三宅島情報
                             2000/07/08 深夜

1)三宅島の宿は「すずらん」にお願いした.
  通常の携帯電話が通じないことに留意.宿泊料やレンタカー料金も従来どお
  り.

2)中田,笹井は海上保安庁の航空機で未明に三宅島へ飛ため,気象庁で待機
 中.
                          笹井洋一

               2000/07/09
1)中田,笹井はヘリで2時半三宅島空港に到着(気象庁から別に2名).星
が良く見える晴天で山頂部に噴気などは見えない.

2)「すずらん」で3時から仮眠.M6.1の地震などでよく眠れない.4時30分
「すずらん」へ山頂5ヶ所で噴煙と電話.ここから見えるのは2本で,東側の坪
田よりの噴煙は規模が小さい.中田が神着方面に向かい藤井所長に報告.笹井
は三宅支庁へ行ったが対策本部体制に無く,村役場へ.ここも情報待ちで常駐
する必要は無いと判断.中田は船で三池港に到着した大野希一(日大助手),
長井雅史(D2)と三池付近で降灰の調査.笹井は藤井所長と連絡をとりながら,
坪田まわりで山頂駐車場へ.

3)6:30 笹井.山頂駐車場に直径70−80cmの岩片がアスファルトにめり込
んでいるのを見つける.ここから見える雄山(813mのピーク)の北側が消失して
いるのに気づく.OYM(雄山)プロトン磁力計へ行き,ROM回収.このあたりから
観察して直径500m程度の爆裂火口(?)が出来ていると推定したが,あてずっぽ
う.噴気が出ており,地震も感じたので,無理をせず(びびって)駐車場にもど
り,藤井所長に連絡.頭上をヘリが旋回(NHKの7時のニュースで出た画像).

4)8:30 中田ほか2名が到着して4名で雄山展望台へ向かう.途中で道が消失
して,その先に信じられない光景が広がっていた.(航空機からの中田の画像の
通り.この時噴気は出ていなかった.

5)10時に空港へ.及川が午前便で到着,GPS観測へ.中田,大野はヘリから観
察.笹井,長井が宿にもどり,長井は新たに車を借り,空港へ.

6)中田ら3名は噴出物調査を継続.笹井はプロトン磁力計のデータ回収.16時
に空港で合流.中田,大野は保安庁機で帰京.

7)「すずらん」宿泊は笹井,及川,長井.

                                      2000/07/10
1)朝の船で松島(九大:GPS)が到着.笹井は長井を坪田の上まで送り,空港で
Jacques Zlotnicki を迎える.山頂駐車場でGPS班と出会い,陥没現場へ.昨日よ
り陥没がひろがり,昨日写真を撮った場所は崩れて消失.OYM磁力計のデータ回収.
鍵山に現状を連絡.測候所よりやや地震が増え始めたと連絡があり,14時頃GPS班,
電磁気班ともに村営牧場の阻止線から出る.気象庁との連携はうまく行っている.

2)GPS班は観測とデータ回収,電磁気班もデータ回収.ANK午後便で高橋優二(M2)
到着.長井は鉢巻林道東側の噴出物調査を終えて,徒歩で帰宿.「すずらん」宿泊
は笹井,Zlotnicki,高橋,長井,及川,松島の6名.

                      2000/07/11
1)朝の船で重力班(大久保,古屋)到着.地震研のハイエースも着き,重力班は
これを使用.

2)電磁気班(笹井・Zlotnicki・高橋)地質班(長井):
 9:30 山頂駐車場から陥没孔へ.崩落による陥没孔の拡大さらに進む.鍵山と測候
 所に現状を報告.OYM磁力計には崖が50m以内に迫り,遊歩道の亀裂が開いてそちら
 からは近づけず,藪こぎをして磁力計を撤収.センサーは残すが,ここもあまり永
 くは無いかも.
10:30 山頂から東方向へのSP測定を準備中に強い地震.陥没孔内部で一斉に崩落が起
 こる.危険で南東へのトラバースは無理と判断.カルデラ西壁の遊歩道でSP測
定.
11:00 強い地震で陥没孔内部で一斉に崩落.以後強震が増えて同様の現象が続く.北
 側カルデラ壁の斜面崩壊を目撃.危険と判断して測定を中止.引き返す.駐車場か
 ら自動車道沿いにSP測定を開始.
11:50 あまりにも有感地震が多く,測定を中止.山頂部を去ることにする.駐車場か
 ら遊歩道を最後に偵察.クラックの開口がさらに増えた.さようならOYM!

 これで山頂カルデラ内の全ての重要な観測点(GPS,重力,水準),観測設備(
 GPS連続観測装置,自然電位観測装置OYC,比抵抗連続観測装置MSM,全磁
 力OYM)は消滅した.大変悔しいのは,これら連続観測装置は無傷で,陥没した
 地形の上に確認出来る(多分現在もデータを取り続けている)こと,もっとも大切
 なGPSはバッテリーも死んでいないので,上書きして10日間で全部消える!
  崩落は起っているが,ヘリで陥没内部に下りてデータ回収をするのは十分可能.
ア
 メリカやフランスでは民間会社でさえそのようなヘリを飛ばせる,日本ではそうい
う
 緊急対応は出来ないのか,とZlotnicki.残念ながら今の所できない(ようだが)
と,
 答える.

 この間,携帯電話の使える所で鍵山や測候所と連絡を取って行動する.以後,電磁
気
 班はいくつかの観測点の保守点検,データ回収.地質班(長井)は金曾マールから
空
 港付近までの噴出物調査.

GPS班:設置とデータ回収.松島(ANK午前便),及川(ANK午後便)は帰京の予定で
あ
 ったが,飛行機が視界不良で着陸できず,さらに一晩滞在することに.

重力班:一周都道などの重力測定.地震が収まった15時頃,山頂駐車場で測定し,何
と
 -1.2 mgal! 「精密重力測定で世界新記録」と大久保.本当にモノが無くなったら
し
 い.

3)重力班によると,村営牧場から山頂駐車場に登る道路の途中に,鍵つきのゲート
が
 夕方までに作られた由.大学観測班の立ち入り許可と鍵の入手について,明日支庁
と
 交渉する予定.