大学における地震・火山噴火予知研究に関する要望書

平成13年11月2日

関係者各位

地震予知研究協議会議長     

   濱野 洋三   

火山噴火予知研究協議会議長     

石原 和弘   

 

 貴大学から,地震予知研究・火山噴火予知研究について日頃からお寄せいただいている御高配に深く感謝いたしております。さて、大学改革が急速な勢いで行われようとしている最中でありますが,現在進められている貴大学の制度設計におかれましては、是非,以下の点をご考慮していただきたく存じ,このような要望書を提出させていただくものです.宜しくご検討いただければ幸いに存じます。

 

(1)地震予知・火山噴火予知研究の背景とこれまでの経緯

 地震予知・火山噴火予知計画は、これまで、全国の研究機関、防災機関、行政機関が共同で実施してきた国家的研究計画です。本計画は、地震火山に関する研究を強力に推進し、地震火山に関する研究の成果を防災に生かすために、研究機関と行政機関を含めた多くの国民との連携のもとに進められてきました。

 地震予知計画は、昭和37年(1962年)に研究者グループによって立案された「地震予知―現状とその推進計画―」を受けて、測地学審議会が審議して昭和39年(1964年)に建議した「地震予知研究計画の実施について」(第1次計画)に始まります。その後、約40年間にわたり、ほぼ5年ごとに計画をその進捗状況によって見直し、新たな計画を策定して実施してきました。現在は、平成10年に建議された「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」(平成11年からの5カ年計画)に基づいて研究が行われています(資料1)。

 火山噴火予知計画は昭和48年(1973年)に立案され、地震予知計画と同様に、5年ごとの建議によって計画を策定・実施してきました。現在は、平成10年に建議された「第6次火山噴火予知計画の推進について」(平成11年からの5カ年計画)に基づいて研究が行われています(資料2)。

 

(2)地震予知・火山噴火予知研究における大学の役割

 地震予知・火山噴火予知計画は、防災・災害軽減のための実用的な予知技術の確立を目指し、そのためには広範な基礎的研究を強力に推進することが不可欠です。現在のところ、予知のための実用的技術は確立されていませんので、基礎的な研究を進めることが重要な分野です。地震予知・火山噴火予知研究の難しい点は、ひとたび大地震や大噴火が起きると甚大な被害が発生して、その社会的な影響は長く続きますが、そのような事象の発生頻度は低く、自然科学の研究を進める上での基本的観測データを蓄積するためには、長期間の観測研究を継続することが不可欠な点にあります。例えば、プレート境界で発生する巨大地震の再来間隔は平均的には100年程度であり、内陸の大地震は1000年程度であると考えられています。また、火山噴火の間隔は火山ごとに異なり、普通は数十年から数千年にもおよびます。このような、長期にわたって継続しなければ予知という目標が達成できない研究においては、大学における継続的でありながら先端的な研究の展開が必要であり,後継者の育成が極めて重要です。そのため、計画実施にあたって大学の果たす役割は大きく、これまで全国的規模で関連の観測研究センター、施設、講座等が整備されてきました(資料3,資料4)。

 地震・火山の研究においては、日本列島にまたがる大規模で継続的な観測が必要です。現在、国によって整備されつつある全国規模の基盤的観測網は、業務機関によって維持・運営されています。大学における基礎的研究では、これら基盤的観測データの活用を前提として、先端的予知研究を実行するために高度な観測を実施しています。これらは、自由な発想に基づく個人や、小規模なグループによって実施されるものから、全国的規模で実施される大規模観測研究まで含まれています。

 こうした大学における先端的な予知研究を全国的な規模で実施するために、全国共同利用研究所である東京大学地震研究所に、地震予知研究協議会・火山噴火予知研究協議会が設置されています。両協議会は、関係の諸機関の実施する研究計画の立案、概算要求事項の調整、研究計画の進捗状況の把握に努めてきました(資料5、資料6)。

 

(3)関連の機関の役割

以上のような経緯によって実施されてきた地震予知研究・火山噴火予知研究を今後とも推進していくためには、各機関において、センター・施設等の設置の目的に沿った教育・研究活動を引き続き継続する必要があります。地震・火山噴火は日本の各所で発生する一方で、現象の全体像把握のためには、地域的な特性を十分考慮した予知研究を実施することが重要であり、後継者を育成する上においても、全国各地の拠点的な大学での教育・研究活動の継続・発展が不可欠です。各大学におかれましては、予知研究関連のセンター・施設等の活動を今後ともご支援していただきたく存じます。

 

(センター・施設等の定員の整備)

 現在議論が進んでいる大学制度の改革のなかにおいては、各大学独自の判断で大学を運営していくことが重要とされています。定員の運用にあたっても、大学の自主性が強められています。地震予知・火山噴火予知計画の中で整備されてきたセンター・施設等の定員は、予知計画の全体のなかで予算措置されてきたものであり、これを他の分野へ転用することは全国的な計画の遂行の上で不都合が生じ、変更に当たっては全国的な見地から検討し調整する必要があることを是非ご理解いただきたく存じます。地震予知・火山噴火予知関連施設等の定員の整備については、今後とも格段のご配慮を賜りたいと存じます。

 

(予知研究計画実施にかかる事業経費の措置)

 予知研究計画実施にかかる事業経費の予算措置のために、測地学審議会によって建議された地震予知計画、それに基づいて、地震予知研究協議会が策定した実施計画・概算要求事項に沿って、関連大学のセンター・施設等の実施する研究計画・概算要求が作成されています。また、火山噴火予知計画においてもこれに準じた方法がとられています。このため、各大学におかれましては、これらの予知研究計画が今後とも推進されるように、各大学で策定される教育・研究計画のなかに、地震・火山噴火予知研究を盛り込み、適切な予算措置が今後も行われるように努力されることを要望いたします。

 

(添付資料一覧)

  1. 「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について(建議)」、平成10年8月、測地学審議会
  2. 「第6次火山噴火予知計画の推進について(建議)」、平成10年8月、測地学審議会
  3. 地震予知計画の各次における予算及び機構定員整備状況(「地震予知計画の実施状況等のレヴューについて(報告)」、測地学審議会・地震火山部会、平成9年6月、p.109-111)
  4. 火山噴火予知計画の整備進捗状況
  5. 地震予知研究協議会の構成と規則
  6. 火山噴火予知研究協議会の構成と規則


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