目次へ        次へ


5-5.地球と大気の共鳴振動

 地震活動が静穏な期間においても,数100秒の周期帯で地球は揺れ続けている事が分かってきた.我々はこの現象を常時自由振動と呼んでいる.観測された振動は伸び縮み基本モードに対応する.励起振幅はngal程度の大きさであり,数多くの小さな地震ではその大きさの説明がつかない.励起の統計的特徴から大気擾乱が有力な励起源であると考えられている.我々はこの現象をより詳しく調べ,(1)大気音波と固体地球の共鳴を発見すると共に(2)励起振幅の年変動を検出した.

 1991年ピナツボ火山の噴火時に,共鳴周波数に対応する卓越周期周期225s,270sの振動が観測された.このように大気中の現象が大気自由振動を励起すると,大気音波と固体地球の共鳴が起こると予測される(図1).常時自由振動の励起振幅も詳しく解析してみると,共鳴周波における振幅が10〜20%他のモードより大きい事がわかった(図2).励起源が地表付近の大気に存在すると,この超過振幅の大きさを説明できる.

 Kobayashi and Nishida[1998]の大気励起理論に基づくと励起振幅は7月をピークに5%程度年変動するはずである.実際に励起振幅を詳しく解析すると(図2),10%程度年変動が観測された.位相振幅ともに理論と調和的である.

 常時自由振動現象の存在と今回の共鳴現象・年変動の発見は大気と固体地球とを1つの系として捉える事の重要性を物語る.
 
 


図1.大気音波と固体地球の共鳴の概念図.


 

図2.地震静穏期におけるスペクトログラム.

参考文献

[1] Kanamori, H. and J.Mori, Geophys. Res. Lett., 19, 721, 1992.

[2] Kobayashi, N. and K. Nishida, Nature, 395, 357-360, 1998.

[3] Nishida, K. and N. Kobayashi, J. Geophys. Res., 104, 28741, 1999.

[4] Nishida, N., Kobayashi and Y. Fukao, Science, 287, 2244-2246, 2000.



目次へ        次へ