大地の動きをさぐる 杉村新著 岩波書店
地球物理学の大学院に入って読んだ本のなかでこの本に一番感動した.このころ杉村新,松田時彦,笠原慶一,中村一明,藤田和夫.太田陽子などの一群の研究者は,日本列島の第四紀の変動はすなわち現在の変動でもあるという斉一観を強力に推し進めつつあった.それを支えた地質調査の一端を躍動感を持って描いたのがこの本である.そういう背景があったからえらく感激したのかもしれない.


大陸と海洋の起源 第3版 A. Wegener著 都城秋穂・紫藤文子訳 岩波文庫
この本の序文だけ真剣に読んで,後は流し読みでもいい.この序文からは,サイエンスをすることとは何なのかということを思い存分知ることが出来るだろう. "The sciences do not try to explain, they hardly even try to interpret, they mainly make models. By a model is meant a mathematical construct which, with the addition of certain verbal interpretations, describes observed phenomena. The justification of such a mathematical construct is solely and precisely that it is expected to work."というJ.von Neumannの言葉もこれに通じる.


学問の創造 福井謙一著 佼正出版社
ノーベル賞をもらった日本人の数も大分増えてきたが,受賞者が書いた本で一番私が好きなのはこれである.ここには上の項で述べた科学することとは何なのかとういうことが,具体的に,謙虚に,かつ躍動的に述べられている.


藤田和夫 日本列島砂山論 小学館
この本を最近何十年ぶりに読み返してみて,1980年代はじめ日本海東縁プレート境界説が唱えられた時,もっと評価されてしかるべきだったと思った.藤田の言った北部フォッサにおける東北日本と西南日本との連結は,東北日本と西南日本が別のプレートであることを実質的に主張していたのである.このことからも藤田は直観力にすぐれた人であることがわかる.

最近の地震でわかったことは,活断層はおそらく基盤の断層運動の地表表現にすぎないということだ.すなわち活断層 が 地震を起こすというドグマはもう成り立ってはいない(活断層は基盤断層であるとする学者もいる.しかしそれなら活断層という用語の再定義が必要だろう).

活断層のトレンチ調査や地震波探査,トモグラフィ,電磁気学的手法による構造,GPSやinSARによる地殻変動,などずいぶん詳細がわかってきたが,地震がどこでなぜ起こるのかに関しては,結局は杉村や藤田の時代から大きく進歩してはいないのではないだろうか?