最近の成果

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令和4年度の成果

これらの図は下記の報告書に掲載されているものです。


【能登半島の地震活動】
能登半島の北東端部の地震活動について、震源分布を調べると、2023年M6.5の地震前に浅部への移動がみられた。一連の地震活動の発生には地殻内流体の上昇が関与していた可能性が示唆される。(a) 解析領域。(b) 震央分布と 2023年M6.5地震の地震時すべり分布(緑のコンター。単位は m)。丸の大きさは断層のサイズに相当する。M6.5地震の震源を含む面構造内 (dの破線から1 km以内)で発生した地震の発生順をカラースケールで表している。 (c) 地震の発生時と震源の深さとの関係。M6.5地震の震源を含む面構造内で発生した地震のみを示す。(d) 震源の断面図。測線の位置と範囲は、それぞれ (b) の実線と点線により示される。紫の線でM6.5地震の主破壊域 (すべり量≥0.12 mの範囲)を表す(Yoshida et al., 2023をもとに作成)。

【史料の整理による南海トラフ巨大歴史地震像の解明】
史料からみえる宝永地震、安政東海地震の違いを示す。史料データはeコミマップ上で整理しており、史料の存在地点を地図上のマーカー(右図の沿岸地域にある赤色や桃色などのバルーン)で示し、これらのマーカーをクリックすると史料の情報が表示される。この比較により、例えば宝永地震(左)と安政東海地震(右)による津波到来までの時間は同じ地域でも異なっており、2つの地震が異なる震源域で発生したことが、史料からも明示された。

【海溝・トラフ軸近傍のプレート境界固着状態の推定】
継続的な海底地殻変動の観測により明らかとなったプレート境界の固着状況。(左図)アムールプレートに対する各観測点の年間移動量を、方向とともに赤矢印で示す。南海トラフより外側(南東側)では、これまで知られているプレート相対運動と同じであるが、内側(北西側)ではその約6割程度の移動が観測された。(右図)千島海溝根室沖に設置された観測点のオホーツクプレートに対する年間移動量を赤矢印で示す。海溝より内側(北西側)でプレート収束速度と同程度の年間約7 cmの移動が観測された。これらの結果は、いずれの領域でもプレート境界浅部ではプレートが固着しており、この固着域の周りではひずみが蓄積していることを示す(右下図参照)。

【1662年日向灘地震の規模推定】
浅部スロー地震発生域やプレート境界位置などの最新の知見をもとに新たな断層モデルを構築し、1662年日向灘地震がM8級の巨大地震であった可能性を科学的に初めて示した。左図の①~③は本研究で構築した断層モデルで、従来の推定より浅部(断層③)でもすべりがあった可能性を示した。赤星は1923年以降のM7級プレート境界地震の震央、灰色領域は主なプレート境界地震の震源域、赤丸は浅部低周波微動の震央、紫破線はプレート境界位置の等深線をそれぞれ示す。右上図は津波浸水シミュレーションから断層モデルを評価した結果。①~③の3断層を用いて計算された津波高は、本研究で新たに津波堆積物が発見された地点(日南)の浸水を説明する。右下図は深さ方向の断面図で示す断層の位置とすべり量。太い灰色線はプレート境界、細い茶色線は海底地形を示す。本成果は地震調査研究推進本部が2022年3月に発表した「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動長期評価(第二版)」に反映されている (Ioki et al., 2022に加筆修正)。

【水蒸気噴火の準備過程を捉えるための火山熱水系構造モデル】
草津白根山の湯釜火口北側の噴気について、3He/40Ar 比(40Arはマグマ由来の40Arを意味する)に基づきマグマ発泡度の変化が火山活動活発化と関係していること、さらにマグマの発泡で説明できることを示した。発泡度変化のタイミングは浅部熱水だまりの膨張・収縮とよく一致しており、同火山の活動の活発化を駆動するマグマ~浅部活動の物質学的な繋がりが確認できた。草津白根山のような熱水が卓越している火山の活動活発化にマグマ(おそらく熱水系より深部)の寄与を示唆した意義もある。希ガスなので複雑な反応を考える必要がなく、今後、火山活動モニタリングの指標の一つとして活用が期待できる。

