議事概要

第8回(平成27年度第2回)都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト運営委員会
開催日時 平成28年3月3日(木) 13:30〜17:30
開催場所 東京大学地震研究所1号館3階 会議室

議事次第

[1] 報告

・開催の挨拶(武村)

・配付資料の確認(事務局)

・出席者の確認(事務局)【都27-2-1】

・前回議事録の確認(事務局)【都27-2-2】

・文部科学省挨拶(文部科学省)

・地震研究所共同利用・特定共同研究の登録(平田)【都27-2-4】

[2] 議事

研究計画 (平成27年度の進捗状況と平成28年度の実施計画)

1.南関東の地震像の解明

a.首都圏での地震発生過程の解明(地震研、酒井)【都27-2-5】

b.プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明(地震研、佐藤)【都27-2-6】

c.首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明(地震研、佐竹)【都27-2-7】

d.首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立(地震研、鶴岡)【都27-2-8】

2.観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発(地震研、堀)【都27-2-9】

3.サブプロジェクト@の管理・運営(地震研、平田)【都27-2-10】

4.統括委員会によるプロジェクト全体の運営(地震研、平田)【都27-2-11】

5.サブプロジェクト間の連携について(地震研、酒井)【都27-2-12】

[3] その他

・最終成果の取りまとめに向けて【都27-2-13】

・平成27年度成果報告書の作成について【都27-2-14】

・日本地球惑星科学連合大会2016年大会について【都27-2-15】

・総評

配布資料一覧

都27-2-1 出席者リスト

都27-2-2 前回議事録

都27-2-4 地震研究所共同利用・特定共同研究の登録

都27-2-5 首都圏での地震発生過程の解明

都27-2-6 プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明

都27-2-7 首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明

都27-2-8 首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立

都27-2-9 観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発

都27-2-10 サブプロジェクト@の管理・運営

都27-2-11 統括委員会によるプロジェクト全体の運営

都27-2-12 サブプロジェクト間の連携について

都27-2-13 最終成果の取りまとめに向けて

都27-2-14 平成27年度成果報告書の作成について

都27-2-15 日本地球惑星科学連合大会2016大会について

出席者

委員

1.研究実施機関研究者

東京大学地震研究所 教授 平田 直

東京大学地震研究所 教授 佐藤比呂志

東京大学地震研究所 教授 佐竹健治

東京大学地震研究所 准教授 鶴岡 弘

東京大学地震研究所 教授 堀 宗朗

東京大学地震研究所 准教授 酒井慎一

東京大学地震研究所 助教 中川茂樹

2.再委託先機関研究者

神奈川県温泉地学研究所 主任研究員 本多 亮

防災科学技術研究所 主任研究員 木村尚紀

横浜国立大学 教授 石川正弘

東京工業大学 教授 廣瀬壮一

3.上記以外の有識者

(委員長)

名古屋大学減災連携研究センター 教授 武村雅之

(委員)

国土交通省 国土地理院 主任研究官 水藤 尚

気象庁 地震情報企画官 中村浩二

地震予知総合研究振興会 副首席主任研究員 笠原敬司

筑波大学 准教授 庄司 学

兵庫県立大学 准教授 木村玲欧

東京都総務局 防災計画担当部長 小林忠雄

オブザーバー

(委託元)

文部科学省研究開発局地震・防災研究課 室長 松室寛治

文部科学省研究開発局地震・防災研究課 室長補佐 田中大和

文部科学省研究開発局地震・防災研究課 調査員 渋谷昌彦

(再委託先、有識者等)

東京都総務局 防災専門員主任 渡辺秀文

東京都総務局 防災専門員 萩原弘子

東京都総務局 課長代理(計画調整担当)渡邊裕美花

東京都総務局 計画調整係主任 村上和也

(地震研究所・事務局)

東京大学地震研究所 助教 石山達也

東京大学地震研究所 准教授 長尾大道

東京大学地震研究所 特任研究員 パナヨトプロス・ヤニス

東京大学地震研究所 特任研究員 橋間昭徳

東京大学地震研究所 特任研究員 村岸 純

東京大学地震研究所 特任研究員 中村亮一

東京大学地震研究所 特任研究員 横井佐代子

東京大学地震研究所 特任研究員 加納将行

東京大学地震研究所 特任研究員 西山昭仁

東京大学地震研究所研究支援チーム 係長 水津知成

議事録

〔報告〕

・武村委員長より開会の挨拶があった。

・事務局から配布資料の確認があった。また資料【都27-2-1】に基づき出席者の確認が行われた。その後、資料【都27-2-2】に基づき前回議事録の確認依頼があった。

