最近の成果

ここでは、最近の研究成果をイラストとともに紹介しています。 より詳しい研究成果や報告書、過去の計画の成果などはこちらをご覧下さい
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平成28年度の成果

これらの図は下記の報告書に掲載されているものです。


宇宙測地技術により求めた2016 年熊本地震の断層。
(上図)干渉SAR 解析とGNSS 連続観測により捉えた2016 年熊本地震による地殻変動。干渉模様は人工衛星だいち2号から見た2016 年熊本地震前後の平面的な地殻変動量を示す。また黒矢印はGEONET 観測点で観測された熊本地震前後の水平方向の地殻変動量を表す。M6.5 前震とM7.3 本震の震源を星印で,前震と本震で動いた 断層面をそれぞれ異なる色で示している。(下図)観測記録の解析により明らとなった,2016 年熊本地震の断層形状。

2016年熊本地震の地震活動。
(上段)熊本地震合同地震観測グループによる緊急地震観測の結果,明らかとなったM6.5の前震発生から一週間の地震の分布図。M6.5の前震発生から本震発生前までを緑色,本震発生以降を青色で示す。(下段)地震活動の時間変化。地震波形の相関を用いた方法により,数多くの地震を抽出した(右図)。M6.5の前震発生後の地震活動領域は徐々に移動し,本震発生時にはその震源付近を含む領域まで達していた(左図)。

2016年熊本地震による阿蘇山マグマシステムへの影響評価。
干渉SAR解析により求められた2016年熊本地震の断層群の運動により,草千里下6kmに想定されている阿蘇山マグマ溜まりへの影響を有限要素法により求めた。マグマ溜まりは半径1kmの球形を仮定した。断層に最も近い部分では約3.5MPaの差応力が負荷されていることがわかった。

リアルタイムGNSS解析システム(REGARD)による2016年熊本地震の震源断層モデル準リアルタイム推定。
REGARD(REal-time GEONET Analysis system for Rapid Deformation monitoring)は,全国の電子基準点で観測されたGNSSデータをリアルタイムに解析し,地震に伴う地殻変動を求めて震源断層を自動的に推定するシステムである。国土地理院において平成28年度から試験運用を行っている。 図は2016年熊本地震の本震(M7.3)の際にREGARDで得られた地殻変動と震源断層モデルを示している。下段に示された波形は,REGARDでリアルタイムに得られた電子基準点「阿蘇」及び「長陽」の南北成分変位を示す。上段及び右に並べた5枚の図は,周辺の電子基準点での変動から自動的に推定された震源断層モデルを示している。赤矩形が推定された震源断層面で太線は断層上端位置。青矢印は断層の滑り方向とその滑り量を示す。黒矢印が観測された地殻変動,白矢印がモデル計算値である。

考古資料に文献史料を照合した歴史地震の実像解明。
考古資料に基づく地震痕跡は発生場所が明確であるが,詳細な年代の特定が難しい。一方,文献史料に基づく被害地震は発生年月日が明確であるが,被害発生地点の特定が難しい。そこで,考古資料からわかる地震痕跡の場所と,文献史料からわかる歴史地震の発生年を照合し,地震痕跡と歴史地震を組み合わせた被害実態から,歴史地震の実像解明を目指した。

海岸段丘の年代に基づく元禄型関東地震の履歴の再評価。
(a) 房総半島南部千倉低地における完新世海岸段丘の離水年代の再検討による元禄型関東地震の履歴の再評価。(b)堆積性海岸段丘の模式図と稠密ボーリング調査のイメージ。(c)千倉低地における海岸段丘の古海岸線の位置及びその推定離水年代の従来値と再評価された値。

2011年東北地方太平洋沖地震後の地殻変動。
海域の太い矢印で,海底地殻変動観測による変位速度を示す。陸域の細い矢印は陸上のGNSS観測によるもの。2011年東北地方太平洋沖地震時に大きな滑りが観測された宮城県沖から岩手県沖南部においては,粘弾性緩和変形による西向きの水平変位が卓越するが,福島県沖から茨城県沖では,プレート境界面上での余効すべりに起因すると考えられる顕著な東向きの変位が観測されている。

GPS-音響結合方式による海底地殻変動観測によって得られた海底の変動速度から推定された南海トラフ沿いプレート境界のすべり欠損速度分布。
すべり欠損速度の大小はプレート間の固着の強弱を反映していると考えられることから南海トラフ想定震源域内において固着分布に不均質があることが示された。

