Linux Zaurus を用いたLS-7000XT出力パケットの確認

芹澤 正人(東京大学地震研究所)

はじめに

 白山工業よりLinux Zaurus SL-C700/750/760/860(SHARP)用LS-7000XT出力パケット確認ソフトウェアがリリースされた。
 SL-CシリーズはOSにLinuxを採用したPDAである。軽量ながらパソコンと比較しても遜色の無いスペックを持っており、ユーザーズグループによりX-window環境も整いつつあるなど、今後の発展が期待されている。
 今回は実際の設置作業において重要であるLS-7000XTからのパケット出力の確認と、出力波形のノイズの有無などのチェックをこのソフトウェアを使って行う手順についてまとめた。

使用機材

・LS-7000XT一式
  CFは128MBを使用。
・SL-C860
・CF型LANカード
・1Hz地震計(S波用・勝島製作所)
 
  今回はテストのため、1成分地震計1台のみを接続した。
・RT57i(YAMAHA)
  HUBとして使用。

設定値

今回は以下のような設定で行うものとする。

・network
 LS-7000XT→192.168.0.10
 SL-C860→192.168.0.2
・data
 サンプリングチャンネル数 3ch
 アドレス 0000-0002
 サンプリングレート 200Hz
 サンプリングビット数 24bit
 出力ポート 7000
 パケットタイプ a0

準備

1.LS-7000XT本体に電源アダプター・GPSアンテナ・端子盤・LANケーブルをマニュアルどおりに接続する。CFスロットには付属の128MB CFカードをなにも書かない状態で挿入しておく。

2.LANケーブルはRT57iに接続し、ルーター・LS-7000XTの電源を投入する。

3.LS-7000XTがTCALを始めたところでESCボタンでキャンセルする。

4.白山工業鰍フホームページよりa0wave.lzhをパソコンでダウンロード後展開し、a0wave_1.0_arm.ipkをCFカード等でzaurusに転送してインストールする。このとき、インストール先は本体以外にしても問題ない。

5.LS-7000XTをマニュアルおよびa0wave付属のpdfファイルに従って設定する。特に必要な項目は以下のとおりである。

Common→Record=ALL
TCP/IP→192.168.0.10,255,255,255,0
TCP/IP→Device=Ethernet
Gateway=192.158.0.1
Measure1→Address=0000
Measure1→Sampling=200Hz
Measure1→Ch1Gain=0dB
Measure1→Ch2Gain=0dB
Measure1→Ch3Gain=0dB
Measure1→Precision=24
Measure2→Ch1Gain=off
Measure2→Ch2Gain=off
Measure2→Ch3Gain=off
WIN_UDP→192.168.0.2
WIN_UDP→WinPort=7000
RT-Output→Device=WIN_UDP
RT-Output→PktType=A0

 尚、今回は室内でのテストのため、以下の設定を追加し、GPSによる時刻補正を無効にした。
Time CAL→Mode=NONE

6.ZaurusにLANカードを挿入し、ネットワーク設定も同様に変更する。LANケーブルはルーターに挿しておく。

7.LS-7000XTを再起動する。このとき、GPSによる時刻補正が無いため初期化後すぐ収録・パケット送出がスタートするはずである。

8.Zaurus上でa0waveを起動する。メニューより「Select channel No.」を選択し、0000チャンネルを選んでOKを押すとLS-7000XTから受けたパケットを描画し始める。

9.端子盤に地震計を繋ぎ、正しく波形が描かれるか倍率ボタン・オフセットボタンを適宜操作して確認する。

  

トラブルシューティング

・a0waveが起動しない
 →正しくインストールされているか? 一旦アンインストールし、再度インストールを試みる。場合によってはホームページから再ダウンロードしてみる。
・チャンネルを選択できない
 →パケットがZaurus宛に送出されていない
  →HUBを接続していればインジケータが1秒ごとに点滅するのを確認する
   →LANケーブルは正しく接続されているか?
   →LS-7000XTは正しく設定されているか?
    →WIN_UDPがZaurusのアドレスになっているか、パケットタイプがa0であるか、送出ポートは7000か?
・正しく地震計の波形を描画しない
 →端子盤の接続は間違っていないか? ダンピング抵抗は入っているか?

使用感など

・1画面に1成分しか表示できない
・描画が若干遅い
・ボタンに対する反応が鈍い
・パケットの送出確認程度ならば十分実用になる
・受信データをCFなどに記録し、オフラインで見る機能が欲しい
・データにリアルタイムにフィルタをかける機能があればよい

まとめ

 ソフトウェアは出力パケットをチェックするための最低限の機能しか持っておらず、これだけで新規観測点設置時におけるシステムチェックのすべてを行うことは無理であるが、サーバーへのパケット不到達時の原因究明など、用途によっては役立つ面もあると思われる。今後はWINシステムの移植などによってステータスパケットのチェックなども行えるようになるとますます便利になるだろう。ノートパソコンに比べて小型軽量という特徴を生かし、今後、機動観測における必携ツールの一つとなることを望んでいる。

アルバム


 全体図


 接続図


 LS-7000XT前面


 LS-7000XT背面


Masato Serizawa(Earthquake Research Institute , Univ. of Tokyo)