 【等価原理 3】
・ピサの斜塔実験でなぜ、加速度α1とα2とが一致しなければならないのでしょうか?(三木)

・ガリレオの実験でどれくらい、空気抵抗が考慮されたのでしょうか?(山浦)
 ・実験事実として、「材質が異なるものであっても、同時に自由落下させれば、地面には同時に着地する」ということがありますよね。もし、α1とα2が一致しないなら、地面に同時に到達できないはずです。

・考慮しなくてすむようなレベルの実験だと思います(面積の大きな紙を落としたわけではない)
  【等価原理 4】
「物質によらず」慣性質量と重力質量の比が一定ということが「不思議」という感覚はどこからきますか?(横谷)
2つの質量の比が物質ごとに違っている世界があったとしましょう。たとえば1 m^3の立方体が鉄でできている場合と、金で出来ている場合とを考えます。重力質量は、鉄が7.9 gram 、金が19.3 gramとします。慣性質量はこれとは違ってよいとしたので、たとえば鉄が15 GRAM慣性質量、 金が5GRAM慣性質量。この立方体を水平方向にバネではじき出す実験をしたら、どちらの初速度が大きくなるでしょうか?
   【等価原理 5】
等価原理は実験から分かったことで、理論的に分かったものではないということですか?(山名)
 ・はい、そうです。
  【等価原理 6】
慣性質量m (F=mαのm)はどうやって測る?(岡)
仮想実験としては次のようになる。何度使用しても、弾性係数が変化しないバネを用意し、それに物体をとりつける。バネは摩擦のない水平な床上にあるとして、バネを縮めて手を離せば、物体は一定周期Tの単振動をする。慣性質量は
T2に比例することに留意。キログラム原器を打ち出したときの周期T0 と比べると、任意物体の慣性質量が定まる。
   【等価原理 7】
弱い等価原理と、アインシュタインの等価原理は、どうちがっているのでしょうか?(湯本)
一般相対論で調べてください。 アインシュタインの等価原理は弱い等価原理の拡張になっているような感じ。
 質量
質量の値は何を基準にしてきめているのでしょうか?(横尾)
タイムリーな質問です。現時点では、キログラム原器という実在の物体の「もつ」重力質量を1kgと「お約束した」ということです。2017年10月25日の報道では、 産業技術総合研究所が新しい定義を提案しています。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20171024/pr20171024.html
【エトベスの実験】
・物体AとBとがつりあう(両方とも下に落ちない)と慣性質量が等しい理由が分からない(坂倉)。

・異なる材質でできた物体AとBがあって、それらが同じ重力質量を持っているとしましょう。また、Aと同一材質・同一重力質量の物体A' を用意しておきます。
ねじれ秤に載せるペアを(A,A')とした場合と、(A,B)とした場合を考えましょう。
地球上では、2種類の力(地球の引力と、自転による遠心力)がはたらいていることに注意しておいてください。そのうち地球の及ぼす引力は、A, A', Bで同じです(重力質量が同じだから)。もう一つの遠心力は地球の上に固定された座標系の回転による慣性力ですから、慣性質量に比例します。
 A,A'のペアを乗せた時のつりあいの位置と、A,Bのペアを乗せた時のつりあいの位置は同じでしょうか? AとA'は同一材質ですから、慣性質量も同じです。ですから、受ける遠心力も同じなので、トルクは生じません(このときのアームの位置を記録しておきましょう)。
 一方、 Bの慣性質量がA,A'と異なっていると、遠心力が異なるためトルクが生じ、その大きさに比例した角度だけアームが少し回転するはずです(A、A'のペアのときの位置に対して)。この回転量が有意に大きければ、弱い等価原理がなりたたないといえるのです。
 【薄膜】月の表面重力の強弱の変動の程度はどれくらいですか?(石塚)
月の表面重力の強弱は、地球の影響でしょうか?(荒尾)
 月の表面重力(平均値)が、地球の約1/6ということは知っていると思います。すなわち160 cm/sec^2程度です。 配布した資料の赤いところは、平均より約2% 大きいことを示しています。
地球の影響ではなくて、月の形成過程によるものです。

 その他のQや感想  A
Gの精度が低いことが驚き(石川)
地球や太陽の質量の誤差が、Gの誤差で決まっているというのが興味深い(久河)

驚きを共有してもらって、うれしいです。Gを高精度に決めるということは、物理計測の世界ではオリンピックの金メダルを目指すような雰囲気で、各国がしのぎを削っていると思います。
 重力定数を正確に求めることはそれ自体が重要である気がするが、実生活(や研究)で応用されている例はあるか?(西村)  ないでしょうね。 GMが実生活に重要なので。
Gの時間変化に少し触れましたが、それを調べる研究はありますか?遠方の銀河やクエーサーによる重力レンズなどで過去の重力を計測できそうな気がします(西山)
いろいろあるようです。たとえば日本物理学会誌55巻(2000年)には、次の紹介記事がでています。https://www.jstage.jst.go.jp/article/butsuri1946/55/9/55_9_679/_pdf