ニュージーランド西岸の地震 |
作成日:
2009.07.15
最終更新日:
2009.07.19 |
2009年7月15日18時22分(日本時間,現地では20時22分),ニュージーランド南島の西岸(南緯 45.750°,東経 166.577°,深さ
12km)でMw7.8(Global CMTによる) の地震が発生しました.
マグニチュードが大きく震源の浅い地震のため,太平洋津波警報センターは津波警戒情報を発表しましたが,1時間10分後には解除されました.
この地震についての速報を報告します.(アウトリーチ推進室)
【更新情報】
【震源過程インバージョン】

(詳細は図をクリックしてください)
Natalia Poiata 氏(博士2年)による
【W-phase波形による震源メカニズム】

横ずれ成分を含む逆断層型のメカニズムであることが分かる.
モーメントマグニチュード(Mw)は7.8.
(詳細は図をクリックしてください)
横田 裕輔 氏(修士2年)による
【水圧計による津波記録】
震源の北西(オーストラリアとニュージーランド)の間にある海底水圧計の記録.
DART Tasman Sea 1
DART (Deep-ocean Assessment and Reporting of Tsunami) とは,NOAAにより運用されている津波の早期検知システムです.
【各地の津波記録】
ニュージーランドやオーストラリアの各地で観測された津波.(ITICより)
場所 |
緯度 |
経度 |
到達時刻(UT) |
最大振幅 |
周期 |
Spring Bay (タスマニア島) |
42.5 S |
147.9 E |
11:45 |
6 cm |
10分 |
Port Kembla (オーストラリア) |
34.5 S |
150.9 E |
12:00 |
14 cm |
12分 |
Jackson Bay (ニュージーランド) |
44.0 S |
169.6 E |
9:56 |
50 cm |
22分 |
DART 55015 (水圧計) |
46.9 S |
160.6 E |
9:50 |
5 cm |
8 分 |
【現地の震度情報】
震度の基準は世界的に統一されているわけではなく,多くの国では改正メルカリ震度(Modified Mercalli Intensity)が使われている.日本の震度階級(気象庁震度階級)では9段階あるのに対して,MM震度では1〜12までの12階級となる.
今回の地震について,ニュージーランドの地震・火山・地滑り・津波などの総合観測網 GeoNet はアンケートに基づいた体感震度をMM震度に基づいて発表している.
GeoNet shaking map for Jul 15 Earthquake
最大でMM震度7が投稿されているが、この地域の計測震度は明らかではない。
【テクトニクス背景】
ニュージーランドはオーストラリアプレートと太平洋プレートとの境界に位置しており,南島付近では,オーストラリアプレートが(太平洋プレートに対して)北東方向へ一年間に35-45mm動いている.
この地域の両プレートの相対運動は複雑で,南島の南西沖のPuysegur Trenchにおいては,オーストラリアプレートの太平洋プレートに対する沈み込み,南島西岸ではAlpine
Faultでの横ずれ断層帯となっている(下右図参照).
今回の地震はAlpine Faultの横ずれ型からPuysegur Trenchでの沈み込み(衝突)型へと変わる Fiordland 地域で起きた地震である.震源メカニズムの暫定解(初報)によると,沈み込みによる逆断層成分が(横ずれ成分より)卓越している.
Fiordland地域での地震活動は活発で,2003年8月にはM7.2の地震があり,地すべりが起きた.1993年8月にはM7.0,1989年5月にはM6.4,1988年にはM6.7の地震が起きている.

左図: ニュージーランドの地震活動(1976〜2009年7月12日までのPDEカタログより作成.AB-CDの交点が今回の地震の震央にあたる.)
右図: ニュージーランド南島付近のテクトニクス(出典: USGSウェブサイトでのPDF資料)
(両図ともクリックで拡大します)
↓ 上左図の震源付近を拡大したもの.クリックで大きい図が表示されます.

【リンク】
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