1999.8.5
No.0207
(1)実施機関名
京都大学 防災研究所
(2)新建議の項目
1.(2)準備過程における地殻活動
(a) 課題名
断層の回復過程の研究-野島断層および周辺活断層の深部構造の研究
(安藤)
H11年度予算規模:校費1500万円、職員旅費80万円、員等旅費380万円
H11年度計画:孔内地震観測・地殻変動・地下水・電磁気観測
定常的観測の維持管理、破砕帯岩石学の研究、アクロスのやや長期的実験
第2回注水試験の実施(科研費と連携)
到達目標:断層破砕帯の回復過程の追跡
5カ年計画の位置づけ:地震後10年間の断層破砕帯の回復過程の確立
(地震予知研究の中でも、共同研究がうまく機能した好例であると安藤は感じています)
(概算要求書)
断層の回復過程の研究
ー野島断層および周辺活断層の深部構造の研究
a. 要求の理由
(1)地震の時に壊れた断層破砕帯は、時間と共に元の状態に回復する。そして再び応力を蓄積し、次の地震への準備過程に入る。このような過程を地震の一生とすると、この生涯を追うことは、地震予知へつなぐ重要な鍵となる。
(2)ただし、一つの研究課題ですべての時間系列を追うのは困難である。ここでは断層の回復過程に焦点を当てる。兵庫県南部地震の直後に野島断層へのボーリング掘削が行われ、平成8年度に完成した。その後、種々の孔内検層や実験が行われ、観測がすすめらてきた。
(3)野島断層に向けて、500m、800m、1800mの3本のボーリング孔が掘削された。コアの採取、孔内計測、孔内計測機器の埋設、などが行われた。現在は長期的な観測が継続されている。この中では地震活動の推移に止まらず、破砕帯の物性の変化を追跡するために継続的に観測する必要がある。
(4)孔内断層のくい違い量、断層破砕帯および周辺岩石の構造、注水試験、余震観測、人工震源による断層の時間的変化の追跡などの項目が含まれている。これらの観測は継続的に進め、断層破砕帯の時間的な推移が継続的に観測する必要がある。
(5)人工震動源(アクロス)も孔の近くに設置され、微弱な信号を地下に連続的に送信することにより、断層周辺を通り抜け地震波を孔内地震計や地表に展開された地震計で捉え、地下での断層周辺での物性の時間的変化を追跡す必要がある。
(6)野島断層の変化はS波偏向異方性は破砕帯内と外では異なっていることがわかった。この違いは、破砕帯の時間変化を捉える鍵となるとも考えられる。地震波形を用いた時間的変化の課題も積極的に取り入れる必要がある。
(7)ボーリングコアは、ある深さ間隔でとびとびに採取されるスポットコアと連続的に採取されるオールコアの両方がある。これらのコアは、特に断層付近に注目して、破砕の程度、変質の程度を記述する作業と断層破砕岩の生成過程についての研究が緒についたばかりである。さらに、断層岩の研究を進め、温度・圧力などの情報を読みとる必要がある。
(7)上記のように破砕帯およびその周辺の岩石の変化を捉えるには長期にわたる継続した観測を継続的に必要である。
(8)第1回の注水試験を平成8年度に実施したが、その後の断層岩や周辺岩石の変化を追うために、3年後の平成11年度。さらに3年後の平成14年度に注水試験を実施する。
(9)本計画は、下記のように全国13大学、2国立研究機関により共同利用的に研究が実施されてきた。このような研究は共同利用研としてふさわしいものである。ここではまず、共同利用の研究旅費を必要とする。
(10)掘削完成(平成8年)から少なくとも10年間は断層回復過程の研究のため研究を継続する必要がある。本5ヵ年計画は、この長期研究計画の前期の課題・¥注目したものである。
東北大・理 コア応力測定
千葉大・理 浅層地震探査
東大・理 地球化学・地下水
東大・地震研
破砕帯の科学、地球電磁気、地球熱学、地殻変動、
強震観測
信州大・理
水圧破壊実験、地球化学
金沢大・理 熱構造史
名大・理 制御人工震動実験(アクロス)
京大・理
破砕帯の科学、構造発達史、岩石年代決定
京大・防災研
地震観測、地球化学・地下水、地球電磁気、岩石物性、
破砕帯の科学
大阪大・理
断層年代決定
神戸大・理 構造発達史
徳島大・理 構造発達史
高知大・理 構造発達史
山口大・工 コア応力測定
愛媛大・理 破砕帯の科学
防災科技研 研究協力
地質調査所
研究協力
b. 事業内容
(1)断層破砕帯付近の連続観測
・800m,1700m孔内の地震観測
・800m孔内地殻変動諸観測
・地下水位観測
(2)人工地震源による連続観測
・アクロスによる連続信号発信
・孔内地震計による連続収録と解析
(3)注水試験
・臨時地震・電磁気観測
・孔内地震計・地殻変動計信号の高速サンプリング
(4)断層破砕帯を伝わる地震波の観測
・破砕帯トラップ波の時間変化の観測
・S波偏向異方性時間変化の観測
c. 年次計画
平成11年度からの5年間の年次計画は以下のとおり。各年度とも地震、地殻変動、地下水・地球化学観測を実施する。さらに以下の項目を各年度毎に加える。
(1)平成11年度
・第2回注水実験実施
・ボーリング孔付近での臨時地震観測、臨時電磁気観測
・地震、地殻変動、地下水および地球化学観測の継続的観測
(2)平成12年度
・地震、地殻変動、地下水および地球化学観測の継続的観測
・第2回注水試験の解析調査
・トラップ波、偏向異方性の観測
(3)平成13年度
・地震、地殻変動、地下水および地球化学観測の継続的観測
・第3回注水試験へ向けての準備
・トラップ波、偏向異方性の観測
(4)平成14年度
・第3回注水実験実施
・ボーリング孔付近でのでの臨時地震観測、臨時電磁気観測
・地震、地殻変動、地下水および地球化学観測の継続的観測
・トラップ波、偏向異方性の観測
・さらに深部活断層研究のための計画立案
(5)平成15年度
・地震、地殻変動、地下水および地球化学観測の継続的観測
・第2回注水試験へ向けての準備
・トラップ波、偏向異方性の観測
・活断層の深部構造研究のまとめと今後の計画への発展の検討