解説:アウターライズ地震としての2007年1月13日千島列島地震)    
                    (東京大学地震研究所 瀬野徹三)

1. 地震三兄弟としては次男
 この地震はEIC地震学レポートに述べられているように,プレート間地震(長男)ではなく,太平洋プレートが沈み込みを開始する海溝軸付近で起こったものである.種類としてはスラブ内地震(次男)ということになる(地震三兄弟の図参照).

2. 海溝-アウターライズ地震
 この種の地震は海溝-アウターライズ地震と呼ばれる.海溝から海側にかけてアウターライズという地形的にもりあがった部分があり,そのようなところの地下で地震が起こるからである.このもりあがりは沈みこもうとするプレートが海溝の手前から曲がりはじめるために出来る.この曲げによってプレート浅部で伸張,深部で圧縮の応力を受け,浅いところで正断層型,深いところで逆断層型となるのである.アウターライズ地震の震源深さをその位置の海底年代に対してプロットした図は,白(正断層)が浅部,黒(逆断層)が深部に分布していて,このことをよく表している.この図の年代105 Ma (1億500万年前)のところに黒いバーで63年千島地震の断層領域が示されており,今回の断層領域(地震学ノートによる)はこのちょうど上の部分を埋める.同じ場所の下で40年前逆断層の大地震が起こっていたわけである(63年の震源位置は千島中部の●参照).

3. ペアのアウターライズ地震
 どこでもこのように正断層と逆断層がペアで起きているわけではない.ペアとなっている例として日本海溝の断面を先の図の右側に示した(50 kmの深さに逆断層が起こっている).先日台湾南部で起こった地震は同じ日のうちにマニラ海溝で正断層と圧縮型の横ずれ断層がペアで起こっためずらしい例である(ちなみに昨年10月のハワイの地震もアウターライズではないが,プレートの曲げによる地震で,ペアで起こった).正断層は浅いところで起こるので曲げで起こっても不思議はないが,逆断層は数10 kmの深いところで起こる.このような深さでは封圧が大きくなって摩擦強度が大となり,普通には地震は起こりえない.スラブ深部が蛇紋岩化している場合,その脱水で起こると考えている(Seno & Yamanaka, Geophys. Monogr., 96, 347-355, 1996).

4. プレート間地震の前後での発生の傾向
 地震学ノートに触れられているように,大きなプレート間地震の断層の海側で,地震前に逆断層型,後に正断層型のアウターライズ地震が起こりやすい傾向が知られている(Lay et al., PEPI, 54, 258-312, 1989).後者の場合,プレート間地震の断層面のすべりが,海溝付近の海洋プレート内で伸張応力を増加させるためと考えられる.プレートがぽっきりと折れるわけではない.

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