1999.7.14
No.0109
(1)実施機関名
東京大学地震研究所
(2)新建議の項目
1(3) 直前過程における地殻活動
(a) 課題名
下記三課題について研究する.
(I)「せん断破壊過程を支配する構成法則の地震発生場環境要因依存性の定量的評価と破壊核のスケーリング則の確立」
(II)「すべり破壊核形成過程のモニタリング手法の開発」
(III)「間隙水流動と破壊核の相互作用に着目した,破壊に伴う電磁気シグナル発生のメカニズムの解明」
(b) 関連する新建議の項目
(I) 1.(3) ウ (1.(2) ウ,1.(4) ア,3.(1) ア も関連する)
(II) 1.(3) イ (1.(3) ウ も関連する)
(III) 1.(3) ウ (1.(2) エ,1.(3) ア も関連する)
(c) 平成11年度の到達目標
(I)構成法則の地震発生場環境要因依存性の定量的評価のための実験の継続と,破壊核を含むスケール依存性物理量のスケーリング則の確立..
(II)大型試料のすべり実験による巨視的すべりに至る過程における微視的接触状態の変化の検出手法開発と,安定すべりから不安定すべりに遷移する非可逆過程検出手法の開発.
(III)室内実験による常温における破壊に伴う電磁気シグナル発生過程の解明.
(d) 平成11年度実施計画の概要
(I)
高圧高温岩石破壊装置により構成法則の地震発生場環境要因である温度,圧力,間隙水,歪速度,破損面幾何学的不均一度依存性の定量的評価のための実験を継続すると共に,構成法則に基づき実験室内データ,地震破壊データを統合する破壊核を含むスケール依存性物理量のスケーリング則を確立する.科学技術庁「地球シミュレータ」プロジェクトに参加し,振興調整費で消耗品等の一部をまかなっているが,高圧高温岩石破壊装置の維持経費など主たる経費は特殊装置維持費(730万円)による.
(II)能動的に高周波数弾性波を照射する大型試料のすべり実験により,巨視的すべりに至る過程における微視的接触状態の変化を検出する手法を開発する.
同時に,破壊核形成過程で誘起されるAEの観測データから,安定すべりから不安定すべりに遷移する非可逆過程を検出する手法を開発する.横浜市立大学及び一部ロンドン大学との共同研究.経費は,主として地震予知研究経費及び校費に依存する.ロンドン大学研究者の旅費及び滞在費等は外国人研究員(COE)経費による.
(III)破壊核と流体との相互作用を明らかにするとともに,相互作用に付随して生ずる電磁気現象発生のメカニズムを解明するために,室内実験を行う.流動電流(電位)係数,透水率,ダイラタンシーなどが,岩石の種類,封圧・間隙圧などの環境条件,岩石変形過程にどのように依存するか明らかにし,測定された電磁気信号から破壊過程がどこまで進行しているかなどの情報を引き出せるような定量的モデルを構築する.理化学研究所の地震国際フロンティア研究プログラムに参加して進められている.
(e) 全体計画のうちの平成11年度の計画の位置づけ
(I)高圧高温岩石破壊実験装置による構成法則の地震発生場環境要因依存性評価の実験的研究は,特に歪速度依存性の評価に関しては1回の実験に長時間を要するので,平成12年度以降も引き続いて継続する必要のある長期的プロジェクトである.スケーリング則の確立に関する研究は,予想外に進展し11〜12年度内に完了する見込み.
(II)過去における基礎的研究の蓄積があるとはいえ,断層近傍における応力(又は歪)やすべり変位をモニターする以外の手法で破壊核を検出するのは,挑戦的な試みといえる.電磁気的手法の開発は(III)でなされる.ここでは弾性波を能動的に照射したり,誘起されるAEを利用する力学的手法を開発する.
予備的研究により可能性が示されてはいるが,全体計画は今年度の成果に大きく依存すると考えられる.見込みが立てば,発展が見込める.
(III)間隙水流動による電磁気シグナル発生過程について,11年度は常温でのメカニズムを明らかにし,12年度以後高温実験を始め,実際の地震発生場の条件下にも適用可能な定量的モデルに発展させていく.どのような電磁気シグナルが観測されるかを明らかにするためにはシグナル伝播を考慮した数値シミュレーションを行う必要があるが,本研究で構築するモデルは,破壊核の成長に伴って発生する震源域での電流源を与える基礎となる.
(f)この課題の実施担当連絡者
大中康譽 e-mail: ohnaka-m@eri.u-tokyo.ac.jp