| 地表断層付近の被害再考 |
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入倉(2000)によれば,台湾地震の地表断層の北部で低層構造物の被害が小さかったのは,主として速度応答スペクトルが長周期に大きな振幅をもっていたためという.これには,とりあえず次のような修正が必要だろう(以下は境有紀助手,東京大学地震研究所の私信による).断層南部のTCU129付近では,北部と比べ低層構造物の被害が多かったとされ,この観測点で,”加速度応答スペクトルが0.3秒の短周期で2000ガルを越える大きな振幅を持つ”ことが理由とされたが,実際にはこの付近での低層構造物の被害はほとんどなく,断層直上の被害であった(すなわち北部と同様であった)らしい.これは加速度応答の0.3秒という短周期でのピークが構造物に被害をもたらさないことから説明できる.一方北部のTCU068(石岡小学校)では,少し周期の長い0.5秒付近で1500ガル程度のピークを持っているが,これもやはり最も大きな被害をもたらす1秒よりも短周期ではあった.しかし1秒付近でもまだ800ガル程度の値を持ったために,断層から1km程離れた石岡の町はそれなりの振動による被害が生じ、石岡小学校はかなりの被害を受けた.一方埔里,國姓などの上盤側で震源の上に位置するところでは,加速度応答は1秒近辺にピークを持ち,低層構造物に大きな被害が出た.
断層上盤側では震源付近のやや小さめのアスペリティの破壊によって周期1秒程度の加速度応答が卓越し,低層構造物の破壊が起きた.地表断層付近に到達した周期1秒程度の波はこの付近の媒質の減衰が大きいために減衰してしまったのであろう.地表断層付近の観測点の加速度応答に1秒より小さいところにピークが出ているが,これは堆積層という軟弱地盤のせいであろう.断層運動そのものとしては,地表断層付近では,”ぬるぬる”とした破壊が伝搬していったこと,まわりの媒質の剛性が低いことと減衰が大きいことから,ばりばりというアスペリティの破壊とそれに伴う強震動は起きず,被害を生じない加速度,速度応答スペクトルとなったと考えられる.地表断層南部ではYagi & Kikuchiからは最大2 m程度のすべりを生じたアスペリティが見いだされるが,このすべりもアスペリティサイズからすべり時間が1秒より長く,すべり量がGPSによる変位の半分以下であることから,基本的には北部と同じで,ぬるぬるとした性格をもっていただろう.その結果加速度応答が,TCU129では1秒程度で500ガルと低く,TCU075(草屯)ではさらに低い300ガル程度の値(境私信)となり,断層直上以外では被害が生じなかったのであろう.これらの値は神戸と比べて1/3-1/4である. このような特別な事情を考えなくとも,入倉が言うように単に台湾地震のアスペリティサイズが大きいことで加速度,速度応答が説明できるのかもしれない.しかし他の場所でも述べてきた地表断層のいくつかの異常と思える振る舞いを考慮すると,上のようなぬるぬるが原因で異常な被害分布になったと考えたい. |
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文献 入倉孝次郎, 阪神・淡路大地震をおこしたものは何であったのか, 科学, 70, 42-50, |