凝集火山灰・カタの形成について 2000/9/19更新

 今回の噴火では非常に大量のSO2およびH2Sが放出され,健康への被害が心配されています.このように噴火に伴って硫黄の化合物が大量に放出された例は最近ではフィリピンのピナツボ火山があります.このときも噴出したマグマの量から考えられるよりもはるかに大量のSO2が放出されました.しかし,まだその原因については様々な考えがありよくわかっていません.

 今回の噴火で大量に放出されたものの1つとして石膏が挙げられます.じつはこれも硫黄の化合物です(CaSO4・2H2O).この化合物の性質を調べることによって今回の噴火のメカニズムに何らかの制約を与えることがと考えられます.

1.水溶性結晶の検出

2.凝集火山灰

3.カタ

4.硫黄同位対比>>今井氏,下司氏 


1.水溶性結晶の検出

 水洗した(細粒成分は捨てていない.ただ水に溶いただけ)乾固した7/14-15の火山灰上に白色の結晶が多量に認められました(1).これらの結晶は先端が斜めにとがった針状の結晶です(2).一点を核にして放射状に成長したものもありました.核となっているのは火山灰粒子のやや粗いもののようです.白色の針状結晶とは別に火山灰表面には暗灰色の斑点がほぼ等間隔で認められました(3).これらは,白色結晶に比べて小さいため実体顕微鏡下ではどのような結晶であるのかはわかりませんでしたが,きらきらとした劈開があるようなので,結晶であると思われます.また,別の試料でも同様の針状結晶(4,5)と斑点状の結晶(6)が認められました.

 これらの結晶は乾固前には認められませんでしたから,水溶性の結晶であると考えられます.これらの火山灰には水溶性の結晶として石膏が含まれていることが確かめられています(私信;大場氏@東北大).結晶形も一般的に見られる石膏の結晶とよく似ています.したがって,これらの火山灰には多量の石膏が含まれていたと考えられます.

1

2

3

4

5

6


2.凝集火山灰

 一方,7/8の火山灰は7のような凝集粒子として降下堆積しました.これらは内部に核(数mm〜1/8mmくらい)としてスコリアや溶岩片などを持ちます(凝集粒子1つ当たりに核は1つしかないことがほとんど).,この核の周りは核よりもずっと細粒な同質の火山灰と白色〜淡赤色のおぼろ状の細粉が覆っています(マントル部).このマントル部は比較的固く核に付着しているため金属製のピンセットなどを使って取りのぞきました(8).このように凝集粒子は比較的固く凝集していることがわかりましたが,これらの粒子を水中に入れてみるとあっという間に自発的に気泡を発生しながらバラバラになってしまいました(9).さらにマントル部だけをほぐしたものに水滴を加えると(10-11),おぼろ状の細粉は溶けてしまうことがわかりました.すなわち,凝集粒子はこれらの水溶性結晶によって固く結合しているものと考えられます.おぼろ状の細粉は量的に7/8の火山灰のかなりの割合を占めていると考えられ,今後,これらがどのように形成されたか考察する必要があると思います.おそらく火山灰が放出されたときに噴煙内で,同時に石膏が放出され,これらが水蒸気から凝集した水に溶けて(あるいは石膏水溶液が放出されて?),さらにスコリアや溶岩片と衝突することによって付着し凝集粒子ができたのではないかと考えられます.

7

8

9

10

11


3.カタ

 さらに7/14-15の火山灰(かた)についても水滴をたらしてみました.するとやはり自発的に気泡を発生しながらほぐれていきました(12-13).また,この試料にもおぼろ状の細粉が認められ,水に溶けることがわかりました.このことから,水溶性の結晶(細粉)がセメントすることによってカタの固い構造が形成されていると考えられます.これらの水溶性結晶の同定や構造の観察等からカタの形成の考察を行うことができると考えられます.

12

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 さて,約2500年前に起きたと考えられる八丁平の陥没でも同様のカタが形成されました(津久井・鈴木,1998).このうち今回は,三宅支庁の駐車場の露頭に見られるカタを採取してきました(長井氏).このカタは今回の噴火によるカタに比べてもっと固く締まっています.早速,これらも水に溶いてみました.しかし,上述の今回の噴火の火山灰のように溶けてバラバラになる現象は,はっきりとは認められませんでした.このことは,現在の残存するカタはもっとちがったモノ,あるいは結合の仕方で固い構造を保っていることを示しているのかもしれません.


三宅島火山2000年活動情報 

硫黄の同位対比について(今井氏,下司氏)