どこで津波地震は起きるのか?

津波地震の原因

 ゆっくりした地震すべりは確かに相対的に大きな津波をもたらす.しかしモーメントが倍になってもモーメントマグニチュードは0.2増えるだけである.前にも述べたようにこのメカニズムで異常な津波波高を生じるには限度がある.実際1992年ニカラグアの津波地震に対して,その津波波高をこのメカニズムで説明することはできない (Ide et al., 1993).またSatake (1994)をはじめとする観測された津波の波高と到達時間を用いた解析はすべて,波源は海溝軸に近く,かつ波源域は狭くなければならないことを示している.これは,海溝堆積物の変形が津波の原因であるとするとよく理解できる.

 すなわち津波地震とは,こういう海溝堆積物の変形をともなう地震であるとし,断層面のゆっくりとしたすべりは,むしろslow earthquakeのジャンルに入ると考えた方がよいだろう.

どこで津波地震は起きるのか?
 もし上の主張を認めるならば,将来の津波地震が起こりうる場所を予測することができる.異常津波が起きるか否かは,付加体中にデコルマから分岐してきた断層が,地表につきでる場所に,海溝堆積物があるかないか,どの程度あるかできまる.(a)南海トラフのように断層が突き出る場所が海中であると(倉本他, 1999),地震すべりにともなう地殻変動から期待されるだけの津波がでて,津波地震とはならない.実際我々は,1605年慶長地震しか津波地震を南海トラフで知らない(石橋克彦氏,神戸大学私信,によれば,この慶長地震は,海溝ウエッジのfrontal thrusts付近を切ったらしい).(b)適当な厚さの堆積物がかぶったところに突き出ると,堆積物の大きな隆起がおき,異常津波が発生する.おそらく日本海溝や千島海溝で津波地震が発生するところは,そのようなところなのであろう.(c)バルバドスのような分厚い堆積物がかぶっていると,断層は堆積物中に突き抜けて行くが,変形は局所化せず,異常津波はおきないだろう.

文献

Ide, S., F. Imamura, Y. Yoshida, and K. Abe, Source characteristics of the Nicaraguan tsunami earthquake of September 2, 1992,Geophys. Res. Lett., 20, 863-866, 1993.

倉本真一・他, Japan-US collaborated study on western Nankai accretionary prism -evolution of accretionary prism and seismogenic zone imaging -, Abstr. Seism. Soc. Jpn 1999.