【プレート境界面上の滑りの時空間変化の把握】
長期的SSEの時間発展。(左図)2018年から2022年の間に南海トラフ沿いの非定常地殻変動から推定したプレート境界での累積のすべり量分布(カラースケール)。青い矢印は各地点のすべりの方向と大きさを、赤枠は右図のグラフそれぞれの範囲を示す。(右図)左図の赤い領域ごとの累積モーメントの時間変化。右側の縦軸は、地震モーメントで示した値である。四国中部の縦線は短期的SSEの発生時期を示す。四国中部、豊後水道で2019年始めに長期的SSEが発生したことがわかる。また、日向灘南部では長期的SSEが2020年半ばから2021年半ばにかけて発生したこと、種子島沖では2019年種子島沖地震(M6.4)[黒点線]の余効すべり後に短期的SSEが発生したことがわかった。なお四国中部では、2019年以降、長期的SSEの発生期間中に短期的SSEが発生し、両者が共存していると考えられる。

【地震動と火災のマルチハザードリスク評価】
(左)経験的出火予測式による予測地震動強さに対応した出火確率と消防効果を含む建物棟間火災延焼メカニズムを考慮した物理に基づくモデルによる火災延焼シミュレーション結果。灰色、赤、黒の立体物は、それぞれ燃えていない建物、燃えている建物、焼けた建物を表す。(右)青線は地震動だけ、赤色は地震火災だけ、緑線は地震動と地震火災を考慮したときの建物損失額の50年超過確率。総資産は、対象地域全体での建物構造別の延床面積から算定される建物価値の合計(Nishino, 2023に加筆修正)。

【南海トラフにおける後発地震の発生確率評価】
M8クラス以上(半割れ)およびM7クラス(一部割れ)の地震発生後に後発する地震の発生確率を、南海トラフにおける地震発生履歴を考慮し、評価を行った。例えば、M8クラス以上の地震発生から1週間以内に、M8以上の後発地震が発生する確率は約2%~77%、平時の約100~3,600倍と算出される(Fukushima et al., 2023に加筆)。

【生活再建支援のための住家被害認定調査の効率化】
住家被害認定調査や罹災証明発行業務において「行政職員が学ぶべき知識」の体系化と行政職員向けの効果的な教育プログラムの構築を進めてきた。2022年3月の福島県沖地震では、被災地の新地町に対し、本研修を受講した応援体制「チームにいがた」が派遣された。共通理解の下で効率的な調査が実施され、3週間弱で約5,500棟の調査が完了した。図は1年前の災害時の新地町職員による調査と本事例の調査件数の日次推移の比較である。調査の開始も早く、日別調査件数も多く、現場において効率的に調査ができたことが確認された。

【高速な断層推定】
高速な断層推定(REGARD)による断層推定結果の例。2021年3月20日に発生した宮城沖地震のときの地殻変動から断層パラメータを推定したもの。左は断層パラメータの事後確率分布、右は推定された矩形断層モデルの位置とその不確実性の広がりを示す。左の青線は中央値で、右上にその数値を示す。東北大学で開発された推定パラメータの不確実性を評価できるプログラムを国土地理院に技術移転した。従来法からの置き換えに向け、試験運用中である。

【研究計画で観測や開発したソフトウェア等のメタ情報の公開】
本年度から作成・公開を始めた調査・観測等一覧(地図表示、左上)および開発したソフトウェア等一覧(右下)。各課題の成果をとりまとめ作成したもの。各課題の報告書へのリンクも貼られており、そこから成果の詳細も確認できる。地震・火山噴火予知研究協議会の研究成果共有システムの中で公開している。