・文部科学省松室室長から挨拶があった。

・平田委員より資料【都27-2-4】に基づき、地震研究所共同利用・特定共同研究の登録について説明があった

〔議事〕

研究計画(平成27年度の実施計画と平成28年度の実施計画)

1. 南関東の地震像の解明(a,b)

・酒井委員から資料【都27-2-5】に基づき、「a. 首都圏での地震発生過程の解明(首都圏下の新しい構造モデル)」について説明があった。

・武村委員長から、地震計の故障の主な原因について質問があった。これに対し、酒井委員から腐食によることが多いとの回答があった。また、雷の影響もあまりないとのコメントがあった。

・武村委員長から、マグニチュードと震度の関係が地点によって異なるのはどういうことなのかという質問があった。これに対し、酒井委員から射出角と入射角の大きさあるいは震源との距離が関係していそうだが、詳細は調べているところであるとの回答があった。平田委員からは周波数またはQ値の構造が関係しているのではないかとコメントがあった。中村オブザーバーからは、最大加速度など距離減衰式と河角式などの経験式から求められる震度-マグニチュードの関係に比べて傾きが大きいとのコメントがあった。

・武村委員長から、東京湾周辺の一元化処理震源を再決定したのは今回発表したものだけなのかという質問があった。これに対し、酒井委員からは単にM2.5以上のものから決め直したという回答があった。

・武村委員長から、関東地震の震度の議論をする時に、本震の被害とされているものには直後の余震の影響が入り得ることに注意する必要があるとのコメントがあった。

・佐藤委員から資料【都27-2-6】に基づき、「b. プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明(b1. 構造探査とモデリングに基づくプレート構造・変形過程と地震発生過程の解明)」について説明があった。

・笠原委員から、テクトニックインバージョンの断層が関東平野の中にあるのがだいぶ見えてきた。関東地方は安定した地層で覆われているため、過去の探査では下部まで見えなかったのが、データ処理の改良により見えるようになったというコメントがあった。

・武村委員長から、粘性緩和の最適モデルをどうやって求めたのかという質問があった。これに対し、佐藤委員から数多くのモデルの中からデータをよく説明するものを定量的に選んだとの説明があった。さらに、得られた余効すべりは地学的事実に整合的であり、岩石モデルと合わせてより詳細な粘性モデルを作成する上で良い初期モデルになりうるとのコメントがあった。

・石川委員から資料【都27-2-6(2)】に基づき、「b. プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明(b2. 関東下の構成岩石モデルの構築)」について説明があった。

・武村委員長から、蛇紋岩と接しているところは地震性のすべりが起こらないということかと質問があった。これに対し、石川委員から、その通りであるとの回答があった。

・武村委員長から、以前示した東京湾北部の地震の起こりにくい領域との関係はどうなのかという質問があった。これに対し石川委員から、以前とは別の判定ルールを用いている。また、温度にも依存して変化しうるという回答があった。

・平田委員から、珪長質岩石の領域はどのような性質を持つのかという質問があった。これに対し石川委員から、苦鉄質岩石のありそうな部分に対し石英や長石の存在でデータを説明できそうであるとの回答があった。

・笠原委員から、岩石の種類によるP波速度とS波速度の違いは、P波の方がよく出るのかという質問があった。これに対し、石川委員から四万十帯についてはそのような傾向があるという回答があった。

・武村委員長から、圧力の影響をどのように考慮しているのかという質問があった。これに対し、石川委員から、深さ30 km程度では圧力の影響よりも岩石種の違いによる影響が大きく、現段階では圧力の影響は無視しているという回答があった。

・武村委員長から、b1の粘弾性構造とb2の岩石による粘性構造を今後組み合わせるということなのか、このプロジェクトではどの段階まで進むのかという質問があった。これに対し、佐藤委員から、バルクで(全体的に)見るか、小さいスケールで見るのかで粘性構造の物理的意味も違うので多面的に見なければならないという回答があった。また、b2の岩石モデルによる粘性構造は、現段階では参考にする程度となるだろうが、将来的に応力計算の物理的意味を考える時に重要となるであろうという回答があった。武村委員長から両者の関係性を明確にしてほしいとのコメントがあった。

