1999.8.5

No.0208

(1)実施機関名

京都大学 防災研究所

 

(2)新建議の項目

1.(2)準備過程における地殻活動

 

(a) 課題名

南海トラフ沿いの巨大地震の予知         

(安藤) 

H11年度の予算規模:校費450万円、旅費60万円

 

H11年度計画:海底地殻変動の基礎実験、日向灘沖、琉球海溝における海底地震観測

 

5カ年計画の位置づけ:南海トラフの固着過程に伴う応力場の変化を発震機構の時間変化から捉えるための海底地震観測。そのfeasibility study。

海底地殻変動の測定精度を5cm達成するための基礎実験。

 

(概算要求書)南海トラフ巨大地震予知への総合研究

ー海底地殻活動モニタリングのための技術開発と観測研究ー

 

a.要求理由

 

(1)近畿・四国沖海底の南海トラフに沿ったプレート境界では巨大地震が繰り返し発生し、大きな被害をもたらしてきた。また、南海トラフ巨大地震に先だって近畿地方の内陸でいわゆる直下型の大地震も頻発する傾向にあることも知られている。これらの巨大地震や内陸大地震の発生を予知するための研究を推進することは非常に重要である。

(2)南海トラフ巨大地震については、過去の地震に関する歴史が他の地域より豊富で、巨大地震発生の全サイクルのデータが残されている世界でも類を見ない場所である。その結果ほぼ100から150年の周期で繰り返し巨大地震が発生してきたことが明らかになっている。既に前回の南海地震から50年が経過し、次回の南海トラフ巨大地震は21世紀の前半にも発生することがほぼ確実視されている。

(3)地質・地球物理学的データが豊富であり、想定震源域が比較的陸に近いため陸上観測と海上観測の双方を活用できるという利点がある。また過去の巨大地震では前兆現象が観測された例が有り、地震予知研究の上でも有望なフィールドだといえる。

(4)しかしながら、陸に近いとはいうものの沖合いに位置する震源域の現象を精密な議論にたえうる精度で観測することは、陸上からの観測だけでは現在でも極めて困難である。例えば震源域付近の地震活動について、陸上観測だけでは検知能力、震源決定精度、発震機構解の解析等どれをとっても満足な精度を期待することはできない現状である。また、海域における地殻変動については、観測手法すら確立しておらず全く未知といえる。

(5)南海トラフ巨大地震震源域周辺の地殻活動を正確に把握するためには、まさにその直上の海底における観測が不可欠である。

(6)最近室戸岬沖にケーブル式の海底地震計が敷設されたが、距離も短く地震観測点は2箇所にすぎない。震源域の地震活動を把握するため、室戸沖ケーブルや既設陸上観測網と連携しつつ、自己浮上式海底地震計による臨時観測をできるだけ長期にわたり且つ頻繁に行う必要がある。また、海底地震計と人工震源もしくは自然地震をもちいた構造探査により、震源域周辺の詳細な地殻・上部マントル構造を調べることも重要である。

(7)海底における地殻変動観測は、巨大地震の発生過程を研究する上で最も重要な情報をもたらすと期待される。そこで、海底地殻変動観測の、機器開発および基礎実験を早急に行い、観測手法を確立する必要がある。本研究では、陸上固定点に対する船の位置をGPSを用いて1cmの精度で決定し、さらにこの船に対する海底固定点の位置を音響測位により1cmの精度で決定する方法を採用する。観測船の位置決定精度の向上をはかるために、移動体の精密位置決定ソフトウエアを開発する。さらに、海底固定点の位置決定精度の向上のため、海中温度の精密測定も行う。

 

 

b.事業内容

(1)海底地殻変動観測

㈰ブイ方式による音響測距海上側局の開発と製作

㈪船底設置方式による音響測距海上側局の開発と製作

㈫自己浮上式の音響測距海底側局の開発と製作

㈬海中音響測距のS/N比向上のための信号処理

㈭海中音響測距精度の向上のため、海中温度の精密測定

㈮GPSによる移動体の精密位置決定ソフトウエアの開発および改良

 GPSアンテナアレイによる観測船の姿勢測定および音響信号送受信機の位置計算

㈯沿岸浅海域における試験観測

㉀南海トラフ周辺深海域における長期観測

㈷長期観測のための海底機器用電源装置の開発

㉂音響測距精密化のための海中温度プロファイル測定

 

(2)海底地震観測

㈰自己浮上式海底地震計を用いた自然地震観測

㈪自己浮上式海底地震計を用いた地殻構造探査

㈫海底地震計の観測結果と既存陸上観測網データとの総合的解析

㈬長期観測可能な海底地震計の開発

 

 

c.年次計画

 

 平成11年度

㈰自己浮上式海底地震計を用いた自然地震観測(紀伊水道海域)

㈪水槽実験による水中精密測距の基礎実験

 観測システム構築のためのソフトウエア開発

㈫浅海試験用の海底地殻変動観測システムの試作

㈬浅海における海底地殻変動観測システムの試験観測

 

 平成12年度

㈰自己浮上式海底地震計を用いた自然地震観測(潮岬沖海域)

㈪自己浮上式海底地震計を用いた地殻構造探査(他機関との共同)

㈫前年度の試験結果をもとに海底地殻変動観測システムの改良

㈬深海試験用の海底地殻変動観測システムの製作

㈭深海における海底地殻変動観測システムの試験観測

 

 平成13年度

㈰自己浮上式海底地震計を用いた自然地震観測(室戸岬沖海域)

㈪自己浮上式海底地震計を用いた地殻構造探査(他機関との共同)

㈫地殻変動観測システムの長期観測にむけた電源等の改良。

㈬やや長期にわたる海底地殻変動観測システムの試験観測

 

 平成14年度

㈰自己浮上式海底地震計を用いた自然地震観測(前年度までの結果をもとに海域を選定)

㈪海底地殻変動の試験観測の結果をもとに、より実用的なシステムを製作するための機器の改良。

㈫海底地殻変動観測システムの南海トラフ域における長期観測

 

 平成15年度

㈰これまでの地震観測による成果に基づき、南海トラフ周辺海域の総合的な地震活動解析を行う。

㈪海底地殻変動の試験観測の結果および陸上GPS観測網から南海トラフ沿いの沈み込み帯におけるカップリングおよび応力蓄積過程に関する解析を行う。