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2007年8・9月合併号

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 新潟県中越沖地震の地震波が関東地方に伝わる様子(図右上の観測点における地動速度EW成分)

新潟県中越沖地震(2007年7月16日)は、規模が大きく(M6.8)、かつ震源が比較的浅かったために、関東平野において長周期地震動が強く生成する条件がそろっていました。上図は震源から群馬−関東平野(埼玉−東京−千葉)にかけて地震計記録を並べたものです。防災科研のK-NET加速度波形を速度波形に変換(時間積分)し、最大速度で波形をそろえてあります。震源から放射されたS波が関東平野に入ると、周期の長い表面波(長周期地震動)が強く発生し、そして平野を伝わるにつれて次第に長い波群に発達していく様子がわかります(地震研究所強震動グループHPより)。

   目次

今月の話題 新潟県中越沖地震
一般公開・オープンキャンパスを実施
第851回地震研究所談話会 話題一覧
第16回公開講義資料 (1) 予測が難しい直下型地震(島崎邦彦教授)
(2) 電気と磁気でみる地球内部(歌田久司教授)
お知らせ 人事異動

今月の話題

■ 新潟県中越沖地震

 2007年7月16日10時13分頃、新潟上中越沖でM6.6の地震が発生し、新潟・長野県において最大震度6強の強い揺れを観測しました。地震研究所では、本地震の発生を受け、地震情報および研究速報を地震研究所Webを通じて公開しました。
(→ http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/topics/niigata20070716/

 また、岩崎貴哉地震研究所教授を代表者とする大学・研究機関の研究チームは、「2007年新潟県中越沖地震に関する総合調査」のため、文部科学省科学研究費補助金(特別研究促進費)の交付を受けました。(→ http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/07/07072603.htm

■ 一般公開・オープンキャンパスを実施

 「ERI地球実験室」をテーマに、2007年8月2日、地震研究所は一般公開を実施しました。研究所1号館の一般公開には約850名、弥生講堂での公開講義には320名もの方々が来場され、地球全体が研究フィールドである地震研の活動を巡り教職員・院生と交流しました(公開講義については次のページをご覧ください。)。

 今年は、院生が企画した実験展示が充実していました。断層にみたてた寒天にたまった力を偏光板で見る実験、ゼラチンを利用したマグマの上昇実験等、工夫を凝らした9つの展示が披露されました。また、地下構造を調査する探査車が野外に設置され、デモンストレーションとともに地下構造探査の原理が詳しく紹介されました。

 お茶を片手に気軽な雰囲気で第一線の研究者が最新の成果を語る「地震カフェ」も大人気でした。7階ラウンジに約100名の方が詰めかけ、「揺れる関東平野」、「地震波で見つけたマントル深部への水の道」等の6テーマについて研究者・院生との対話を満喫しました。

 一般公開の前日には高校生向けの東京大学オープンキャンパスがありましたが、地震研でも見学ツアーを設けて公開し、約150名の高校生を受け入れました。一般公開も合わせると、2日間で1,000名もの方が地震研を訪れたことになります。

(左から)パネル展示     うまくいくかな?     学生実験ブース

(左から)初めての地震カフェ     地下構造の探査車     オープンキャンパスの一コマ

第852回地震研究所談話会(2007年7月27日)
話題一覧           

 0-1. 新潟県中越沖地震によるRC構造物(煙突、東電、学校関係)被害調査の概要
     壁谷澤 寿海・金裕錫・壁谷澤 寿一・壁谷澤 寿成、Santiago Pujol(Purdue大学)

 0-2. 新潟県中越沖地震における建物と近傍地表での余震観測
     壁谷澤 寿一・壁谷澤 寿海・金裕錫・壁谷澤 寿成・三宅弘恵・纐纈一起・坂上実

 1.SELENE(かぐや)/LMAG の科学目標と人工衛星搭載型高精度磁力計の地上較正について
     清水久芳、SELENE/LMAGチーム

 2.地震研究所一般公開における学生実験への取り組みについて
     地震研究所学生会、風間卓仁

 3.2007年中越沖地震の余震活動と臨時観測
     酒井慎一・加藤愛太郎・蔵下英司・五十嵐俊博・飯高隆・平田直・
     岩崎貴哉・金沢敏彦

 4.2007年中越沖地震と2004年中越地震の関係について
     加藤愛太郎・酒井慎一・蔵下英司・五十嵐俊博・飯高隆・平田直・
     岩崎貴哉・金沢敏彦

 5.2007年中越沖地震震源域の地質構造とテクトニクス
     佐藤比呂志・加藤直子

 6.新潟県中越沖地震で観測された強震動と長周期地震動
     強震動グループ、古村孝志

 7.2007年新潟県中越沖地震の震源過程(速報)
     引間和人・纐纈一起

 8.1751年越後高田地震、1828年越後三条地震、2003年中越地震、
   および2007年中越沖地震の強震度域の位置関係
     都司嘉宣、行谷祐一(産総研)、小野友也

 9.車載360度カメラによる新潟県中越沖地震の緊急現地調査速報
     天野篤・千葉達朗(アジア航測)、鷹野澄

第16回公開講義(2007年8月2日)
 8月2日午後、一般公開に合わせて第16回目公開講義を開催しました。例年安田講堂が会場ですが、今夏は改修中のため、農学部弥生講堂で行いました。相次ぐ地震を反映してか、講堂(定員300人)は満席となり、講演をビデオ中継した地震研会場でも約100名の方が聴講されました。

 今年は、日本地震学会会長の島崎邦彦教授と、地球電磁気・地球惑星圏学会会長の歌田久司教授が競演。島崎教授は、「予測が難しい直下型地震」と題し、最近相次いで発生した能登半島地震や中越沖地震等の直下型地震に関する研究の現状を紹介しました。直下型地震の3割は発生場所の予測ができないこと、震災に「自分だけは大丈夫」は通用しないこと等の怖い話をやさしい口調で語り、東京でも建物の耐震化が急務であることを訴えました。

 また、歌田教授は、「電気と磁気で見る地球内部」と題し、電磁気のデータから地球のコアやマントルを調べる研究を紹介しました。地震波による方法とは独立な情報が得られるので、地震や火山噴火をもたらす地球内部の活動をより深く理解できます。普段感じることはありませんが、コアが作りだす地磁気は太陽から吹き付ける荷電粒子をさえぎるバリアとなって地球の大気や生命を守っているとのことです。

 以下、公開講義の際に配布した資料を掲載します。

 1.予測が難しい直下型地震 (地球流動破壊部門 島崎邦彦教授)     PDF版(2.6 MB)

 2.電気と磁気でみる地球内部 (海半球観測研究センター 歌田久司教授) PDF版(4.4 MB)

お知らせ

■人事異動

平成19年8月16日付け

【昇任】

 准教授(地震予知研究推進センター)   中谷正生

平成19年9月1日付け

【配置換】

 助教(火山噴火予知研究推進センター)  市原美恵

平成19年9月30日付け

【退職】

 助教(地球計測部門)                      古屋正人 (→北海道大学理学研究院・准教授)



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