【2008年サモア地震の新説についての解説】

                                                            東京大学地震研究所  佐竹 健治


2009年9月に発生したサモア地震(M8.1)からの津波はサモア独立国,米領サモア,トンガで200名近くの犠牲者を出しました.この地震はアウターライズにおける正断層地震とされてきたのですが,8月19日号のネーチャー誌には,ほぼ同時にほぼ同規模のプレート境界逆断層地震が発生していたという論文が掲載されました.

一つはBeavan ら(ニュージーランド)によるもので,主にGPSや津波波形から逆断層地震が発生したことを指摘し,正断層地震の直前にゆっくりと発生したため通常の地震計では検出できなかった,と主張しています.
もう一つはLayら(米国)によるもので,様々な地震学的データの解析から,正断層地震に引き続いて逆断層地震が発生したというものです.
どちらの地震がもう一方の地震を誘発したかを知るためには,どちらが先に発生したかを知る必要がありますが,この点で二つの論文の主張は異なっています.



詳細は,Double Trouble at Tonga (News and Views) Nature, 466, 931-932, 2010をご覧ください.

http://www.nature.com/nature/journal/v466/n7309/

ここで紹介した二つの論文は以下の通りです.

J. Beavan, X. Wang, C. Holden, K. Wilson, W. Power, G. Prasetya, M. Bevis & R. Kautoke,Near-simultaneous great earthquakes at Tongan megathrust and outer rise in September 2009, Nature, 466, 959-963.
Thorne Lay, Charles J. Ammon, Hiroo Kanamori, Luis Rivera, Keith D. Koper & Alexander R. Hutko, The 2009 Samoa Tonga great earthquake triggered Doublet, Nature, 466, 964-968, 2010.