名前:山科 健一郎
            職名:助教授
            所属:地球流動破壊部門
            専門:地震と火山の物理
 
 
 
 
 


研究内容

地震の発生や火山噴火の物理過程を解明するために、現地観測によって有益な データを得ることを図るとともに、それらを含めたデータの解析や統計確率的な 考察を行っている。さらに、そうした視点から地震活動や火山噴火を予測する手法の 開発についての研究を進めている。例えば溶岩を噴出する顕著な噴火が起きた 1991〜95年の雲仙の活動では、山頂の火口の近くに傾斜計を取り付けて変動の経過を 観測したが、1〜2時間の周期で膨らみと縮みを繰り返す特徴ある山体振動を発見する ことができた。これは緩急をもった溶岩供給のリズムを示すものと解釈され、 溶岩の噴出量をリアルタイムで推定する方法が考案された。これにより、 溶岩噴出活動の活発化を事前に予測することができ(1993年)、 マグマ活動の活発さを知る手段として防災計画にも役立てられた。 また、溶岩噴出が始まった1991年には、その直前から著しい山体の変動が進行したが、 観測されたデータを基に、地表に向けて上昇する溶岩の細かい動きが水平方向への 貫入の発生とともに解析された。この他にも雲仙火山においては、 活動の推移に応じて火山学的に興味深い現象が次々に観測されたが、 マグニチュード2〜3級の地震の繰り返しに呼応した鋸歯状の傾斜変動(1993〜94年)、 周期30〜100 時間の特異な山体振動(1994〜95年)など、その実態を解明するために データの検討を進めている。変動観測においては、定点撮影写真を利用する 時間差実体視法と呼ぶ手法を実用化し、雲仙の観測でその有用性を示すことができた。 この手法は、岩手火山など、他のいくつかの地域でも試験的に実施されている。 一方、大きな噴火を1914 年に起こした桜島火山や、1923年関東地震、 1946年南海地震などについて地殻変動データ等を再吟味し、 噴火や地震に至る過程や余効変動の解明を行っている。 また、地震の震源カタログデータに基づく前震の識別、 大地震の前に見られる特徴の抽出、余震活動の推移の予測などの課題も取り上げ、 力学的な意味づけを考慮しながら地震活動を確率的に予測する手法の研究にも取り組んでいる。
 

主要論文・著書

山科健一郎, 桜島火山1914年噴火の噴煙高度−目撃資料の検討, 火山, 44, 2, 71--82, 1999.

Yamashina, K. and H. Shimizu, Crustal deformation in the mid-May 1991 crisis preceding the extrusion of a dacite lava dome at Unzen volcano, Japan, J. Volcanol. Geotherm. Res., 89, 43--55, 1999.

Yamashina, K. and T. Matsushima, Ground temperature change observed at Unzen volcano associated with the 1990-1995 eruption, J. Volcanol. Geotherm. Res., 89, 65--71, 1999.

Yamashina, K., T. Matsushima and S. Ohmi, Volcanic deformation at Unzen, Japan, visualized by a time-differential stereoscopy, J. Volcanol. Geotherm. Res., 89, 73--80, 1999.

Yamashina, K., Experimental prediction of the number of aftershocks of the 1999 Chi-Chi, Taiwan earthquake, Bull. Earthq. Res. Inst., Univ. Tokyo, 75, 79--91, 2000.