5-16.南アフリカ金鉱山における震源核形成過程の観測

 

地震の発生直前に生起する現象として,最もあり得そうなのは,震源核形成過程である.震源核形成過程は,室内での岩石摩擦実験によりその精細が明らかにされてきた.しかし,自然地震に関して,震源核形成過程を直接捉えた観測データはまだ存在しない.地震の震源核の大きさは,「通常の」観測にかかるほど大きくない可能性も指摘されている.

南アフリカの金鉱山では,深さ2-3kmで行われている採掘による応力集中のため,既存の断層上に応力集中が生じ,大きいものではM3クラスの地震(震源サイズは約100m)が発生する.予想される震源域めがけて掘削したボアホール内に設置した各種のセンサーにより,震源から数mー数十m以内の至近距離でデータを取得することが可能である.採掘の進行に伴い,応力が徐々に高まり,岩盤の諸性質や極微小地震活動が変化し,ついには震源核形成が始まり,ゆっくりしたすべりが発生すると考えられる.この過程を,高精度の地震計,歪計や変位計をはじめとする各種のセンサーでとらえ,震源核形成過程を解明することは大変重要である.

本研究は,立命館大理工学部,京大防災研など全国の研究者の共同研究として進められている.平成13年度までに,Western Deep Levels鉱山の観測網から約100mで発生したM2の地震の前後のb値や応力降下量の変化から,M2の地震発生によるせん断応力の変化を検知することができた.また,地震モーメントに対する波動エネルギーの比が,M2の地震の直前に小さくなった傾向を示す解析結果が得られた.この解析が妥当なものであれば,地震直前に既に応力が低下しており,震源核形成過程に伴う応力変化を検知した可能性がある.

2002年2月には,Bambanani鉱山に一点だけ設置されていた歪計から100m以内で,M3を含む地震群が発生した.大変残念なことに,データ通信のトラブルにより地震直前および地震時は欠測であったが,約一ヶ月後の復旧後にも顕著な余効変動がとらえられた.

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