三宅島観測情報 2000/08/11 東京に向かうストレチア丸にて 8月9日 電磁気班: 早朝5時の船で,西田泰典(北大教授),佐波瑞恵(北大M1),高橋優志 (地震研M2),浅利晴紀(M1)が来島.朝食後,三宅支庁と警察へ.昨 夜から三池ーシトリ神社の間の通行止めも解除.山頂第3ヘアピンのプロト ンROM交換を兼ねて陥没孔偵察.湿った火山灰がわずかに降ってシャツに 付着するが,小規模崩落に伴う「灰かぐら」らしい.駐車場のトイレは消失 しており(多分7月30日のM6.4に伴う崩落?),道路に崖と平行な亀裂.こ の直線部分の道もいつまで持つか. 1)村営牧場入り口を基点に自然電位測量(北大・地震研4名). 2)鉢巻道路東側の磁気測量点の確認と午後から測量(気象庁・地震研3名). 3)村営牧場畜舎のテレメータ・プロトン(修理完了したもの)の立ち上げ (地震研3名). 民宿「ほまれ」に電磁気班7名が滞在. 8月10日 重力班: 早朝5時の船で,大久保,孫文科,古屋ら3名が来島.測候所に行き,観 測開始.重力変化の世界新記録更新を目論む.(なぜか地震研にダイアルア ップで接続できず,ここまでの情報をメールで送れなかった.)三宅島では 昨夜短時間だがかなりの雨が降った.7月8,9日と7月14,15日の噴火の 前にも大雨が降っている.ただし26日の泥流・土石流を発生させた大雨の時 には,山頂活動は認められていない. 電磁気班:7時30分頃,村役場からの防災放送で「山頂で小噴火」.確認の ため,七島展望台へ行く.山頂にガスがかかり,よく見えないが,8時05分頃 爆発音.しばらくしてまた轟音が続くがこれは雷の音で,火山雷らしい(後 ほど地磁気観測所グループから火山雷を目視した,と聞く.櫻島での経験あ り).とりあえず連絡のついた鍵山に状況報告.後ほど藤井所長,中田,菊 地や重力班と連絡をとりあう.警察で村営牧場付近への通行許可をもらう. 10時から11時30分頃までは,村営牧場や七島展望台から「遠望火山学」.地 震研に目撃情報を入れる.山頂火口の南側から黒煙が勢い良くあがる.その 他3ヶ所からは断続的に白煙. 北大2名は村営牧場から坪田林道方面に自然電位測量.地磁気観測所グル ープは鉢巻林道西側の磁気測量.地震研3名は鉢巻林道の伊豆の上あたりに プロトン磁力計を新設(伊豆見橋:IZM).徒歩で神着上(KMU)のプロトン ROM交換.灰まみれになる. 民宿「ほまれ」に電磁気班7名,重力班3名が滞在.アジア航測の千葉達 朗さんも滞在していて,日大助手として活躍していた83年三宅島噴火や86年 伊豆大島噴火以来の旧交を温める.7月26日の泥流・土石流の分布の様子を 聞く.KMUはもう一度土石流が発生すると消失する可能性があるので, IZMを新設したが,千葉さんのデータでこの推測は正しそう. 8月11日 重力班,電磁気班ともに早朝から観測に出発.早朝の船で到着し た地質班(中田・他4名?)とは「ほまれ」の前ですれ違い.昨日の降灰は 幸いほとんど火口の中の由(中田). 電磁気班:10時過ぎ,第3ヘアピンへ.プロトン磁力計を入れたプラスチ ック箱の上の太陽電池パネルが噴石で一面のひび割れ.しかしお陰で本体は 無事.ここにはほとんど降灰は無い.傾斜計とGPSデータのテレメータ用の大 きな太陽電池パネルは奇跡的に無事だったが,ケーブルが切れていて,早め の修復が必要.先着していた重力班が測定を済ませた後,山頂部を偵察して 戻る.駐車場は完全に消失の由.第3ヘアピンの重力値は2週間でなんと500 マイクロ・ガルの減少という.これだけ変化すると,「いい加減な測り方を しても大体は合ってしまうので,観測の腕が落ちる」と,大久保. 第3ヘアピンを基点に山頂部と山麓方面に向けて自然電位測量.第1ヘア ピンの手前で新鮮な降灰を採取したが,7月14日のものと同じように見える. 第1ヘアピンから駐車場に向かっての最後の直線道路が75m先で消失.陥没 孔の中は静かで噴気も上がっていなかった.山頂部への短い距離の自然電位 測定は早々に済ませて,牧場から下に測定を開始.別行動で臨時観測点の撤 収と3点の全磁力データの回収を済ませる. 三七山の北側と三池付近に小規模な泥流があり,車での通行は困難(だが, 強引に押し渡れば通れる).昨日明け方の雨のせいらしい.金曾マールでの 降灰はほんの数mm.三宅島の人々は噴火より大雨による土石流を心配してい る. 電磁気班5名(笹井,高橋,浅利,大和田,瀧沢)は午後の船で帰京.西 田,佐波(北大)が自然電位測量のため残留.重力班,地質班も「ほまれ」 に滞在.