大学受験生のみなさんへ

 私が受験生の時も勉強は苦しいものであったように思います.大学に入ってからは多少楽にはなりましたが,やはり目的がはっきりせず,講義は面白く感じられませんでした.それが変わったのは,大学院の地球物理学課程修士2年の時で,フィリピン海プレートの運動を決めようと思い立ち,それを決めることが出来てからです.このプレートの運動は,日本列島の地震,地殻変動,火山を理解するうえで欠くべからずものなのです.初めて解が得られたとき,これを知っているのは世界でも私だけなんだと感じ興奮したことを今でも思い出します.科学研究の面白さは,地球科学の分野に限らず,そのような誰もまだ知らない事実や真理の発見にあるのではないでしょうか.この時以来新たな問題を見つけてはその解を発見をするという研究生活が続いています.こうなると勉強は苦しいものではなくなり,むしろ自然に楽しくやっていけるように思います.
 物理や数学などと違って地球科学には,人間の生活する具体的な場・環境の研究という独特の面白さがあると思います.宇宙科学・惑星学の分野も広い意味では環境ですが,人間生活とはそれほどかかわりが密接でありません.地球科学のうち,特に地震,火山,プレートテクトニクスなどを研究する固体地球科学には,その原因が地下深くに埋もれているため,多くの未知で謎の部分が残されています.地震予知が容易でないのも一つはそのせいと言えるでしょう.言い換えると,これから解くべき面白い問題がいくらでも残っているわけで,若い人たちのこれからの活躍が大いに期待できる分野だと思います.
 そのような地球科学の研究を行うには,数学,物理などの基礎的学力が必要不可欠なバックグラウンドとなることは当然ですが,国語,英語などで培われる論理的な文章を書く力・読解力も,論文を書いたり読んだりする上で,同様に必要不可欠と言えるでしょう.もしあなたがたが将来研究者になり,わくわくするような発見の人生を送りたいという意志と希望を持っているならば,今現在はなにを将来やるのかはっきりしないかもしれませんが,苦しくてもしっかりこれらの基礎科目を勉強し身につけることを薦めます.