1999.8.17
No.0113
(1) 実施機関名
東京大学地震研究所
(2)新建議の項目
3 (2) 観測技術
(a) 課題名
(I)海底地殻変動観測手法の開発 (3(2)イ)
(II)精密制御震源の開発 (3(2)ウ)
(b) 関連する新建議の他の項目
(I):1(1)ア・イ,1(2)ア,1(3)イ,2(2)ア
(II):1(2)ウ・エ,1(3)イ
(c) 平成11年度の到達目標
(I)海底地殻変動観測手法の開発
観測計器によって到達目標は異なっている.
・海底設置型傾斜計:試験観測による精度確認
・海底重力・圧力計:音響切り離し装置の改良による回収作業の信頼性の確保
・海底測位・測距:送信出力のアップとデータ処理方法の改良による精度の向上
・レーザー干渉計を用いたボアホール海底傾斜計:省電力レーザー光源の開発
・海底孔内設置型体積歪計:試験観測の継続と三陸沖海底孔に設置
・海底観測通信ブイ:3ヶ月ほどのの試験運用
(II)精密制御震源の開発
全体系の開発の継続と性能試験を行う.
(d) 平成11年度実施計画の概要
(I)海底地殻変動観測手法の開発
・海底設置型傾斜計: 相模湾初島沖の水深1,400mの海底に設置して3ヶ月の試験観測を実施
・海底重力・圧力計: 海底での連続観測に向けて,音響切り離し装置の2重化による回収作業の信頼性を向上させる.東京大学海洋研究所,千葉大学との共同研究.
・海底測位・測距: 送信出力のアップするとともに,データ処理方法を改良し,精度を向上させる.東京大学海洋研究所との共同研究.
・レーザー干渉計を用いたボアホール海底傾斜計: 半導体レーザーをベースとした高精度レーザー光源の開発をおこなう.従来,半導体レーザーは高精度化が難しいとされていたが,波長純度のすぐれた半導体レーザーが入手可能となり,さらにわれわれが開発した波長安定化技術と組み合わせて,低消費電力の波長安定化光源を製作する.
・海底孔内設置型体積歪計: 鋸山海底地殻変動試験観測井における観測を継続するとともに,8月に三陸沖にボアホールを掘削し,広帯域地震計等とともに体積歪計を設置し,観測を開始する.東京大学海洋研究所,海洋科学技術センターとの共同研究
・海底観測通信ブイ: 伊豆諸島の新島近くの海域に設置し,3ヶ月ほどの試験運用を行う.東北大学理学部との共同研究.
(II)精密制御震源の開発
1. ハードウェア
(1) やよい1号機の実証試験の継続
試験の目的=内部クロックに介入して,時間精度だけでなく,波形精度も高めるため。摩擦熱の詳細分析(躯体の応力解析を含む)
(2) やよい2号機(性能拡大モデル)の製作と試験運転
震源の製作震研構内の地中に定着装置(鋼製アンカーフレーム付き鉄筋コンクリート製)を建設しやよい2号を設置する。
試験項目=大出力(約100KN)試験,1次モーメント連続可変装置の開発・試験,セラミックスベアリングの導入と試験
(3)小型やよい3号機の試作
磁気支承のプロトモデル
(4)データの衛星通信試験
震研構内同士で発受信を行なうもの。まずセンサーからのデータ回収試験を行い,次にソースの遠隔制御試験を行なう。
2. 関連するソフトウェア開発および
(1)岩石破壊実験
震研の岩石破壊装置により強い応力局所集中を実現し,これにコヒーレント波を照射して,散乱特性への影響を観察する。これにより比較的単純な散乱モデルを構築し,アクロスのインバージョンに結びつける。
(2)解析ソフトの開発
・水平成層弾性体の波動公式を改良して,計算精度を向上する。
・調和波動による散乱のインバージョン理論の開発
・カルマンフィルターを利用した,散乱パラメータの動推定理論の開発
・石井式歪み計データによる補強アルゴリズムの開発
・準静すべりを許す有限要素解析とカルマンフィルターにより,将来,石井式ひずみ計が地中設置された場合の情報補強ソフトの準備開発
本課題の参加人数は(I)と(II)合わせて約20名
予算規模は事業費が3,816千円(旅費等を含む)
三陸沖のボアホール掘削はODP計画による.
(e) 全体計画のうちの平成11年度の計画の位置づけ.
(I)海底地殻変動観測手法の開発
・海底設置型傾斜計:本格運用前の,機器の精度および問題点の把握
・海底重力・圧力計:平成12年度に三陸沖日本海溝の陸側で海底観測を行うことを計画しているので,平成11年度はその準備を行う.
・海底測位・測距:平成12年度に三陸沖日本海溝の陸側で海底観測を行うことを計画しているので,平成11年度はその準備を行う.
・レーザー干渉計を用いたボアホール海底傾斜計:これまでの鋸山観測所における2年以上の水管傾斜計との比較観測により,本方式のレーザー傾斜計は十分な精度・安定度が得られることが示された.現在は実用性の向上として,レーザー光源の省電力化およびDSPによるデータ圧縮機能の追加が主な開発項目となっている.本年度は前者の部分を事業費を用いて重点的に行う.
海底孔内設置型体積歪計:鋸山海底地殻変動試験観測井における試験観測を継続しながら,データの解析を進める.三陸沖の観測は8月に機器設置し,9月から観測に入る.1年に一回程度のデータ回収を予定しているので,データ解析は平成12年度以降となる.
・海底観測通信ブイ: 昨年度までに通信に関する試験は終了した.平成12年度以降の本格運用に向けて平成11年度は3ヶ月ほどの試験運用を通じて係留システムの信頼性の確認を行い,必要があれば改良する.
(II)精密制御震源の開発
全体系の開発段階
金沢敏彦
東京大学地震研究所地震地殻変動観測センター
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