6-11) 江ノ島津波観測所

内湾の影響を受けない,津波の良い記録を得るという目的で,宮城県女川町の沖合い14キロにうかぶ,三陸地方唯一の湾外有人島である宮城江ノ島でブイ式長波計による定常的津波観測が初めて試みられたのは,昭和16年であった.この観測施設は翌17年の台風で倒壊したが,昭和29年に津波観測が再開され,31年には「地震研III型津波計」による観測が始められた.昭和41年に恒久的な鉄筋の建物を整備して,水温観測のほか風力,気圧など気象観測をも含めた総合的な観測所となった.チリ津波・三陸地方を襲った大小の津波の観測が行われたほか,津波計の改良研究が進められ,昭和50年代の終わりには,「地震研V型津波計」が作り出された.また,空気室を備えた海底放置型の津波計が製作され,核実験のさい生じた小津波の観測等が行われた.昭和60年から,半年ほどの長期観測に耐える海底放置型津波計が製作され,これによる津波観測が試みられるようになった.昭和63年から地震観測が始められている.近年はGeO-TOC観測に供される地震計,電磁気計,深海津波計などのセンサーの試験観測が,当観測所から2kmにわたって海底ケーブルを敷設して行われている.

三陸海岸は,明治29年(1896),昭和8年(1933)の2度の大津波に襲われ,それぞれ約22,000人,約3,000人の死者,行方不明者を出した.平成2年から,津波の第1波の初動をいち早く捕らえ,適切な避難の誘導が行えるように,津波に襲われた歴史経験のある沿岸の市町村役場や消防署に設置して,海面水位の変動を常時監視するシステムの開発を始めた.岩手県田老町,普代村,気仙沼市などと協力して,これら各地に津波早期検知装置が設置され,津波の早期検知技術の開発を進めている(図2).

 

1.海底津波計の投入作業

 

2.普代村設置の超音波式津波常時監視システム.

 


 

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