名前:川勝均
            職名:教授
            所属:海半球観測研究センター
            専門:地震学
            homepage : http://gachon.eri.u-tokyo.ac.jp/~hitosi/
 
 
 
 


研究内容

地球内部構造の地震学的研究
鈕鳳林博士(現カーネギー研究所)とともに,マントル遷移層の不連続面の研究を行っている. 地震観測網の豊富なアレイデータを使い,不連続面からの反射波や変換波の微弱なシグナルを 検出する.我々の研究成果は,660km不連続面の下に新しい不連続面を見いだすという ユニークな成果を上げている(Kawakatsu and Niu, 1994; Niu and Kawakatsu, 1996). 特にインドネシア弧下では,明瞭な変換波を検出し,不連続面の存在は疑いようもない (Niu and Kawakatsu, 1997; Vinnik, Niu and Kawakatsu, 1998). このマントル中部の不連続面の物理的原因と,地球ダイナミクス的な意味付けが現在の 主要な研究テーマである.

広帯域地震計による活動的火山の地震学的研究
火山における地震学的研究は,短周期地震計による観測が中心であり, 周期数秒から数百秒の周波数帯はほとんど調べられてこなかった.最近の研究から, この周期帯を観測することで火山活動について多くの情報が得られることがわかってきた. 我々が阿蘇山で行っている研究は,この分野で世界的にみてももっとも進んだ研究である. 阿蘇火山の地下から,ほとんど常時放射されている周期15秒の波を観測することで, 火口直下の熱水反応を起こしている場所を特定した(Kaneshima, Kawakatsu et al., 1996). この熱水反応帯は,水蒸気爆発が起こるときには,大きな圧力源として膨張・収縮をする ことがわかり,広帯域地震波形をみることで爆発数分前から準備過程がモニターできる ことがわかった.このようなデータは,将来的には,噴火の直前予報情報を出すのに使う ことが出来ると考えられる.1997年夏に行った観測からは,この圧力源は, 80度ほどに傾いたクラック状の火道のようなものであることがわかってきた (Yamamoto, Kawakatsu et al., 1999).マグマが上昇して本格的な火山活動が起こるときに, どのような現象が観測されるか準備を進めている (東京工業大学 金嶋聰,地震研究所 大湊隆雄,京都大学 須藤靖明らとの共同研究).

地震活動場のリアルタイム・モニタリング
現在 ERI AutoCMT solutions として世界の地震学コミュニティに知られている, 地震のメカニズム解の完全自動決システムを構築した(Kawakatsu, 1995). その後日本国内・関東地方の地震についても自動決定解を配布している (伊藤渉,修士論文,1996).このような研究から,10秒より長い周期の長周期波動場を 常時モニターする事で,関東地方程度のスケールの地震活動場をほとんどリアルタイムに 決めることが,現在のテクノロジーで可能なことがわかってきた.長周期の波動場と 調和的な地震活動を常時モニターし,それと調和的な短周期の強震動場をリアルタイムで 予測するというシステムを構築することを提案している(Kawakatsu,1998, 地震研究所彙報) . この提案は,米国カリフォルニア大学バークレー校のRomanowicz教授・Tajima博士らにより 具体化をされつつある.
 
 

主要論文・著書

Kawakatsu, H. and F. Niu, Seismic Evidence for a 920km discontinuity in the mantle, Nature, 371, 301-305, 1994

Kawakatsu, H., Automated near-realtime CMT inversion, Geophys. Res. Lett., 22, 2569-2572 1995.

Kaneshima, S., H. Kawakatsu, H. Matsubayashi, Y. Sudo, T. Tutui, T. Ohminato, H. Ito, K. Uhira, H. Yamasato, J. Oikawa, M. Takeo, T. Iidaka, Mechanism of Phreatic Eruptions at Aso Volcano Inferred from Near-Field Broadband Seismic Observations, Science, 273, 642-645, 1996.

Kawakatsu, H.,, On the realtime monitoring of the long-period wavefield, Bull. Earthquake. Res. inst., 73, 267-274, 1998.

Kawakatsu, H., S. Kaneshima, H. Matsubayashi, T. Ohminato, Y. Sudo, T. Tutui, K. Uhira, H. Yamasato, H. Ito, D. Legrand, Aso-94: Aso seismic observation with broadband instruments, J. Vol. Geothermal Res., 101, 129-154, 2000.