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地震研究所談話会 第832回 (2005年10月)

九州の応力場と火山

青木 陽介(火山噴火予知研究推進センター)・鍵山 恒臣(京大理)

GPS連続観測によって観測される九州地方の地殻変動場は,大まかに,地震活動が低い北部九州,フィリピン海プレートの沈み込みの影響をうけて北部九州に対して西進し東西圧縮場にある北部九州,沖縄トラフの拡大により東進し東西伸長場にある南部九州,の3つのブロックに分けられる.北部?中部九州ブロック境界は,別府湾から西南西に伸び日奈久断層にいたる地帯に定められ,この付近の高い地震活動と調和的である.この境界付近に存在する阿蘇や別府の盆地やカルデラは,右横ずれの動きに若干の南北張力がはたらいて形成されたと考えられる.中部?南部九州ブロック境界は北部?中部境界ほど明瞭ではなく,地震活動も低調である.

九州地方において,盆地は北部?中部九州ブロック境界部と南九州に存在する.北部?中部九州ブロック境界の地域にある盆地は右横ずれの動きに若干の南北張力が働いて形成されたのに対して,南九州の盆地は張力場によって形成されたと考えられる.カルデラは北部?中部九州ブロック境界部と鹿児島地溝に存在する.九州地方における島弧火山は北部と南部ではほぼ等間隔に分布しているが,中部九州は間隔が大きく開いている.これは北部・南部九州が伸張場であるのに対して中部九州が圧縮場になっているためと考えられる.このように,盆地・火山(とりわけカルデラ)の分布は応力場によって支配されていることが示唆される.

図 GPS連続観測から求められた九州地方の地殻変動速度場.PHSとEURはそれぞれフィリピン海プレートとユーラシアプレートを表す.基準点の星印で示す.黒三角は活火山の位置を示す.

図 (左)GPS連続観測より求められた九州地方の体積ひずみ速度.(右)九州地方の最大ずり歪み速度.

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