7.2.2 アウトリーチ活動の実績

(1) 一般公開・公開講義・防災研究フォーラム

地震研究所では,地震や火山の基礎研究,地震火山災害の軽減に関する研究など を直接的に社会に伝達することも重要な責務であると考え,学生や市民を対象に 研究所の一般公開を実施している.また,2009年までは一般公開に合わせて公開 講義も実施してきたが,2010年度以降は公開講義の開催を2月ないし3月の時期に 変更して継続している.2010 年には阪神・淡路大震災から15 年を迎えての公開 講義を実施し,300 名の参加があった.2011年には浅間山での近代火山観測の開 始100周年を記念して『火山学は今』と題した公開講義を行い,250名の参加があっ た.2012年には『東北地方太平洋沖地震—津波と地震活動—』,2013年には『2011 年東北地方太平洋沖地震—得られた知見と課題—』と言うテーマで公開講義を実施 し,多くの学生,市民の方が聴講に訪れた.2009年から2013年までの間の一般公 開,公開講義を合わせた参加者数の推移を表1に示す. 2014年は3月29日に「火山島の誕生」と「統計地震学」の話題で公開講義を予定している.

防災研究フォーラムは,文部科学省科学技術・学術審議会の提言を受けて,地震 研究所と京都大学防災研究所,独立行政法人防災科学技術研究所が自然災害を中 心とした災害軽減・防御に関する共同研究プロジェクトの立案等の研究体制検討 についての基本合意に達して,防災に関わる産官学の研究機関及び事業機関相互 の円滑な情報交換を目的として2003年度に発足した.その後,上記3機関が交代で 代表機関を務めながら,研究者と防災実務担当者との情報交換・意見交換の促進 を目指して,毎年1回,防災フォーラムシンポジウムを開催してきた.2009年度以 降では,「アジア型巨大災害に挑む」(2009年2月12日),「防災科学技術による国 際貢献を考える」(2010年11月25日),「地震・津波災害軽減のために〜東日本 大震災から学ぶ〜」(2011年12月1日),「都市に迫る自然災害を考える」 (2014年2月2日)と4回にわたる講演会を実施してきた.地震研究所は幹事会を構 成する機関として,積極的のその成功に貢献してきた.

(2) 所外からの問い合わせ・講演依頼等への一元的な対応

一般の方からの問い合わせ,学校関係者等からの見学依頼など,所外からの協力 依頼については,地震研究所ホームページの問い合わせ欄を一新し,広報アウト リーチ室が窓口となって問い合わせに対応する体制に改めた.依頼元には,政府 省庁,地方公共団体,防災関係機関,学会,教育委員会,中学・高校などが含ま れる.2009年度から2013年度までの講演・講義等の推移の状況を 表2に纏めてある.2011年度までは,防災情報学を専門 とする教員が広報アウトリーチ室員として,多く出前授業等に対応してきたが, 広報アウトリーチ室員以外の教職員の講師・講演活動等については把握されていな かった.2012年度以降は,社会の関心が高い研究を進めている研究機関としては, なるべく多くの教職員がアウトリーチ活動に参加することが重要であるとの認識 の元で,所外からの講義・授業や講演会・セミナー等の要請に対しては,可能な 範囲で,所内の多くの教職員の協力を得て対応する体制に改めた.また,ホーム ページにアウトリーチ活動報告の欄を設け,所全体としてのアウトリーチ活動の 把握に努めている.

(3) 見学,ラボツアーの実績

中学生・高校生・大学生・研究者及び地方あるいは国の行政機関,学校教員,関 連企業などからの地震研究所の訪問・見学の希望については,極力受け入れてい る.また,海外の研究機関や行政機関からの来訪者も多い.2009年度から2013年 度までの見学,ラボツアーの訪問者数の推移を表3に示す.2011年の東北太平洋沖地震の年を除けば,ここ数年間はコンスタントに500名 を越える見学・訪問者があり,地震研究所の定番のアウトリーチ活動として定着 してきている.

(4) 報道対応及び報道関係者,防災関係者向けの教育

地震研究所における取組みを一般に伝えるためには,ホームページや印刷物の他 に,報道機関からの取材に対する対応も大事な役割を果たしている.2012年度以 降は,報道関係からの取材依頼や問い合わせについても,広報アウトリーチ室が 窓口となって一元的に受けつける体制を整備し,これらの取材依頼や問い合わせ に対して,対応が可能と思われる適切な教員に依頼等を受けて貰う形で依頼に応 えている.この様な体制を取ることで,報道関係からの取材とその対応について, 2012年度以降は広報アウトリーチ室できちんと把握できる状況となっている.一 方,観測計画によっては地元自治体,住民の協力・理解を求める事が必要なもの もあり,それらの実施予定や重要な研究成果などは,発表者や本部広報と緊密な 連絡を取りながら,それぞれの内容に応じてプレスリリースや記者会見等の適切 な手段を選んで報道対q応をしている.

地震研究所の研究活動,研究成果をより的確に社会に伝えるためには,仲介者と なる報道や行政機関,教育関係者などとの十分なコミュニケーションが不可欠で ある.そこで,国内外の地震・火山災害の解説や地震研究所が取組む課題などの 話題提供を行う機会として「地震火山防災関係者との懇談の場」を継続している. 2012年度からは,「ニュースレターPlusで取り上げた話題を報道関係者に分かり 易く話題提供する試みをはじめ,2012年7月20日には今年度設置した「巨大地震津 波災害予測研究センター」の目指すところを,2013年1月18日にはスロー地震と巨 大地震発生の話題を,2013年3月26日には立川断層トレンチ掘削の話題を,2013年 10月18日には火山噴火の噴煙シミュレーションの話題を取り上げた.火山噴煙シ ミュレーションの話題では,火山灰降灰予測の精度向上のために気象庁の職員が 多数参加するなど,防災関係者向けの教育活動として意義のある懇談の場となっ た.

(5) その他

大型タッチパネル 2 台と対話型リッチコンテンツ統合環境を用いて,研究所の概 要や研究成果ハイライトを視覚的に伝える表示システムを作成し,コンテンツの 拡充に努めている.学会に参加する研究者,学生・生徒へのアウトリーチとして, これまで日本地球惑星科学連合大会,日本地震学会,国際学会 (EGU および AGU) に,地震研究所としての展示ブースを出展し,研究所の活動や成果,開発機 器等を紹介してきたが,2012年度は新たに,AOGSの総会にもブースを出展しアジ ア地域への地震研究所の宣伝に努めると同時に,アジア地域からの留学生獲得, 共同研究のシードを探る事を目指した試みも進めている.