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地震研究所談話会 第834回 (2005年12月)

富士山稠密地震観測による地震波構造探査

中道治久(名大地震火山防災研究センター),渡辺秀文・大湊隆雄(地震研究所),富士山稠密地震観測グループ

 2000年〜2001年に,富士山北東山腹の深さ15km付近で過去25年の観測期間で最大の低周波地震活動が発生した.そこで,富士山の基礎的な調査の一環として,科学技術振興調整費「富士山の総合研究」(平成13〜15年度)と連携して,火山噴火予知計画「集中総合観測」事業により平成14〜16年度に稠密地震観測を実施した.主要な目的は,深さ20km程度までの地震波構造を明らかにし,富士山のマグマ供給系/低周波地震発生場の特徴/周辺の構造とテクトニクスを解明することと,深部低周波地震の発生メカニズムを解明することであった.関連大学(北大,東北大,東大,名大,九大,京大,鹿児島大)研究者の共同で臨時観測点を設置するとともに,周辺の既設観測点(地震研,防災科技研,気象庁,神奈川県温泉地学研究所)のデータを提供していただいた(図1).

トモグラフィー解析の結果を図3,図4に示す.興味深い成果として以下が挙げられる.

1) フィリピン海プレートの上面が明瞭で,富士山周辺で断裂してはいないようである.

2) 富士山直下の深部低周波地震の発生領域では,Vp, Vs, Vp/Vsがいずれも低い.このことは,深部低周波地震が,マグマではなく,(ガスを含む)水の移動と関連して発生していることを示唆する.

3) 富士山の深部(深さ20-25km)では,Vp, Vsが低く,Vp/Vsが高い.この領域は電磁気学的な探査により得られた低電気比抵抗領域と対応することから,マグマ供給系を示すのかもしれない.

今後は,富士山深部(20km以深)のより詳細な構造解析を行ってマグマ供給系を明らかにするとともに,低周波地震の発生メカニズムを解明する予定である.