5-14. 震源過程と強震動生成メカニズムの解明

 断層面上のアスペリティやバリアの分布は,地震の発生パターンや強震動生成に大きな影響を与える.本研究ではアスペリティの分布を地震波とGPSデータの解析によって調べている. 

 

(A)地震波解析による大地震のアスペリティ分布

 過去100年間の日本周辺海域の大地震について,地震記象(強震計)の収集と解析を行い,アスペリティ分布を調べてきた.その結果,三陸沖(北部)の再来地震について,恒常的なアスペリティ領域の存在が確認されるとともに,複数のアスペリティが同時に動く場合と単独の場合があることなどがわかった. 

 

(B) アスペリティとゆっくりすべりの棲み分け

 日向灘地域のプレート間すべりを調べたところ,1996年の日向灘地震のあとに,非地震性すべり(ゆっくりすべり)が北上し,1997年から98年にかけて「間欠的ゆっくりすべり」が捉えられた.図1aにGPSデータの解析によって得られた断層すべりの30日間ごとのスナップショットを示す.この間欠的なゆっくり滑りが1968年の日向灘地震のアスペリティを取り囲むように起こっているという,注目すべき結果が得られた(図1b).

 

(C) 3次元不均質構造の強震動シミュレーション

 大規模高性能並列計算機を用いて,地下構造の3次元不均質性を考慮した3次元波動伝播・強震動シミュレーションを行った.一例として,1998年5月3日伊豆半島東方沖地震で見られた表面波の伝播シミュレーションを示す.地下構造モデルは既往の研究を参考にし,深さ70kmの最上部マントルまでをモデル化した(図2a).求められた波動伝播のスナップショットを図2bに示す.関東平野の中央では震源から直接到来する表面波に加えて,山間部から回り込む表面波'の二つが到来するため,地震動が長い時間にわたって継続する.

図1 日向灘における1996年6月から900日間の断層すべりのスナップ図.青色がフォワードスリップ,赤がバックスリップを示す.

図2.日向灘地域のゆっくりすべりと大地震のアスペリティの棲み分け.バックスリップの領域(白い部分)が1968年の日向灘地震(M7.5)の震源域と一致するのが注目される.

図3.波動伝播シミュレーションに用いた関東地方の3次元構造.

図4.1998年5月3日伊豆東方沖地震について,波動伝播シミュレーションによって得られたスナップ図.

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