第2回 「東北地方太平洋沖で発生する地震・津波の調査」運営委員会

日時:  平成25年3月13日(月) 13時30分〜17時30分

場所:  東京大学地震研究所 会議室(1号館3階) 

出席者     

委員長   長谷川 昭 東北大学大学院理学研究科名誉教授 

委 員   松澤  暢  東北大学大学院理学研究科教授 

      西澤あずさ 海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室長

      西村 卓也 国土交通省国土地理院地理地殻活動研究センター

地殻変動研究室主任研究官

      土井 恵治 気象庁地震火山部地震予知情報課長

      篠原 雅尚 東京大学地震研究所教授

      末次 大輔 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域プログラム

ディレクター 

      日野 亮太 東北大学大学院理学研究科准教授

      小平 秀一 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域プログラム

ディレクター

      佐藤比呂志 東京大学地震研究所教授

      宮内 崇裕 千葉大学大学院理学研究科教授

      池原 研  産業技術総合研究所副研究部門長

      金松 敏也 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域技術研究副主幹

      宍倉 正展 産業技術総合研究所活断層・地震研究センター研究チーム長

      谷岡勇市郎 北海道大学理学研究院教授

      佐竹 健治 東京大学地震研究所教授

オブザーバー新井 雅史 文部科学省研究開発局地震・防災研究課本部係長

石村 大輔 千葉大学大学院理学研究科特任研究員

石山 達也 東京大学地震研究所助教

室谷 智子 東京大学地震研究所特任研究員

中東 和夫 東京大学地震研究所特任研究員

藤原 敦子 運営委員会事務局

 

議事概要

 長谷川委員長から「短期間で成果を出すのは大変だと思うが、がんばって頂きたい。」との挨拶の後、委員の出欠ならびに配付資料の確認を行った。

 文部科学省研究開発局より、「本事業は当初平成23年度から5カ年計画の予定であったが、平成26年で終了する予定である。これまでに得られている調査観測から成果を出して頂きたい。」との挨拶があった。

 

委員長の下、議事を進行した。

 

議事T 事業実施状況と今後の計画

1

事業の概要

(東京大学地震研究所)

 事業全体の概要と今後の予定が説明された。平成25年度は、これまでの調査観測の解析成果を取りまとめる予定である事が説明された。一部課題では来年度も観測やサンプル処理を継続する事が報告された。

 

2

1-1 東北地方太平洋沖地震の震源域における長期海底地震観測

(東京大学地震研究所)

 2011年東北地方太平洋沖地震の震源域最南端部である茨城・房総沖の領域で実施した海底地震計40台を用いた海底地震観測を平成2411月に終了した事が報告された。回収された地震データを解析した結果、海溝軸周辺でも地震活動が見られる事、相模トラフから沈み込むフィリピン海プレート周辺での地震活動度に時間変化が見られる事が説明された。それに対し、沈み込む太平洋プレート浅部域での地震活動に注目して解析を行ってほしいと言う意見が出された。また、平成24年度観測として、福島沖の海域で海底地震計40台を用いた観測を実施中である事が報告された。

 

1-2 海溝海側を含む東北地方太平洋沖地震震源域周辺域の海底地震観測

(海洋研究開発機構)

 房総半島沖、宮城県沖海溝海側で広帯域海底地震計や短周期型海底地震計を用いて海底自然地震観測を実施中であり、水深が6000mを超える海溝軸周辺では超深海型海底地震計を用いた観測を実施している事が報告された。宮城沖海溝軸付近で得られた地震データを解析した結果、海洋性地殻上面付近や、深さ50km付近で地震が発生している事が説明された。また、今後震源メカニズムも求める予定である事などが説明された。

 

1-3 宮城県沖における海底地震繰り返し観測

(東北大学理学研究科)

 これまで宮城県沖の海域において実施した海底地震観測、海底水圧計観測についての報告が行われた。水圧計データを解析した結果、地震発生直後から宮城沖の領域では海底面の沈降が続いており、この沈降は余効変動と粘弾性緩和の影響であるという事が説明された。水圧計データの解析にはセンサー特有のドリフト効果を考慮する事が重要である事が説明された。

 

2-1 海域構造調査

(海洋研究開発機構)

 今年度実施した相馬沖と実施中の宮城沖の構造調査についての報告が行われた。海況の影響などで一部測線では構造探査実験を実施できなかったが、調査が実施できた測線では良好な記録が得られたことが説明された。今後解析を進めていくことが報告された。

 

2-2 陸域構造調査

(東京大学地震研究所)

