研究概要(May 8 , 2007の暫定版です.図表の挿入などのupdateを行います)
火山噴火のメカニズムを理解するには,火山下のマグマ供給系の深さ・構造や,マ グマの挙動を知ることが重要です.このような視点で地質・岩石学的研究を行ってき ました.特に火山噴出物に残されたマグマの挙動の記録を丹念に解読することを重視 してきました.
1. 1火山のマグマ供給系進化と,海洋性島弧におけるマグマの成因
修士までは,過去15万年にわたり活動してきた東伊豆単成火山群の調査を行い, 見出しの課題に取り組みました(鈴木,2000).火山下の供給系の研究の多くは噴火 直前の(マグマ溜りでの)状態を探りますが,この研究ではマグマ生成まで遡り,よ り総合的に供給系を扱ったことが特徴です.すなわち珪長質地殻の部分溶融により生 成した珪長質マグマについて,噴火直前にも珪長質地殻内に存在し,かつ生成条件に 近い温度であったことを示すことで,生成後,著しい移動・温度変化を経ずに噴出す るシナリオを提示しました.さらに安山岩質マグマを生成する,玄武岩質マグマによ る珪長質地殻の同化過程の多様性と,その時間変化を明らかにしました. この研究では,REE のICPによる分析も経験しました.島弧マグマ学講座に以前所属し,私も研究指導をさせて頂いた吉木さんのテーマ(新島火山の供給系)は,同じ海洋性島弧に属するという点において,東伊豆の研究と密接な関係がある(鈴木,1999).
なお1火山のマグマ供給系進化という視点で,今後榛名山二ツ岳の研究に取り組む予定です.2-1では6世紀中頃の1噴火の研究のみを行っておりましたが,二ツ岳では6世紀初頭にも噴火の記録があります.
2. 噴火に際したマグマ挙動
主にマグマ溜りよりも浅所でのマグマのダイナミックスを,噴出物の結晶・発泡組 織や,結晶・ガラスの組成から読み取り,噴火機構への理解を高めることを目的とし た研究です.浅所でのマグマ移動(上昇)の速度と様式が,噴火機構(e.g.噴火様式) を左右するとの考えが提示され,この種の研究に注目が集まるようになりました.従 来からの岩石学的研究に比べ世界的に例が少なく,今後も事例研究を進める必要のある分野とい えます.D論以来のテーマであり,今後も取り組むことになります.D論では2噴火 の機構の検討を行うだけでなく,噴出物からマグマ上昇の情報を定量的に抽出する手 法の改善・開発も行いました. 例えば斑晶包有物・石基に存在するガラスのH2O,S・Cl含有量を測定したり,絞った電子ビームでガラスを測定する際のNaカウント減衰の補正法も検討した(鈴木・中田,2001の付録).
最近まとめた総説(鈴木,2006)は実験に限った内容ではなく,火山噴出物から噴火に際したマグマ挙動の履歴を読み取るための手法が幅広くまとめられており,私が次の有珠や榛名の研究を通じ培った独自のアイデアも盛り込んでいます.
2-1 噴出物からの情報抽出による研究
マグマの移動過程では,マグマの減圧によって,結晶・発泡組織が連続的に変 化します.したがって精度良くマグマ移動を復元するには,ある組織がいつ形 成されたか理解することが重要になります.そこでこのような判断を可能とす る結晶や気泡のサイズ分布を利用したり,下記の工夫を試みました.結果的に マグマ移動の微分情報(速度変化や停滞,等)を明らかにしました.
・榛名火山二ツ岳噴火 6世紀中頃に起きた一輪廻の活動(プリニー式→火砕流→溶岩ド-ム)を対象 に,マグマ移動様式の一噴火を通じた変化と,その噴火様式多様性との関係を 議論しました(Suzuki and Nakada, in prep. for JVGR).
二ツ岳については,斑晶に富み粘性の高い珪長質マグマの噴火誘発機構,とい う視点からも検証しました.珪長質マグマ溜りに苦鉄質マグマが注入し生成し た低粘性なマグマが,元の珪長質マグマに先立ち噴出する事実を踏まえ,低粘 性マグマが火口を開栓しマグマ溜りが減圧されるプロセスが,高粘性マグマの 噴出に重要であったと提唱しました.さらに斑晶質苦鉄質マグマが珪長質溜りへと上昇する途中で,斑晶が後方へと分離された結果,無斑晶部,斑晶質部といった順で浅所に供給される現象も見いだした.さらに最初に噴出したマグ マのみが溜りからの移動途中火道で停滞したことを明らかにし,それはマグマ移動が火道 形成と平行し起きた結果であると提案しました(以上をまとめ Suzuki and Nakada, 2007 ).
・有珠山2000年噴火 3月31日のマグマ水蒸気爆発前における,マグマ挙動を明らかにすることを 目指しました.帯水層での固結深度の異なる軽石の組織比較から,帯水層での マグマの組織変化を押さえ,これを手がかりに,溜りからの移動を通じた組織 変化・移動の履歴を復元する試みを行いました(鈴木・中田;2001,2002).特 に鈴木・中田(2002)では,気泡核形成・気泡のマグマからの分離の履歴を解 明しました.これにより山頂地下を上昇後,西麓の西山地下(2km深)まで到 達したマグマが,西山地下通過後(火口の開栓によって)加速するモデルを提 唱しました.すなわちマグマ移動が,2ステージに分類できることを示 しました.
2― 2 実験的研究
アラスカ大でば,噴火に際したマグマ挙動 を様々な条件で再現し(減圧実験),噴出物組織 が再現される度合いによって,実際の 噴火での移動速度や様式を決定する試みを行いました(Suzuki et al. 2007).共同研究者(Dr. James E. Gardner, Dr. Jessica F. Larsen)に,有珠2000年を対象とした研究を提案しました.結果的に物質科学的データを地球物理学的データと比較可能な精度に押し上げることが可能であることを示し,前者が後者を解釈する手助けになることを示した.すなわち1)前兆地震は開始後2日経って活発化したが,それがマグマ溜り(4-6km)からの噴出マグマの上昇開始と同時であり関連していること,2)深部のマグマ溜りの収縮開始が,4-6km深の溜りからの上昇開始と時間的に一致し,浅所でのマグマ上昇が深部マグマの上昇を誘発したと考えられること,を提案した.
合わせて実験的手法で減圧に伴う発泡・結晶作用の普遍的特徴も探り,噴出物からの情報抽出(2-1)の精度の向上に資する試みも行っている(Suzuki et al., in prep.等).以上の研究を通じ,実験技術(外熱式)への理解を深めた.またSuzuki et al. (2007)によってマグマ溜り深度を決定する相平衡実験も経験しました.