領域概要A01 地震観測班（課題番号 JP16H06473）
海陸機動的観測に基づくスロー地震発生様式の解明代表：東京大学 地震研究所 小原 一成
研究目的
スロー地震は、20 世紀末以降から日本及び環太平洋の沈み込み帯各地域で発見されてきた、断層破壊がゆっくりした現象である。その発生源は巨大地震震源域に隣接することから、スロー地震が巨大地震の発生に関わっていることが考えられるが、現象の物理プロセスについては良く分かっていない。そのため本研究では、スロー地震の時空間発展や相互作用、地球潮汐や遠地地震等による誘発現象等の発生様式を海陸機動的観測等に基づいて解明することを目的とする。さらに、他の計画研究で明らかになるスロー地震の測地学的発生様式や、背景となる地球物理学的・物質科学的環境、及び現象発生に関する地球科学的・物理学的モデルを総合することでスロー地震を多面的・多角的に理解し、従来の地震研究に足りなかった重要な視点である、低速変形から高速すべりまでの地震現象に関する統一的な理解を得ることを最終的な目標とする。
研究内容
既存の基盤的定常地震観測及び海陸機動観測に基づき、以下のスロー地震を対象として研究を実施する。
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- (A) 浅部スロー地震
- 南海トラフ西部から南西諸島において、その存在が予想される浅部スロースリップイベントの測地学的直接検出に挑戦し、そのすべりの空間分布を推定するとともに、浅部微動や浅部超低周波地震の詳細な時空間発展や地球潮汐応答等の活動様式を明らかにし、これらの現象のスケーリングや相互関係性を評価する。
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- (B) 深部スロー地震
- 西南日本の中で活動が最も活発な四国西部を対象として、超高速移動を含む深部低周波微動や超低周波地震の詳細な時空間発展を抽出するとともに、地球潮汐応答、遠地地震表面波による誘発現象などを含めた活動様式を明らかにする。さらに、深部超低周波地震のより小さなイベントまでのスケーリング則の適用性を明らかにし、これらの相互作用を明らかにする。
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- (C) 繰り返し地震
- 南海トラフ西部から南西諸島において、繰り返し地震解析からその背景に存在するスロースリップを推定し、その時空間変化を明らかにするとともに、周囲の浅部スロー地震や通常の地震との相互作用を明らかにする。
以上の浅部・深部スロー地震(A・B)の活動様式の共通性や相違点を明らかにするとともに、これらのスロー地震(A・B・C)間の相互作用を明らかにし、さらに長期的スロースリップイベントが及ぼす影響を、A02 測地観測班で推定される断層パラメータを活用して定量的に評価する。
メンバー
- 研究代表者
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- 小原 一成東京大学 地震研究所
- 研究分担者
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- 篠原 雅尚東京大学 地震研究所
- 山下 裕亮京都大学 防災研究所
- 浅野 陽一防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門
- 中村 衛琉球大学 理学部
- 田中 佐千子防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門
- 宮澤 理稔京都大学 防災研究所
- 内田 直希東北大学 大学院理学研究科
- 研究協力者（教員・研究員）
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- 杉岡 裕子神戸大学 大学院理学研究科
- 鶴岡 弘東京大学 地震研究所
- 加藤 愛太郎東京大学 地震研究所
- 竹尾 明子東京大学 地震研究所
- 須田 直樹広島大学 大学院理学研究科
- 大久保 慎人高知大学 教育研究部 自然科学系 理学部門
- 蔵下 英司東京大学 地震研究所
- 石瀬 素子東京大学 地震研究所
- 加納 将行東北大学 大学院理学研究科
- 田中 優作名古屋大学 大学院環境学研究科
- 藤田 航平東京大学 地震研究所
研究サブテーマ
- 分担者課題
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- 篠原雅尚・山下裕亮・杉岡裕子 「海底広帯域地震・測地観測に基づく浅部スロー地震の活動様式解明」
- 浅野陽一 「南西諸島域における広帯域機動観測」
- 中村衛 「浅部超低周波地震を用いた琉球海溝の潮汐応答の時空間変化の解析」
- 田中佐千子 「低周波微動及び超低周波地震の地球潮汐応答とその時空間変化の解明」
- 宮澤理稔 「微動の動的誘発を利用したプレート境界状態の時間発展解析」
- 内田直希 「プレート境界の様々なすべり現象の相互関係の解明」
- 小原一成・竹尾明子 「陸域広帯域地震観測による深部スロー地震の活動様式解明」
- 小原一成・加藤愛太郎・蔵下英司 「陸域超稠密短周期地震計アレイ観測による深部スロー地震の活動様式解明」