5-1. 日本列島周辺海域における海・陸プレート境界域における研究観測

 

 プレート境界の物質とその物性が沈み込み境界における地震発生を支配している重要な要因であると考えられる.

1996年の三陸沖における海底地震計による観測から地震空白域の下ではプレート境界からのP波反射強度が大きいことを見つけた.走時インバージョンと反射強度の推定から有りそうな物質として高い含水率を持つ層か含水化した鉱物(粘土鉱物や蛇紋石)があげられた.

 2001年三陸沖において地震活動度と反射強度の相関を確実にするために大規模な実験を行った(図1).地震空白域で強いPP反射波を観測した(ハイライト研究参照).この中でPS変換波が明瞭に観測されたことを用い,S波速度構造を推定した.堆積物のVp/Vsは3以上であり,その下では1.7程度であった.図2はその記録断面を示している.特に,PS変換波がプレート境界で反射しているかどうか調べるために観測波形と理論走時比較した結果,SSの反射波を確認できなかった.PP反射強度が大きいにもかかわらずSSの反射強度が低いことはプレート間物質の物性が特異であることを示唆するかもしれない.

伊豆小笠原海溝域の観測では,マントルウエッジからプレート境界を経て蛇紋岩海山へ続く蛇紋岩層の存在が示唆された.蛇紋岩層は低いP波速度と低い摩擦特性が特徴であり,このような性質が非地震性すべりを起こす原因であることが推定された.

図1.三陸沖の測線配置.図2の記録例は南北の走行を持つピンクの線上.プレート境界からのPP反射波についてはハイライト研究参照.

 

図2.測線3上のトランスバース成分の記録.SS反射波に対する理論走時を黄色で示す.

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