5-11. 地殻活動予測シミュレーション

 

地震研究所では,全国の研究者と共同で,有限要素法,境界要素法,個別要素法など様々な数値解析手法を用いて,断層すべりの長期的・短期的挙動,断層すべりによる地殻変動,地震活動変化,強震動などに関する数値シミュレーション研究を行っている.近年の断層運動の力学についての理解の進展と計算機の処理能力の向上により,現実に観測される現象をかなり良く再現するシミュレーションが可能になってきた.断層のすべり過程,断層運動に伴う地表の変形,強震動などの観測事実を説明するだけではなく,物理的なモデルに基づいてこれらを予測し,災害の軽減に資することが研究の最終目標である.研究の一例として,地表面形状が強震動に及ぼす影響に関するシミュレーションの結果を以下に示す.図1は横浜市のある地域の3km×3kmの領域での実際の地表面形状を取り出してきたものである.このモデルの下から周期1秒の地震波を入力したときの地表での最大速度を色で表示してある.震動は山で大きく谷で小さいことがわかる.地震動による被害により重要な高周波の波動では形状の影響はさらに大きくなることから,実際の地震動被害予測には地表面の形状を考慮することが重要であることがわかる.

 

図1.強震動のシミュレーション結果の例.3km×3kmの領域の実際の地表面形状を取り出し,周期1秒の地震波を入力したときの地表での最大速度を色で示す.入力地震波の速度振幅を1とする.

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