GPSの応用
- GPS(Global Positioning System)は極めて応用範囲の広い技術であり、その応用の仕方によって数q程度の広がりの火山体の地殻変動から地球全体の変形まで、様々なスケールの地球表層の変動現象を明らかにすることができる。このためGPSは測地学・地球物理学の分野で基本的な観測手段として急速に導入されつつある。地震研究所のGPS研究グループは、日本列島の地殻変動の観測や周辺のプレート運動の観測など、多数の受信機と研究者を必要とするような大規模なプロジェクトを企画立案し、国内外の研究者と共同して、観測研究を実施している。
大学の地殻変動研究者はGPSの基礎的な研究を進めるために1988年頃「GPS大学連合」を結成し、手始めに相模湾周辺でGPS観測を開始した。また、1990年からは国立研究機関の研究者を交えた「GPS検討会」が主催して、日本列島にGPS観測網を展開しようという「GPSJAPAN計画」が始められた。このような初期の共同研究では地殻変動の検出そのものよりも、観測形式の基礎的なノウハウの蓄積や精度向上のための基礎的研究に主眼が置かれてきた。
1992年頃から、GPSによる基線解析精度が格段に向上するようになり、日米科学協力事業や地震予知計画事業など様々な共同観測研究を通じて、フィリピン海プレートの運動や全国各地域の地殻変動の姿が次第に明らかになりつつある。このような短期間に決められるプレート運動の極が時間と共にどのように変化していくかを継続監視することにより、プレート運動のダイナミクスの研究や地震予知研究がよりいっそう進展することになろう。
このような共同研究の一環として、「GPS大学連合」を中核とするGPS研究グループでは西太平洋地域に観測点網を展開し、地理院の国内観測網とも協力しつつこの地域のテクトニクス研究を推進していこうとしている。一方、キネマティック方式による高時間分解能の地殻変動観測の可能性や大気遅延量推定を通じての気象学への応用など、GPSの応用分野はさらに拡がる可能性をはらんでおり、地震研究所では全国の研究者と共同しつつこれらの応用分野への展開を図っている。
(加藤 照之 地震予知研究推進センター)