立川断層帯の重点的な調査観測


プロジェクト概要
 

文部科学省では、平成24年度から、「立川断層帯の重点的な調査観測」(受託先:東京大学地震研究所、研究代表者:佐藤比呂志)を実施しています。立川断層帯については、震源断層の形状については不明な点が多く、また長期評価に重要な活動履歴の信頼性は低いとされ、過去の活動時期についてさらに精度良く絞り込む必要があります。また、断層帯の走向から相当程度あると想定される横ずれ成分の平均的なずれの速度は全く不明です。さらに想定震源域が人口稠密地に位置することから、より精度の高い強震動予測が必要になります。こうした背景から、本プロジェクトでは、立川断層帯で発生する地震の規模の予測、発生時期の長期評価、強震動評価の高度化に資することを目的とした研究を行います。自然地震観測・地殻構造調査・変動地形および古地震調査・強震動予測など、総合的な調査研究が、3カ年にわたって実施されます。

研究テーマの構成

1. 断層帯の三次元的形状・断層帯周辺の地殻構造解明のための調査観測
a. 制御震源地震探査等による断層形状の解明(東京大学地震研究所)
b. 自然地震観測に基づく断層周辺の広域的3次元構造調査(東京大学地震研究所)

2. 断層帯の詳細位置・形状および断層活動履歴・平均変位速度の解明のための調査観測
a. 断層帯の詳細位置・形状等および断層活動履歴・平均変位速度の解明(東京大学地震研究所)
b. 断層帯の平均変位速度・累積変位量の解明のための高精度火山灰編年調査(首都大学東京)
c. 史料地震学による断層帯周辺の被害地震の解明(地震予知総合研究振興会)

3. 断層帯周辺における地震動予測の高度化のための研究(東京工業大学)

平成24年度立川断層帯トレンチ調査「榎(えのき)トレンチ」の調査結果について


1.平成24年度 榎トレンチ調査の目的
立川断層帯は、名栗断層と立川断層から構成され、埼玉県飯能市から東京都青梅市、立川市を経て府中市に至る、長さ33km、北西走向の断層帯です。立川断層は、北西走向で長さは20km余、首都圏にあってごく近い将来に活動するおそれのある活断層として注視されています(地震調査委員会、2003;2011)が、その活動履歴はもとより活断層としての性格についても未だ不明な点が多々残されています。それらを解明するため、本調査では、長さ約250m、深さ約10mとこれまでの活断層トレンチ調査では類を見ない巨大なトレンチ(榎トレンチ)を掘削しました。本調査は、これまでの通常のサイズ(長さ数10m、深さ3-5m)のトレンチ調査では把握することが難しかった、立川断層がつくった変位構造の全体、すなわち、主断層帯をその変位に関係した変形構造全体とともに捉え、さらに活動の繰り返し性の把握をも狙った新たな試みです。

2. 調査結果について
2月の説明会では、トレンチの壁面には段丘面を構成する立川礫層が広範囲に露出し、従来立川断層が形成した変動崖とされてきた崖地形付近に、立川礫層を変位させる垂直な断層構造が数条認められ、これが立川断層の主断層帯にあたる可能性が高いとしました。その後、さらに精査を加えるとともに、埋め戻しの過程で断層部分を深掘りするなど検討を進めました。その結果、当初断層としていた構造が露頭深部に連続しないことや、主断層帯とした部分に列状に配列する特徴的な白色粘土塊が人工物であることが判明しました。以上の新たな事実確認により、本トレンチでは断層構造は認められないとの結論に至りました。加えて、立川礫層の構造を詳細に検討した結果、変動崖地形で想定される上下方向の主要な変位に対応した変形構造は認められないこともわかりました。崖地形のふもと付近ではより新しい河成堆積物が確認され、崖地形はむしろ浸食崖である可能性が高いと判断しています。これまでの物理探査の結果では、地下には断層が存在することが知られており、今回の調査結果は活断層の存在を否定するものではありません。今後は、今回の調査結果に加えて、現在同地点で実施している3次元反射法地震探査の結果や、次年度以降に本プロジェクトで実施するトレンチ・ボーリングや物理探査などの調査を踏まえて、立川断層の位置や活動性について更に詳しく検討を進める予定です。

平成24年度立川断層帯トレンチ調査「榎(えのき)トレンチ」の調査結果について
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