粘性流体中の運動 - ストークスの公式 -


ストークスの式は地球科学で最もよく使われる公式の一つである。マントル内部を上昇するプリュームの上昇速度の見積もりや、火山灰の落下する速度、さらにはマグマ溜まりの中での結晶の沈降速度などの計算に用いられる。
粘性率μの粘性流体中を速度Vで運動する半径aの球体に働く抵抗Dは

D = 6πμa V                    (1)

と表現される。重力が物体に作用する力,つまり着目物体の密度と周囲の物体の密度差による浮力(あるいは負の浮力)が粘性抵抗と釣り合う所で物体は定常運動になる。つまり、定常状態では、

mg = 4/3πa^3 Δρg = 6πμa V  

が成立する。ただし、Δρは着目物体と周囲の物体との密度差、gは重力加速度である。この式を整理すると、

V = (2/9 ) a^2Δρg / μ                 (2)

という関係式が得られる。これら(1),(2)両者が一般にストークスの公式と呼ばれるものである。
実験などで流体の粘性を測定した物体の密度を測定する場合には、しばしば 壁の条件が無視できないことがある。この場合に用いられるのがfaxenの補正である。
円筒の中心部分を落下(あるいは上昇)する球の運動は、円筒の半径をRとして、

V = (2/9 ) a^2Δρg / μ(1-1.052(a/R)+0.261(a/R)^3)    (3)

と表現される。


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こうした関係式を用いると、粘性率10^22Pas程度のマントル中を、年10cm(3.2x10^(-9) m/s)の上昇速度で密度差100kg/m3のプリュームが上昇するためには、そのサイズは半径380km程度の大きさでなければならない、などというおおざっぱな見積もりが可能になる。

17-Oct-1997; yasuda@eri.u-tokyo.ac.jp