図7 ブルカノ式噴火に先行する火道浅部の様子.左上の図はブルカノ式噴火に先行する典型的な傾斜変動.マグマからの脱ガスによる火山ガスが指数関数的に減少しながら火道浅部に供給されている.(1)火道浅部でのマグマの固化や固化したマグマの再配置により火道浅部が閉鎖され,火道内部に火山ガスが蓄積されて様々な強度を持つマグマの中でガスポケットが形成される.この段階で,火口側が隆起する傾斜変動が開始し,圧力の増加と共に次第に傾斜が大きくなる.(2)ガスポケットより下の領域は,不均質なマグマで充填されて多孔質媒質となっており,高圧の火山ガスは次第に下部に広がっていく.その結果,傾斜変動源の中心位置は次第に深くなる.さらに,圧力がある閾値を超えると,ガスポケットを取り囲む領域の強度の弱い部分は塑性変形を起こして狭いガスの通り道が開いたり火道を閉鎖している領域が破砕されたりする.その結果,火山ガスが上方に漏れ出し,火映やわずかな火口側の沈降,小さなマグマ水蒸気爆発などを引き起こす.この火山ガスの漏れは火道浅部ではより早く進行するため,傾斜変動源が噴火に先行して深くなる要因の一つともなる.この様なプロセスが進行している間,最も強度が高いマグマに囲まれたガスポケットでは,周囲に力学的な影響を及ぼすことなく内部の圧力が増加する.(3)この最も強度の高いマグマに囲まれた領域が破砕されることにより,ブルカノ式噴火が引き起こされる.