・渡辺オブザーバーから、太平洋プレート下の低粘性領域はどのようにして起こるのか、南北に広く伸びているのか、だとしたら海底変位の局所的な西向きベクトルをどのように説明するのかという説明があった。これに対し、佐藤委員から、低粘性領域が形成される原因として、プチスポットの形成や太平洋プレートのアウターライズの下部で起こる屈曲による高圧縮応力などが考えられると回答があった。橋間オブザーバーから、局所的な海底変位について地震時すべり分布の最大すべり域に対応するとの回答があった。

2. 観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発

・堀委員から資料【都27-2-9-1】【都27-2-9-2】に基づき、「2.観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発(大規模数値解析、可視化)」について説明があった。

・武村委員長から、被害を可視化したものを何にどのように使おうとするのかという質問があった。これに対し、堀委員から、現在可視化モデルを実用できるかどうかが分かったところなのでこれから検討するという段階であるという回答があった。

・武村委員長から、個々の建物の被害状況よりも被害全体を評価するようなマクロなデータを使わないのかという質問があった。これに対し、堀委員から、この詳細モデルは設計で使われる解析手法に基づいているのでフラジリティーカーブを使うよりは信頼度が高いという回答があった。平田委員からフラジリティーカーブを使った解析結果との比較を示してほしいというコメントがあった。

・小林委員から、現在の被害想定は国のモデルを使っているので、この知見を直ちに用いるのは難しい。また、個々の建物を特定して確率を計算するのは、住民の目線で見た場合に誤解を招くかもしれないというコメントがあった。武村委員長から、東京都が出している危険度評価は、住民の地域防災の取り組みを喚起している点で高く評価している。堀委員の成果を使って同じような情報ができないかと思うとのコメントがあった。そのためには、個々の建物を特定しない形で取り入れるような工夫ができれば良いというコメントがあった。

1. 南関東の地震像の解明(c, d)

・佐竹委員から資料【都27-2-7】に基づき、「c.首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明(安政江戸地震の解明に向けて)」について説明があった。

・武村委員長から、安政江戸地震は広域的な震度分布が決め手と思えばいいかという質問があった。これに対し、佐竹委員から、その通りである。江戸市中についての史料だけでは被害の全体像は分からないとの回答があった。

・武村委員長から、史料のデータベースはどこまでできるのかという質問があった。これに対し佐竹委員から、安政江戸地震については全部ではない。このデータベースは、江戸時代に関東地方で被害の出た地震を対象としているとの回答があった。

・武村委員長から、現地に行くと周りの様子も見え、史料に書かれていることの真偽がかなりの確率で分かるので、できれば史料に掲載されているところの全ての現地に行ったほうが良いと思うとのコメントがあった。

・鶴岡委員から資料【都27-2-8】に基づき、「d.首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立(地震活動予測)」について説明があった。

・武村委員長から、事前予測実験のテストの中で規模というのは何をみているのかという質問があった。これに対し、平田委員から規模別頻度分布という回答があった。続いて、鶴岡委員から、RIモデルはb値を0.9に固定していて、それが観測と合っているかというテストをしていると回答があった。

・武村委員長から、テストの結果は東北地方太平洋沖地震の起こった後に地震数は変わっているが、深さ毎の地震の分布とb値は変わっていないことを示しているのかという質問があった。これに対し、平田委員から、深さ分布は変わっているとの回答があった。また、鶴岡委員から、東北地方太平洋沖地震の前のデータを学習期間にしたCase 1は、空間のテストをパスしておらず深さ分布が変わったためと回答があった。

・武村委員長から、大森―宇津公式の余震の減衰の仕方を表すp値は東北地方太平洋沖地震の震源の近くと遠くでは値が異なるのかとの質問があった。これに対し、鶴岡委員から、日本全体では具体的に調べていないが、東北沖地震の余震域と関東とでは異なる、また、深さ毎にもp値は異なるので、三次元空間でp値を算出すれば変化が示せるのではないかとの回答があった。続いて、武村委員長から、具体的にどう違うのかという質問があった。これに対し、鶴岡委員から、関東程度の範囲では大森―宇津公式のK値やμ値は空間毎に異なるが、p値はごく狭い範囲では異なるがあまり違わないとの回答があった。また、深さ毎のp値を調べることは重要と認識しているとの回答があった。

