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2006年12月号

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一般公開・公開講義より(2006年11月24日)

目次

    今月の話題

・一般公開・公開講義を開催           
第844回地震研究所談話会
・話題一覧
・談話会より
  (都合により、ピックアップはお休みします。)

今月の話題

一般公開・公開講義を実施

「知って、備える」をテーマに、2006年11月24日(金)、一般公開・公開講義を開催しました。平日にもかかわらず、新棟披露を兼ねた1号館の一般公開には約400名、安田講堂で開かれた公開講義には約500名の方々が来場され、最新の地震学・火山学に関する展示や講義を堪能して頂きました。

公開講義の前半は、「知って」に対応したもので、山岡耕春教授が、『映画「日本沈没」に見る地球科学30年の進歩』について講演。この夏公開された「日本沈没」の科学監修を担当した同教授は、日本が沈むという極端なシナリオの下で映画に科学的な正確さを与えるための苦労話を紹介しつつ、最新の地球科学の成果をやさしく語りました。講義の後半は、「備える」に対応したもので、昨今社会的にも関心の高い『建築構造物の耐震性能と耐震補強』について、第一人者である壁谷澤寿海教授が、学問的な背景を踏まえて解説しました。兵庫県三木市にある世界最大の振動台(防災科学技術研究所)を用いた実物大の建物破壊実験の話は、会場の注目を集めました。

  

本郷キャンパス最北端にある地震研究所1号館の一般公開では、建物を支える地下の免震構造の見学、地震研究所が進めるプロジェクトの紹介の他、院生が中心となって企画した実験展示等を行いました。中でも、空気圧で水槽の底を上下させ、津波の押し・引き波を再現できる津波発生装置、浅間山火山観測所の小山悦郎職員が40年間撮り貯めてきた火山の写真展などが人気を集めていました。

  

地震研究所の一般公開・公開講義は、研究成果を広く社会・地域に知って頂くため1992年より毎年開催しており、今年で15回目になります。例年夏に実施していますが、今年は1号館の竣工や旧本館の耐震工事の関係もあり、11月の開催となったものです。夏休みではなかったことから、例年より若い世代の参加者は少なかったのですが、それでも授業が終わって駆けつけた生徒さんもおられ、会場は老若男女でにぎわいました。

なお、一般公開で展示したもののうち、津波発生装置や「日本沈没で田所博士がなめた石」等は常設展示しており、いつでも見ることができます。


第844回地震研究所談話会(2006年11月17日)
話題一覧           ☆は以下に概要を掲載

1.AE measurements in South African Gold Mines

  - Designs for sensor-borehole coupling

    Masao Nakatani (ERI), Yasuo Yabe (Tohoku Univ.),

    Joachim philipp (GMuG mbh, Germany), Sergei Stanchits (GFZ potsdam, Germany),

    南アフリカ金鉱山における半制御地震発生実験国際共同グループ

2.高粘性マグマの破砕基準:Griffith理論に基づく衝撃波管実験の解釈

    小屋口剛博・Bettina Scheu・三谷典子

3.房総半島直下の3次元速度構造:新しいフィリピン海プレートの形状

    萩原弘子・五十嵐俊博・平田直・酒井慎一

☆4.房総半島におけるレシーバ関数解析

    五十嵐俊博・萩原弘子・平田直

房総半島におけるレシーバ関数解析

五十嵐俊博・萩原弘子・平田直

房総半島では「大都市圏地殻構造調査研究」の一環として,地震観測点を30点新設することにより自然地震観測が行われている(図1).本研究ではこれら新設点および地表付近に設置されている定常観測点を使用し,レシーバ関数解析により地殻及び最上部マントルの地震波速度不連続面の推定を行った.

直達P波と変換波の走時差を深さに変換して断面に投影することから得られた結果は,概ね走時トモグラフィから得られた地震波速度構造による振幅変化(図2)と対応していた.これにより,浅部に厚い低速度層があり,正の速度勾配が地殻深部まで続く特徴がレシーバ関数の振幅変化に大きく影響していることが示され,また,沈む込むフィリピン海プレートが明瞭に推定された.

図1.房総半島に新設した地震観測点および周辺の定常観測点

図2.走時トモグラフィから推定されたDD25観測点直下の地震波速度構造およびレシーバ関数

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