観測技術開発


 新しい観測技術の開発は,次世代の地震予知を支える大切な研究です.平成11年度には次の3つの観測技術開発を推進する予定です.(1)海底地殻変動観測技術,(2)精密制御震源(アクロス),(3)ボアホール観測技術です. これらは,比較的少人数ですでに開始されているものの,競い合って開発が行われて成果が期待されるものです.

(1)海底観測技術の開発

 近年高密度の地震観測網やGPS観測網が設置されるようになったが,高密度観測
網は陸上に限られ,巨大地震の震源域である海底の観測はあまりにも手薄である.平成11年度は,海底設置型傾斜計,海底重力・圧力計,海底測位・測距,ボアホール海底傾斜計,海底観測通信ブイの開発や運用試験を行う.また海底音響基準点網による海底測地技術の開発を行う。

(2)精密制御震源の開発

 アクロスは,日本で開発された技術で,地下構造と状態の時間変動を正弦波を用いて連続モニタするためのシステムである.平成11年度は,野島断層への注水実験に伴う地震波速度変動をモニターし,アクロスの性能を実地検証する.安定した震源を実現するために,震源の精度検証と構造解析,震源と地盤との動的相互作用の解析を行う.岩石標本のひずみ集中域での単色正弦波の散乱を研究する.

(3)ボアホールによる深部計測技術の開発

 人工的なノイズや気象変化による影響を受けない深部ボアホール地殻活動総合観測計器を現在の1km程度から3km程度の深さまで観測可能にし,地震に関連した信号の検知能力を一層高めるための開発研究を行う.新たな試みとして、地殻応力計測を深部ボアホールで可能にするため,新しく開発した回収型歪み計の高性能化を進める。これを活用したオーバーコアリング手法の確立研究を行う.