1995年5月28日(現地時間)北サハリン地震の    余震観測と速報的余震震央分布

                                    6月27日

北サハリン地震震源域国際調査団

(北海道大学理学部地震センター ロシア地球物理研究所連合  サハリン海洋地質学地球物理研究所)

北サハリン地震の余震観測の概報をお送りします。 現地処理(ロシアのテレメータの結果に日本側データのS-Pを入れて再計算)したもの をユジノサハリンスクに戻った勝俣氏よりE-mailで送られたものを図に示したものです。 図1、2の直線が地表で確認された地震断層です。

はじめに調査団のいきさつを、後に観測状況を簡単に記す。

この地震にたいして日本側からは、文部省の科学研究費の交付を受けて、10人の調査 団を組織し、先発隊として。6月2日、余震観測のために、笠原と勝俣(北大理学部) がサハリン入りした。 相手先は、ユジノサハリンスクにあるIMGG(Institute of Marine Geology and Geophysics) であり、副所長のIvaschenko氏である。ロシア側も観測に来るべく準備中とのこと。 メンバーは昨年の色丹島沖(北海道東方沖)の際とほとんど同じだそうだ。 6月5日夜3,000kgの器材と、9人のメンバーがユジノサハリンスクに到着。ここで、 3者による(実は、4者で、極東地域の地震観測に責任をもつOMSPもはいる)合議の結果、 表記のような名称で合同観測、合同解析を行うことにした。 翌日、さらに、現地に出向くための交渉(器材および人員の輸送、観測補助の援助: 具体的にはヘリコプターの無料使用、非常事態宣言下の現地げの立ち入りの許可、etc) に費やし、7日早朝出発を可能にした。ユジノサハリンスクからオハまで、アントノブ 24型輸送機で、2時間。そこで、また、交渉。バスとトラックで、震源の北50kmの街、 サボ(図1のSCN, SBS, CNT, SBDで示した点)へ夕方到着。 地震で1部被害のある(壁、天井の目地の剥離など、軽微)中学校を観測基地として 借りる。北緯53度深夜12時まで明るい。その夜から、データマークによる観測を開始、 活動度を見る。強震計の設置も行う。 モスクワからは無線テレメーター8点分(バッテリーを含む)と2名、データ収録・ 自動処理システムと1名、強震計(スイス製、SMACH)3台と2名、地質学者2名、 そして運転手1名とモスクワ地球物理連合の最高責任者(地震)、Strakhov(academician) が交渉の責任者として現地まで来た。Strakhov氏は、70歳くらい、現地の体制が整う のを見届けて、8日午後、オハからモスクワへ帰られた。 8日、日本側は、南の活動域を決めるために、バル(図1:BAL、その後、NSBへ移設) とピルトン(図1:PLT、後に、PLNに移設)に地震計を設置する。サボのデータから 比較的、近くまで震源域が伸びていることを確認する。 9日天候悪く、テレメーターの展開は延期。南のデータの回収と東側の観測点(図1:ENG) の設営を行う。バルのデータによればS-P時間5秒より短いものは見当たらないことから、 南限はここよりは、かなり北であることと、ピルトンのデータにも2秒より短いものは 見当たらず、ここより西北に余震域の端があることを確認できる。しかし、ここでは、 1時間平均40個の余震を観測している。 この日の午後、モスクワチームは、ネフチェゴルスクに強震計を設置し、その先で、 道路を切っている地震断層を確認、右横ずれ3m、道路を3ヶ所で寸断しているとの 確認をしてきていた。以上のことから、モスクワのテレメーター点は、震源域を大きく 囲むように展開し(実際に平坦な地形で、低いピークを探して設置するしかない)、 日本のデータマークによる現地記録の観測点を中に展開することにした。 10日快晴、ヘリコプターによるテレメーター点の設置、最初は、156mピーク(図1:h15) にする。その後、ヘリコプターからの断層調査を行い、総延長30kmを確認する。この日、 日本側は、断層直上(図1:FLT)と余震域西側(図1:WNG)の観測点の設置を行う。 11日、このときまでに回収されたデータをもって、笠原は、帰国のため、オハへでる。 しかし、この日は日曜日、加えて、昨日救急活動の終息宣言が出されており、ユジノ サハリンスクへ戻る便はない。翌日に期待したが、独立記念日でお休み。結局、避難民 と一緒に、ハバロフスクへでて、ユジノサハリンスクへ戻ったのは、13日午前1時で あった。 その後、モスクワのテレメータ点は、図1、OSS、KOM、LESが設置された。勝俣が、 6月25日ユジノサハリンスクに戻り、日本に送ってきた6月20日までに現地処理 された余震データをプロットしたものが、第2図である。観測は、サハリンの協力で、 7月10日ごろまで続けられる予定である。 なお、地震断層および活断層の調査に嶋本・他2名が現地調査中である。