震源域周辺の地質学的背景

[Update 2007.03.26]


震源域周辺では、昭和60・61年に北陸電力が実施した能登半島西方海域の音波探査の結果が、片川ほか(2005)によって公表されています。片川ほか(2005)によって明らかにされている断層の位置と、東京大学地震研究所の震源分布を重ねて示したものが、図1です。この図から明らかなように、片川ほか(2005)がF15およびF14と名付けた断層の走向が、震源断層の走向とほぼ一致し、余震はこの断層の地表トレースの南方に分布します。F15・F14断層は北側低下の断層で、高角度の逆断層です。こうした断層の形状は、余震分布の並びから南傾斜の高角度の断層であることと整合的です。

陸上の地質については、絈野編(1965)などによって、地質図が公表されています。ここでは、北陸土木地質図編纂委員会(1990)をもとにした地質図と余震分布を比較してみます(図2)。海上で記載されているF15・F14の断層の東方延長に、八ヶ川右岸に東北東-西南西方向に伸びる断層が記載されています(図2のFa)。また、南方の丘陵にはジュラ紀の花崗岩が露出しますが、その分布の北縁を限るように、北側低下の東北東-西南西方向の断層が記載されています(図2のFb)。両者ともに活断層ではありませんが、とくに南方の断層Fbは、広域的に花崗岩の分布を規制しており、変位量の大きな地質断層と判断されます。これらの断層は基本的には日本海形成時に形成された正断層と推定されますが、その後の鮮新世以降の短縮変形によって、逆断層として活動した履歴を有するものと推定されます。したがって、基本的には陸上の北側低下の東北東-西南西方向の断層は、南傾斜の高角度の断層形状をもっているものと考えました。また、この断層は日本海形成期の急激な火山噴出活動や堆積物の供給と同時に活動しているため、地質図には表現されにくいものです。

地質構造から推定される震源域周辺の地殻構造の概要は、図3に示しました。ここでは本震が発生したのは、片川ほか(2005)のF15・14の下部延長である可能性が高いのではないかと判断します。それらは東方の陸域に延長され(Fa)、地表では明瞭に認識されていませんが、花崗岩分布域の北縁に分布する断層(Fb)との間に存在する地下の断層に延長する可能性が高いと考えられます。

陸域では、対応する東北東-西南西方向の活断層は知られておらず、地表まで変位させる古地震イベントが乏しかった可能性が高いものと推定されます。また、とくに陸上でこの周辺での地震断層の有無の検討が必要になるものと考えられます。

文献
片川秀基・浜田昌明・吉田 進・廉澤 宏・三橋 明・河野芳輝・衣笠善博,2005, 能登半島西方海域の新第三紀~第四紀地質構造形成,地学雑誌,114,791-810.
絈野義夫編,1965, 能登半島の地質(7万5千分の1多色刷地質図添付),石川県「能登半島学術調査」第一部,1-84 p.


図の説明

図1 震源分布と海底断層  海底の断層は片川ほか(2005).

図2 震源域周辺の地質と地質構造  海底の断層F14・F15の延長には地質断層Faが分布する他、断層Fbなど東北東-西南西方向の断層が分布する.

図3 震源域周辺の地質構造概念図



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