衛星通信地震観測テレメタリングシステム平田直、卜部卓、鷹野澄 |
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このシステムの特徴の一つは、2ホップ方式の通信です。観測点から電波を衛星に打
ち上げ、受信局で電波を受けるまでに、一度地上の中継局でデータを太い束にまとめ
て増幅する方式です。送信局から衛星、衛星から中継局、中継局から衛星、衛星から
受信局と言う経路で2度衛星に電波を打ち上げるわけです(図2)。こうすると、最
初の送信局と最後の受信局のアンテナ設備を小さくすることができます。送信局には
、75 cmのアンテナ径の超小型地球局が設置されます(写真1)。
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また、受信局には 、1.2 - 1.8 m 径のアンテナ設備を用います。そこで、重要になるのは、中継局です 。地震研究所に新しくできた「衛星テレメータ棟」には中継設備とデータの制御を行 う装置が設置されました。屋上には、3.6m径の大型パラボラ・アンテナが設置されて います(写真2)。
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さらに、この建物には、得られるデータを用いた研究の拠点とし
て、研究室・実験室を整備し、共同利用されます。じつは、地震研究所の「中継設備
」と同じ機能を持つ設備は群馬県にある(株)衛星ネットワークが運営する衛星通信
センターにも設置し、主局として運営しています(写真3)。衛星通信センターでは
、24時間体制で回線の状態をモニターし、障害に対応します。地震研究所の中継局
は副局で、主局の障害をバックアップする体制がとられています。中継局での集中豪
雨などによる回線の障害に備え、降雨量を監視して、群馬の衛星通信センターから東
京の地震研究所へ自動的に中継機能を切り替えるようになっています。これをサイト
・ダイバーシティー機能と呼んでいます。
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衛星テレメータシステムは、地上回線に依存しないので災害に強く、距離に制約され
ないので離島や山間部での観測が容易になり、同報性により多数の研究拠点でデータ
を受信できるのでデータをリアルタイムに全国共同利用できる、などの特徴がありま
す。また、すべてのデータを全国で利用できるので、1観測センターの障害を他のセ
ンターでバックアップすることもできるようになります。高度な臨時観測を迅速かつ
容易に展開できるため、重点地域の精査研究が促進されます。今年実施が計画されて
いる、東北の奥羽脊梁山地での合同集中観測でも衛星テレメータシステムが活躍する
予定です。
今後は、衛星通信システムを用いた地震観測テレメタリングシステムが円滑に運営さ
れ、さまざまな利用の形態を工夫することによって地震予知研究および地震学研究が
より一層進展するように努力していきたいと思っています。