名前:山下 輝夫
            職名:教授
            所属:地球計測部門
            専門:理論地震学、震源力学
 
 
 


研究内容

現在の研究活動は、大まかに言って次の二つに分類できる: (1)断層の幾何学的 複雑さとその地震破壊への効果、 (2)断層帯内の流体移動と地震発生の関係。

地震破壊の複雑さは、普通、平面断層上の強度や応力解放量の不均質分布によるものと 考えられている。しかし、当然のことではあるが、地震破壊の複雑さの要因はもっと 多様である。例えば、断層の折れ曲がり、分岐や断層間の相互作用などがあげられよう。 (1)で述べた研究活動の目的は地震破壊のダイナミクスに対する非平面形状の断層の 効果を理解することである。 我々は、任意形状をした2次元的断層の動的成長についての境界積分方程式を求めた。 この定式化を用いて、分岐を伴う断層の動的成長を解析した。 さらに、断層形状になんら制限をおかない自発成長をする断層の解析にも応用することに成功した。

一般に、地下流体は何らかの形で地震の発生に大きく影響をしていると信じられている。 典型的な例として、高圧流体の存在による実効封圧の低下があげられる。 これにより剪断応力があまり高くなくとも比較的容易に破壊が発生しうる。 (2)で述べた研究活動においては、断層すべりに伴う断層帯の水力学的性質の変化を 考慮に入れて、流体移動と地震発生の力学的相互作用についての数値シミュレーションを 実行した。破壊強度が断層上で不均質に分布している場合は、流体移動の影響により、 地震破壊の発生はきわめて複雑化することが、この一連の研究で明らかになった。 しかし、同時に地震マグニチュードの頻度分布については明確な統計的規則性が見つかった。 この規則性はグーテンベルグ・リヒター則と一致し、b 値は1.0 から2.0 の範囲に分布する。 断層すべりに伴う空隙率の増加が大きければ、群発型の地震活動がシミュレートできる ということもわかった。一般に、群発型の地震活動は、特別に大きなイベントを伴わず、 徐々に始まり、徐々に終わるということが知られている。また、 b 値は、 非常に大きいということも知られている。
 
 

主要論文・著書

Yamashita, T., Pore creation due to fault slip in a fluid-permeated fault zone and its effect on seismicity, Pure Appl. Geophys., 155, 1, 625--647, 1999.

Kame, N. and T. Yamashita, A new light on arresting mechanism of dynamic earthquake faulting, Geophys. Res. Lett., 26, 13, 1997--2000, 1999.

Kame, N. and T. Yamashita, Simulation of spontaneous growth of dynamic crack without constraints on the crack tip path, Geophys. J. Int., 139, 2, 345--358, 1999.

Teisseyre, R. and T. Yamashita, Splitting stress motion equation into seismic wave and fault-related fields, 地震2, 47, 2, 135--148, 1999.

Teisseyre, R. and T. Yamashita, Stress and dislocation field evolution and prediction problems of numerically simulated events, Acta Geophys. Pol., 48, 1, 43--56, 2000.

Yamashita, T., Generation of microcracks by dynamic shear rupture and its effects on the rupture growth and elastic wave radiation, Geophys. J. Int., 143, 2, 395--406, 2000.

亀伸樹・山下輝夫, 断層の動的成長の停止機構と放射弾性波, 第4回都市直下地震 災害総合シンポジウム論文集, 71--74, 1999.

山下輝夫(編著), 大地の躍動を見る−新しい地震・火山像, 岩波書店, 2000.