津波地震に対してもつ意味
従来のモデル
| 一般に津波地震と呼ばれる地震は,周期15秒の振幅から決める表面波マグニチュードMsに比較して津波の振幅が異常に大きいものを指す.一つの解釈は,断層面でゆっくりとしたすべりが起きたというものである.この場合,震源断層運動のスペクトルが短周期側で振幅を減ずるので,モーメントマグニチュードMwがMsより相対的に大きくなる.したがって津波に差がでる.しかしこれによって津波の発生を説明するには限度がある.あまりにもゆっくりとしたすべりでは津波が励起されないからである.Fukao (1979)は,1963年と1975年の千島海溝付近の地震に対して,断層が付加体と海溝ウエッジ堆積盆まで突き抜けていくモデルを提出した.付加体の部分でプレート境界面から分岐断層が立ち上がる(デコルマからランプが立ち上がる)ので垂直変位が大きくなると同時に,剛性率が小さいのでおなじ応力解放量に対してすべりが大きくなる,という説明をしている.付加体の分岐断層はそれでも低角なので,Fukaoによれば,津波振幅の50 %増加をもたらすにすぎない.低い剛性率のためにさらに津波の大きさが4倍となるという計算なのだが,この強度が低い付加体と堆積盆部分が,それより深部の付加体と同じ応力を解放するとは思えず,むしろプレート運動の一定性を考えれば,ほぼ同じ量だけすべると考えられる(この批判は,Fukaoの後,Satakeらによって提案されて行くモデルにそっくりあてはまる.海溝軸付近で,Satakeらが提案している高ストレスドロップが起きることはありえない).実際,今回の地震では,付加体の先端部分の変位量は,GPSによれば6 mであり,Yagi & Kikuchi (1999)の最大すべり量と同じである.したがってFukaoのモデルでも,津波地震のための異常な海底の隆起は,説明されていないと思われるし,さらにSatakeらによる海溝軸付近のdislocation集中モデルは,その矛盾を拡大している. |
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今回の地震の異常隆起と津波
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断層の北西端に大きな隆起が生じたことを堆積物の流動的な変形で説明した(なぜ北西端で隆起が大きかったのか参照).この地域での6-9 mの隆起はGPSによる隆起の2-3倍ちかい.地震が海面下にあり,海溝ウエッジを地震断層が突き抜けた場合,同じようなメカニズム,すなわち堆積物の流動的振る舞いによって大きな隆起をもたらし,したがって大きな地表変形を引き起こして津波地震となることが期待される.今回の場合は,左横ずれ成分が断層運動にあるので北西端で隆起は大きくなるが,もし日本海溝のように,プレート相対運動が海溝に直交方向であれば,押し上げられた堆積物のために断層の上盤側先端に線状に大きな隆起域が出現するだろう. Fukaoの解析した南千島の二つの津波地震,Tanioka & Satake (1996)が解析した1896年三陸沖津波地震,Satake (1994)が解析したニカラグアの津波地震,Johnson & Satake (1997)が解析した1946年アリューシャン津波地震などの津波地震と今回の地震が海溝に対して全く同じ地学的位置で起きていることは興味深い.台湾地震は,デコルマ部分のすべりが速いことが三陸沖地震とは違っているが,千島の二つの地震とはきわめて似ている. |
変な津波に対する展望
| 変形がディスロケーション理論に合わないで,堆積物の移動によって起きることが,今後起きる津波や過去に起きた津波の解析にもたらす意味は大きい.実際,日本海溝南部で断層モデルと合わない例があることを石橋克彦氏(神戸大学教授,私信)は指摘している.また98年7月17日のニューギニア津波地震(Ms = 7.0)に対して,谷岡勇市郎氏(気象研究所)は,隆起が大きくまた波源域の幅がせまくなければならないという要請から,ニューギニア海溝の付加体部分に高角逆断層をおいているが,そうすると沈み込みとは逆のdipとなり,地学的にはあり得ないものとなる.それに加えて津波の波源は海岸から遠かったことを示す住民の証言もある.これらの矛盾は,プレート境界にそって低角逆断層運動がゆっくりおこり,海溝付近に堆積物の変形によって大きな隆起をもたらしたとすれば解決する. |
どこに津波地震は起こるのか?へつづく |
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文献 Fukao, Y., Tsunami earthquakes and subduction processes near deep-sea trenches, J. Geophys. Res., 84, 2303-2314, 1979. Johnson, J. M. and K. Satake, Estimation of seismic moment and slip distribution of the April 1, 1946, Aleutian tsunami earthquake, J. Geophys. Res., 102, 11765-11774, 1997. Satake, K., Mechanism of the 1992 Nicaragua tsunami earthquake, Geophys. Res. Lett., 21, 2519-2522, 1994. Tanioka, Y., and K. Satake, Fault parameters of the 1896 Sanriku tsunami earthquake estimated from tsunami numerical modeling, Geophys. Res. Lett., 23,1549-1552, 1996. Tanioka, Y., GRL, in press, 1999. |