・武村委員長から、関東地方の地震活動度がどのような特性を持って上がっているのかを統計的に見ると鶴岡委員の発表のような結果になる。理由は分からないにしても、現象としてどのようになっているのかを考えるのは興味深いと思うとのコメントがあった。これに対し、鶴岡委員から、粘性などを考慮することになると思うとコメントがあった。また、平田委員から、関東の地震は一様ではなくクラスタがあるので、クラスタ毎に見ると大森―宇津公式のパラメータの値が東北地方太平洋沖地震の影響で増えたり減っていたりする。クーロン応力が増加するようなクラスタは増えるが、増加しないクラスタは減る。それを関東地域一帯で見ると地震活動が増加するように見えるのではないかとのコメントがあった。続いて、武村委員長から、東北地方太平洋沖地震の前にはなかったが、後で発生したクラスタはいくつくらいあるのかといった情報を予測の際に考慮するのは興味深いとのコメントがあった。

・武村委員長から、宇津カタログは全面改訂しないのかという質問があった。これに対し、佐竹委員から、関東地域は変えられるとの回答があった。また、平田委員から、新しく解析可能なものは変えるとのコメントがあった。続いて、武村委員長から、変えられるものは公表してもらうのがいいとコメントがあった。

3.サブプロジェクト@の管理・運営

・平田委員から資料【都27-2-10】に基づき、サブプロジェクト@の管理・運営について説明があった。

4.統括委員会によるプロジェクト全体の運営

・平田委員から資料【都27-2-11】に基づき、統括委員会によるプロジェクト全体の運営について説明があった。

5.サブプロジェクト間の連携について

・平田委員から資料【都27-2-12】に基づき、サブプロジェクト間の連携について説明があった。

〔その他〕

・最終成果の取りまとめに向けて

・平田委員から資料【都27-2-13】に基づき、最終成果の取りまとめについて説明があった。

・平成27年度成果報告書の作成について

・中川委員から資料【都27-2-14】に基づき、平成27年度成果報告書の作成について説明があった。

・日本地球惑星科学連合大会2016年大会について

・中川委員から資料【都27-2-15】に基づき、日本地球惑星科学連合大会2016年大会について説明があった。

・総評

・小林委員から、特に可視化の研究が興味深かった、今後どのように成果を周知していくか、行政での活用を図っていくのかを注目したいとのコメントがあった。また、本プロジェクトの後の発展も見据えてどのように行政の側でも研究成果を利用できるのかを考えていきたいとのコメントがあった。

・笠原委員から、MeSO-netの発足時に地球科学的な成果を期待できる一方、工学との連携には不安があったが、モデリングや可視化の研究に進展が見られる。また、歴史地震に関して詳細な被害状況が解明されつつあり、このプロジェクトは順調に進展しているようだとのコメントがあった。

・中村委員から、5〜10年以上の長期的な観点で、地震活動の予測や大規模シミュレーションによる被害の評価が進んでいて興味深かった。このような長期的な観点からの研究を進めてほしい。その上で気象庁としては業務に使えるような成果を期待したいというコメントがあった。

・水藤委員から、プロジェクト当初の計画と比べて、想定通りの成果が出ているのか、想定外の結果が出ているのか、あるいは想定通りに進んでいないのかといった状況も、発表の場では述べてほしいとのコメントがあった。

・庄司委員から、南関東の地震像がわかりやすくなった。この研究と大規模シミュレーションに基づく被害評価の研究との接続もさらに展開することが期待できる。最終年度の成果を期待したい、とのコメントがあった。

・木村(玲)委員から、2月29日に行われたサブプロジェクトBの成果報告会でのサブプロジェクト@とAからの研究発表に対して大きな反響があった。このような分担者レベルでの交流が重要だということを認識したとのコメントがあった。

・文部科学省田中室長補佐から、今回の運営委員会では議論が具体化してきたとの印象を受けた。プロジェクトの成果が外部からも見えるようにすることが重要であり、サブプロジェクト@の可視化の研究はその意味で大きな貢献をしている、とのコメントがあった。

・武村委員長から、MeSO-netや歴史地震の被害分布などの基礎データを残していくということが今後のプロジェクトに向けて重要であるとのコメントがあった。また、成果を分かりやすく示すためには従来の研究との比較を示すことが重要であり、今後の運営委員会ではそういう観点で成果を発表してほしいとのコメントがあった。

〔閉会〕

・武村運営委員長、平田委員から挨拶があり、閉会した。