8月29日(火)調査者:中田,金子,安田,嶋野
28日夕方,横須賀を出港.母船:新日本海事シンカイマル.調査ロボット:はくよう
2000.

(1)噴煙活動の観察
 午前5時半頃から雄山山頂からあがる黒煙を観察.イガヤ沖約2km付近から観察.黒
煙は火口から高さ3km程度まで.水蒸気はさらに3km程度上がる.黒い雲が神着方面に
流され,海上に白い噴煙が500m高さ付近に水平に漂う.カルデラいっぱいからあがる
噴煙柱(あまり高くない)の根元からカルデラを溢れたようにリング状に噴煙が横に
ゆっくり広がった.南西はレストハウス付近まで.北は神着側の鉢巻林道付近まで.
 コックステール状のとげが新たにわきあがる噴煙の頭に先行する.噴煙柱の脇から
突然真下のカルデラ外斜面に落下する黒煙の塊もしばしば見られる.7時半頃まで噴煙
は続いた.その後,火山灰が熱く積もっている南西から西斜面では,水蒸気を主とす
る噴煙が谷筋に沿って何筋も流下.熱泥流かと勘違いしたがどうも一種の表層なだれ
のようである.
 後に書く海底調査の後,神着から赤場暁沖まで船を回して陸を調査するが,降灰の
主軸辺りで木々が倒れた跡や,家屋が燃えた跡は一切認められない.樹木の緑は灰を
かぶっただけである.地を這ったように見えたものは低温の勢いのない灰を含んだ流
れ(広義の火砕流??)であろう.海まで達して海水を沸騰させて水蒸気噴煙を上昇
させた火砕流であるとの見方が流れたようであるが,単に灰を失った噴煙が,寒冷前
線でおこる雲のように,上昇流にのって上がったものと考えられる.

(2)海底火口調査(スコリアコーン,中央部では今も約140℃の湧水)
 潜水調査は4ダイブ行った.4火口(北西からZ,A,B,C火口とする)の全てで噴出物(
合計40kg程度)をサンプリング.1火口で水採取.1火口で湧水の温度測定を行った.
 18日の火山灰が全体を覆っている(数mm程度).ソナーで全ての火口位置を確認し
ながら調査,試料採取した.4火口は全てコーンの形をしており,中央部が低い.コー
ンの周囲と中央部は火山弾(大きな物で50cm程度)とスコリアの積み重なったものか
らなる.火山弾は全て分離しておりくっついてはいない.マニュピレータの力で簡単
に粉々になる.2火口で中央の凹みで湧水を確認.
 はくよう2000のサンプル採取能力はすばらしい.右手にちりとりのおばけ.左手に
大きな籠(約50cm四方で深さ30cm程度)を持ち.30cm径程度の火山弾もすくい取る.
噴出物は無斑晶質のスコリアと火山弾からなる.前回(7月19日)B火口から採取した
玄武岩質安山岩と酷似.4火口の噴出物とも共通しており,全体的に急冷された組織を
持ち泡が小さい.ピローとなるまでのものは見つからなかった.
 火口底の湧水温度はシール式のもので調べたが最高温度140℃になった.この温度は
2ダイブで2箇所で確認(Z火口の中央部).採水場所は異なる(A火口)が,ゆらゆら
湧水の上で行った.