熱対流モデルを用いた2011年東北地方太平洋沖地震の余効変動の解析。
東北地方の沈み込み帯熱対流モデルに基づく2011年東北地方太平洋沖地震の余効変動のモデル計算と観測値との比較。ウェッジマントルの熱対流モデルから相対粘性率を推定し基準粘性率を与え,沈み込む海洋マントルの粘性構造や蛇紋岩低粘性帯を考慮することで,観測された余効変動をよく再現できた。

岩石の溶解と析出による透水―不透水境界の再現実験。
岩石流体相互作用による透水―不透水層境界の生成実験。実験結果の深さは、実際に相当する深さに換算して与えている。葛根田地区の地下温度構造を想定すると,深さ2km程度の350℃付近では超臨界水となりシリカ(二酸化ケイ素)溶融度が上がるため流体貯留スポットが形成されるが,400℃付近になると溶解度の低下によりシリカの急激な沈殿が生じ不透水境界が形成されることが実験的に明らかにされた。

巨大地震に先行する電離層の電子数密度変化。
2015年にチリ沖で発生したイヤペル地震(Mw8.3)発生直前の電離層の電子数密度異常の空間分布。多数のGNSS衛星と観測点から3次元分布が推定され,震源域近くの低高度に正の異常が,高高度に負の異常が生じていることがわかった。

衛星赤外画像による活火山観測の高度化及び自動化。
衛星を用いた広域観測により,詳細が知られていなかった,インドネシア・ラウン火山の2015年6~8月の噴火の推移を明らかにした。ひまわり8号による超高頻度赤外画像(AHI)によって,熱異常変化を捉え,複数の衛星による高分解能画像から噴火活動状態や溶岩の分布状況を推定した。さらに,噴火前の地形データとの比較から溶岩の堆積状況と噴出率の変化を求めた。平成28年度には,熱異常観測を自動化し,東アジア~西太平洋域の火山のリアルタイム観測を行っている。

避難意向調査を踏まえた避難シミュレーション-大量降灰地域の設定。
最近100年間,我が国において発生していない大規模噴火では,避難の途中において大量の降灰があれば,避難を続けられなくなる可能性がある。事前分析として,火山灰の堆積厚が30㎝以上となる地域に住む80万人の住民全員が避難する時間の予測シミュレーションを行い,50時間となる結果を得た。次に避難意向のアンケート調査を行い,その結果と風向を反映したシミュレーションを行ったところ,避難する住民の数と避難時間は大幅に減少することが確かめられた。

南海トラフ巨大地震による高知県での地震被害リスク。
南海トラフ地震が発生した際の高知県における人的被害について,震源断層モデル,地震動予測式,地盤増幅特性モデル,構造物被害予測式,建物損失モデルの不確実性を考慮して試算した。ここで人的被害とは,木造2階建て建物の被害程度に応じて推定される棟ごとの死亡者数の割合(棟死亡率)である。計算された棟死亡率は各モデルの不確実性によってばらつきを有した量になるが,その平均値は高知平野で特に大きく,室戸岬と足摺岬及び高知平野と室戸岬の間の沿岸部で大きかった。これは,震源からの距離及び堆積層での地盤増幅により地震動が大きく推定されたことによる。また,棟死亡率のばらつき(予測の幅)も同じ地域で大きくなると推定された。

不均質減衰構造の導入による地震動即時予測の精度向上。
(上段)九州地方の地下における地震波の減衰と散乱の構造推定を行った。活火山周辺に加え,一部の活断層周辺においても局所的に散乱及び減衰が大きいことが明らかとなった。(中段)震源とマグニチュードの推定を介さず,リアルタイムの揺れの実況値から直接揺れの伝播を予測する方法に,不均質減衰構造(上段)を導入し,2016年熊本地震の本震に適用した。震度実況から10秒後の震度を予測し,実際の10秒後震度と比較した。(下段)2016年熊本地震本震へ地震動即時予測を適用した際の震度の予測残差。均質な減衰構造を仮定した場合に比べ,不均質な減衰構造を導入した場合は,予測残差が10%程度減少した。

日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の整備。
6海域に分けてS-netを整備し,試験運用を開始した。S-netによる水圧計・地震計データは海溝軸外側を除き気象庁への配信が開始されている。津波高・津波浸水域等の即時予測手法の開発等の研究への活用が期待されている。2016年11月22日福島県沖地震発生時のS-net観測点における速度型地震計上下動成分の波形(左図)と水圧計の波形(右図)。地震波形は各波形の最大値,水圧波形は共通の値で振幅を規格化している。水圧波形は,潮汐の影響を除去し,50~3000秒の帯域のバンドパスフィルターをかけている。