伊豆半島東方沖の光ケーブル式海底地震観測網
- 伊豆半島周辺では、1974年の伊豆半島沖地震以来、被害地震や群発地震が毎年のように発生してきた。特に半島東方沖では毎年2度位ずつ群発地震が発生するとともに、東海岸を中心に年に20mm程度という顕著な地殻隆起が続いており、地震活動の消長は地下のマグマ活動と密接に関係していると考えられてきた。そして89年には、ついに伊東市沖の手石海丘で実際に海底火山が噴火するに至った。
地震地殻変動観測センターでは、70年代から長期にわたって伊豆半島およびその周辺での高感度地震観測を継続し、このような地殻活動の経過を詳細に調べてきた。しかし半島東方沖の地震活動の場は、海底のごく浅い地殻中である。微小地震観測からマグマの動きを捉え、その活動を時間・空間的に追跡するためには、直上海底での高感度観測が不可欠である。そこで当センターでは伊豆半島東方沖の相模湾海底に、世界で初めての光ケーブルによる海底地震観測網を設置することを計画した。
1989年から機器の開発製作に着手し、5年後の94年2月にようやく、水深1000〜1300mの海底3ヶ所を延長25kmの光ファイバーケーブルで結んだ海底地震観測網が完成した。3台の観測装置はそれぞれが内部に直交する3軸の加速度センサーをもち、極めて微弱な振動から有感地震までを忠実に電気信号に変換し、ディジタルデータとして伊東市富戸の陸上局に伝送する。ここから、伊豆半島内13ヶ所の陸上に設置された地震計からのデータとともに、無線回線を通じて常時東京の地震研究所に送られる。東京では送られてくる海底のかすかな振動波形から、地震を自動的に検知して震源位置が算出される。こうして地震活動をリアルタイムに追跡することにより、地下のマグマの動きを捉え、地殻変動や火山活動のメカニズムを知るとともに、今後の活動予測に結びつけることをめざしている。
(ト部 卓 地震地殻変動観測センター)