スロー地震学

スロー地震学 - 低速変形から高速すべりまでの地震現象の統一的理解に向けて

領域概要C01 地球科学モデル班(課題番号 JP16H06477)
低速変形から高速すべりまでの地球科学的モデル構築代表:東京大学 大学院理学系研究科 井出 哲

  1. 総括・国際班
  2. A01
  3. A02
  4. B01
  5. B02
  6. C01
  7. C02

研究目的

スロー地震の発生様式、発生環境、発生原理を明らかにすることを目的とする新学術領域「スロー地震学」において、本計画研究C01班は地球科学的モデル化を通じて発生原理の解明を担当する。
スロー地震は微動、低周波地震、スロースリップなど異なる様相を持ち、多くは沈み込み帯で観察されるものの、地域的多様性が高い。また巨大地震発生地域周辺で発生し、巨大地震発生との関連も示唆されている。そこで本計画研究ではスロー地震諸現象の時間空間的な関連を調べ、現実的条件を仮定した数値モデルを構築、巨大地震を含めたプレート運動システムの予測可能性を調べる。各研究参加者が、過去の研究で導出してきた各種法則、開発してきた数値計算モデル等のベースの上に、数値計算、理論モデル、実験で得られる様々な知見を反映させる。さらに他計画研究の地球物理学的観測、物質科学的観察・実験、物理学的理論・実験などの結果を利用、かつ適切にフィードバックすることで分野融合的な研究を推し進める。そして世界のプレート境界の地球科学的環境の違いを参考に、現実的数値モデルを用いて発生する現象の違いを説明する。

図1. 豊後水道におけるスロースリップ発生のシミュレーションの概念図。現実的なプレート境界形状と摩擦則を仮定して、スロースリップが時間とともに広がる様子を再現できる。

研究内容

以下の3つのカテゴリーに緩く分類して推進する。

  • (A) スロー地震諸現象の時間空間的関連性の解明
    スロー地震の支配法則の解明を目指して、微動、超低周波地震、スロースリップの諸要素の定量化を行う。スロー地震について、エネルギー放出量や継続時間の推定値をもとに数値モデルを作成、空間的な違いとその原因を議論する。
  • (B) 現実的プレート運動システムのモデル化
    現実的なプレート形状や摩擦法則を取り入れたスロー地震サイクルモデルを構築する。さらにサイクルモデルに温度構造、流体の影響、階層構造を取り入れる。スロー地震から大地震発生プロセスまでを説明可能な、普遍的な数値モデルの確立を目指す。
  • (C) 巨大地震とプレート運動の予測可能性の検討
    巨大地震発生の前後におけるスロー地震的現象の発生条件を実験および地震波分析によって調査する。プレート運動システムの将来予測がどこまで可能か検討する。潮汐などの外部条件変化によるシステムの応答を調べる。

メンバー

研究代表者
  • 井出 哲東京大学 大学院理学系研究科
研究分担者
  • 松澤 孝紀防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門
  • 三井 雄太静岡大学 理学部
  • 福山 英一京都大学 大学院工学研究科
  • 有吉 慶介海洋研究開発機構 海域地震火山部門 地震津波予測研究開発センター
  • 吉岡 祥一神戸大学 都市安全研究センター/理学研究科
  • 中野 優海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター
  • 山下 太防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門
研究協力者(教員・研究員)
  • 八木 勇治筑波大学 生命環境系
  • 安藤 亮輔東京大学 大学院理学系研究科
  • 芝崎 文一郎建築研究所 国際地震工学センター
  • 堀 高峰海洋研究開発機構 海域地震火山部門 地震津波海域観測研究開発センター
  • 麻生 尚文東京工業大学 理学院
  • 矢部 優産業技術総合研究所 地質調査総合センター
  • 市村 強東京大学 地震研究所
  • 西川 友章京都大学 防災研究所
  • 縣 亮一郎海洋研究開発機構 海域地震火山部門 地震津波海域観測研究開発センター
  • 藤 亜希子東京大学 大学院理学系研究科
  • 森重 学東京大学 地震研究所
  • 末永 伸明神戸大学 都市安全研究センター/理学研究科

研究サブテーマ

分担者課題
  • 井出哲 「地域性に基づくスロー地震の一般化」
  • 松澤孝紀 「観測されるスロースリップイベント発生の包括的な数値モデル」
  • 三井雄太 「スロー地震発生における新要素の探索」
  • 福山英一・山下太 「大型摩擦実験によるスロースリップのモデル化」
  • 有吉慶介 「擾乱モデル」
  • 吉岡祥一 「環太平洋地域におけるスロー地震と3次元数値モデリングによる温度・脱水の関連性」