日本海溝および南海トラフで起きる地震のアナログとしての台湾地震
| 今回の地震で異常隆起がみられた場所は,地震断層面の北西端に位置しているが,地上では川がほぼ東西に流れており,谷を河川堆積物が埋めてみかけ上平らになっている.S. -B. YuらのGPS結果によれば,南から付加体が北北西方向にこの堆積物にぶつかっている(GPSデータは北西端の非弾性変形を支持する参照).この堆積盆の北端にダムがあり,10 m近い隆起をしている(ダムの破損の写真). |
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| この地域の地形図に断層を書き込んだもの(中央地質調査所による) 緑の点は池田,佐藤によって調査された地点 |
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このような大きな隆起は,南からぶつかってきた付加体に堆積層が押されて非弾性的に変形して生じたと考えられる.桃畑の断裂と滝の隆起も同様に堆積物が北西方向に押し出されて破断したものであろう.したがって”なぜ北西端で大きな縦ずれと隆起がみられるのか?”で述べた異常隆起の原因を,北の丘と南の丘に挟まれた河川堆積物が,南からぶつかってきた上盤側ブロックの押し上げによって変形したものと,下の図のように改訂する. |
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| 上の河川堆積物の変形は,デコルマから分岐した断層に断層運動がおこり,付加体が海溝堆積盆にぶつかった場合の変形とよく似ている.河川堆積盆と海溝堆積盆とのアナロジーから,海溝で津波地震が起きたとき,堆積物がもりあがる領域は,堆積盆の幅かそれ以下であろうと考えられる.したがって”津波地震はどこに起きるのか”で描いた(b)の場合の海溝ウエッジの変形を,上のように改訂する.海溝系地震が津波地震となるためには,すなわち異常な隆起が起きるためには,堆積盆が海溝海側斜面でブロックされて,変形した堆積物がさらに海側の海洋底に流れ出さないようでなければならない.日本海溝の三陸沖の地形を見ると(Iwabuchi, 1980),その条件を満たしており,今回の地表断層の北西端の異常隆起部分は,日本海溝の三陸沖津波地震の完全なアナログを与えている. |
| 一方地表断層の南北走向部分は,南海トラフの巨大地震の完全なアナログを与える.なぜならばChelungpu断層は鮮新世・更新世の堆積層を切り,付加体をつくるout-of-sequence thrusts (OST)のうちの一本で(Suppe, 1981),南海トラフ巨大地震の断層が付加体を切る断層と同じものだからだ(倉本他, 1999,文献はどこで津波地震は起きるのか?にある).どちらも薄い堆積層を付加体の上に載せている.南北走向の地表断層部分で,地表の断裂の比高がGPSによる隆起とほとんど同じなのは,この西側の大中市部分がouter trench wallになっておらず,変形した堆積物がブロックされなかったためである.すなわちChichi地震のこの南北走向部分は,もし海中にあるとしても異常な津波を発生していない. |
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文献 Iwabuchi, Y., Topography of trenches in the adjacent seas of Japan, Marine Geodesy, 4, 121-140, 1980. |