 今年度は東北地方において島弧を横断するGPS観測網の構築を行ったことが報告された。また、相馬から米沢にかけての領域で、臨時地震観測点を用いた自然地震観測、反射法探査実験を行ったことが報告された。また、海域で行われた海洋研究開発機構によるエアガン発振も同時に記録したことが報告された。相馬地域で実施された反射法地震探査の結果、双葉断層は浅部では70度、深部では45度傾いた形状であることが説明された。双葉断層の活動について質問が出され、それに対し、双葉断層は複雑な活動履歴を持っていることが説明された。

 

2-3 変動地形学的および地震地質学的活構造調査

(千葉大学)

 平成24年度は三陸海岸において地形判読やボーリング調査などのデータを用いて、垂直変動に関する調査を実施したことが報告された。解析の結果三陸海岸中部では過去1万年間にわたり、南部では過去10万年間にわたり沈降しているという結果が得られたことが説明された。それに対し、他の地質学調査との整合性についての議論などが行われた。

 

3-1 海底の地震性堆積物を用いた地震発生間隔の研究

(産業技術総合研究所)

 海底の地震性堆積物を用いて巨大地震の発生間隔の調査を行っていることが報告された。これまで、21本の柱状資料を採取したことが報告され、特に日本海溝底から採取された資料を用いて分析を行った結果、日本海溝底の堆積速度は非常に速く、地震・津波イベントの記録をよく残していることが説明された。また、地震性堆積物の広がりを調査することで、地震の規模の推定も可能であることが説明された。

 

3-2 海底地すべりと堆積物の強震動による変形の研究

(海洋研究開発機構)

 平成23年度に採取された資料の解析を行っていることが説明された。得られた資料を解析した結果、粒子の配列パターンから海溝陸側斜面では南東方向への海底地すべりが示唆されることが説明された。また、平成24年度に新たな試料採取を行い、平成25度も解析を行っていくことが報告された。それに対し、海溝軸での堆積様式についての議論などが行われた。

 

3-3 沿岸の地質調査に基づく地震・津波発生履歴に関する研究

(産業技術総合研究所)

 平成24年度は下北半島・房総半島沿岸域で津波堆積物調査を行ったことが報告された。得られた資料を解析した結果、下北半島では6層のイベント砂層が確認され、うち2層は津波による砂層である可能性が高く、堆積時期はそれぞれ1500年以降、50005300年前であることが説明された。また、房総半島外房地域で津波堆積物が見つかったことが報告された。下北半島で見つかった1500年以降に堆積したと考えられる津波堆積物と室町の津波イベントとは明確に違うのか、という質問が出され、それに対し、年代測定などの結果から、違うイベントであると考えられるということが説明された。

 

3-4 北海道太平洋沿岸と三陸海岸における津波堆積物調査

(北海道大学)

 平成24年度は特に釧路地域に注目して調査を実施したことが報告された。調査の結果、Ta−bとB−Tmの間に2層の津波堆積物が存在していることが明らかになり、平成23年度までに調査した厚岸、根室などの津波堆積物分析結果と調和的であることが説明された。また、2011年東北沖地震による津波堆積物の経年変化について説明された。平成25年度も調査は継続する予定であることが報告された。

 

3-5 過去の地震の断層モデル構築のための地震・津波シミュレーション

(東京大学地震研究所)

 平成24年度は1938年福島県東方沖地震、1927年房総沖地震について資料・記録の収集を進め、発生メカニズムの検討を行ったことが報告された。1927年房総沖地震の震源域と津波波源域の再検討を行った結果、津波波源域はこれまで言われていた領域より、やや南に広がること、震源はフィリピン海プレート浅部での逆断層地震の可能性があることが説明された。それに対し、フィリピン海プレート浅部での逆断層地震発生可能性の議論などが行われた。

 

4-1 海底変動地形解析

(東京大学地震研究所)

 課題42で取得された2011年東北沖太平洋地震震源域の海底地形データと、既存の反射法探査データの再解析により、震源域の変動地形を検討した結果が報告された。解析の結果、震源域では正断層が5つの正断層群に大別されることが説明された。また、海溝上部斜面基部の変動崖は現在活動的ではない区間があることが説明された。それに対し、地震活動との比較を行ってはどうかという意見などが出された。

 

4-2 海底地形調査

(海洋研究開発機構)

 平成24年度は新たに日本海溝域において潜水調査船などを用いて海底地形調査を実施したことや、既存データのコンパイルを行ったことが報告された。今後さらに解析を進めていくことが説明された。平成25年度は広域地形データ・重磁力データセットの完成を行う予定であることが説明された。

 

総合討論

 委員長より、調査観測研究全体にわたる発言があった。

 

議事U その他

 第1回運営委員会の議事録案が配布され、訂正等がある場合には事務局に連絡するよう説明された。平成24年度の成果報告書の締め切りが3月15日である事が説明された。